NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』が2021年10月29日金曜日に最終回を迎えました。
視聴しての感想を書いています。
目次
朝ドラ『おかえりモネ』
朝の連続テレビ小説は2021年5月17日から『おかえりモネ』が始まっています。
公式webサイトとTwitterの公式アカウントがありました。
あらすじ
本作のあらすじです。
宮城県気仙沼湾沖の自然豊かな島で、両親・祖父・妹と暮らしていた永浦百音。
2014年春、高校卒業と同時に気仙沼を離れ、ひとり内陸の登米市へ移り住むことに。
大学受験にことごとく失敗、祖父の知り合いで登米の山主である、
名物おばあさんの元に身を寄せたのだ。
将来を模索する百音は新天地で、林業や山林ガイドの見習いの仕事をはじめる。そんな百音に、ある日転機が訪れる。
東京から、お天気キャスターとして人気の気象予報士がやって来たのだ。
彼と一緒に山を歩く中で、「天気予報は未来を予測できる世界」と教えられ、
深く感銘を受ける百音。
公式webサイト内「番組紹介」にある紹介内容の一部を抜粋しました。
紹介内容テキストはなかなかのネタバレ感がありますので、バレが嫌な方は読まない方が良いかもしれません。
最終週「あなたが思う未来へ」
2021年10月25日月曜日からの『おかえりモネ』は第24週(最終週)「あなたが思う未来へ」が放送されました。
菅波(坂口健太郎)がついに気仙沼へやってきた。たまたまその場にいあわせた亮(永瀬 廉)は、菅波にある問いを投げかける。そして、いよいよ百音(清原果耶)は菅波を家族に引き合わせようとするが、耕治(内野聖陽)はなぜか出かけてしまっていた。そんな中、未知(蒔田彩珠)も亮と気持ちを確かめ合い、前へ進もうとしていたが、東京の大学に行くかどうか、心を決められずにいた。百音は、未知の思う通りに進んでほしいと願い、その背中を押そうとするが…。
webサイトの「あらすじ」ページには上記引用部のように書かれています。
感想
朝ドラ『おかえりモネ』の最終週を視聴しての感想です。
第1週を観て「つまらない」と言うほどではないにしても「面白い! 」とはならなかったと書きました。
最終週を観終えての素直な感想は「つまらなかった」です。
意義深い
意義深いドラマだったとは思っています。
東日本大震災と、それに伴う大津波、害を被った方々の10年間とこれからのことを描く、その意味では意義があったのでしょう。
ただそれならそれで、震災のことにもっとフォーカスを当てた物語にした方がよかったのではないかと感じます。
モネが気象予報士になって東京へ行く話にする必要はなかったような。
終盤の展開を考えるとモネが気象予報士になる特別な意味はなかったように思えますし、特に終盤はその設定が活かされてはいなったようにも思えます。
東京から仕事で気仙沼に派遣される形で戻ったのに、結局最終話で年数が進むまで明らかな成果を残せませんでしたし、気象が物語終盤のコアにはなっていなかったですから。
中途半端なことをするくらいなら、モネを始め妹の「みーちゃん」や「りょーちん」たち同級生が、震災とどう向き合ってきたか、あるいは乗り越えてきたかをもっと丁寧に描いていれば、それでよかったのではないでしょうか。
そうしていれば、最終週になってみーちゃんが祖母を見捨てて津波から逃げたなんて、とってつけたようなエピソード(と私には思えました)を添えなくて済んだことでしょう。
東京編をそのことに充てていればよかったのではという。
さすがに重すぎると判断されたのでしょうか。
りょーちんと新次の物語
終盤は「りょーちん」と彼の父「新次」の及川家が物語の主役になっていました。
2人が、母であり妻である「美波」の死を受け入れること、新たな一歩を踏み出すこと、こちらにフォーカスが当てられていたと感じました。
言い換えると『おかえりモネ』がモネの物語ではなくなっていました。
最終話も、りょーちんが自分の船を購入して初めて漁に向かうシーン、これがハイライトになっていました。
このシーンだけ観ていると物語の主役は誰なのかがわからなくなります。
ドラマとしてあの描き方で本当によかったのかと脚本家さんたちに問いたいです。
暗い
物語のテーマ的に仕方のない部分は大いにあるのですが、物語が終始明るさがなかったです。
はっきり言うと暗かったです。
大きな原因は、ヒロインのキャラクター、俳優の演技にあるでしょう。
性格がもの静か、主張の激しいタイプではないため、どうしても他の登場人物に比べると弱くなってしまうのですよね。
この時点で大きな損かなと感じています。
他作品のヒロインと比べても圧倒的に影が薄いです。
しかしこれは、モネ自身が震災のことで苦しんでいたのですから仕方ないです。
朝ドラには、明るく元気に視聴者の背中を押すものという、共通する大きなテーマがあると私は思っています。
俳優さんがどうこう演技がどうこうよりも、その大きなテーマから逸れている脚本を描かれたことが問題なのでしょう。
このドラマはテーマ的に、朝ドラではなく夜ドラでよかったと思います。
2時間ドラマみたいな枠でもよいでしょうね。
気象災害で大きな被害が出ない
終盤は別として、本作は気象のことを扱っていましたから、台風など気象災害が作中何度か襲いました。
ところがその全てで人的な被害が出ずに済んでいました。
家屋などの倒壊といった物的な被害も、モネの実家などに起こっていたくらいでしたっけ、大きなものは他にはなかったような。
記憶が定かでないですが、確かそうだったと思います。
モネたち気象予報士の報道があって、現地の人たちの行動があって、大きな被害が出なかったと演出したかったのだろうと想像されます。
もちろん現実には被害が出ない方がよいことは言うまでもありません。
一方ドラマは現実ではない、エンターテインメントです。
自然災害が起こる度に大きな被害が出ずに済んでしまうと、視聴者側の緊張感は損なわれてしまいます。
ああ今回も大した被害はなく済むのだろうなと。
少なくとも私はそう思いながら観ていて、緊張感も何もありませんでした。
そして実際にドラマではその多くが大きな被害も出ませんで、次のエピソードへと展開されていきました。
この展開があまりに淡白でしたね。
報道や現地の方々の努力で被害が最小限に抑えられた、またはゼロに抑えられたことは素晴らしいですし、現実にはそれを目指すものであるでしょう。
それでも自然災害は避けては通れませんし、大なり小なり被害は出てしまうものです。
ところが、本作のようにとりわけ人的な被害がまる出ないとなると、それはそれで現実を描けていないように思えてしまいます。
ストーリーの中盤辺りにモネの関係した人物に被害が発生していれば、後に展開された災害時の緊張感はずいぶん違ったものになったではないでしょうか。
例えば、終盤にりょーちんが漁に出たときにシケ(時化)が起きて、漁港に戻れるか戻れないか、下手をすると転覆の危険があるという場面の緊張感はずっと増していたはずです。
○○○みたいにりょーちんも、みたいな緊張感が視聴者を襲ったかもしれません。
みーちゃんのおばあちゃんを見捨てたエピソード
最終週になって、モネの妹「みーちゃん」が、津波が迫ってくるときに祖母を見捨てて自分だけ逃げたエピソードが語られました。
これは先ほど少し触れましたね。
あのエピソードは最終週に必要なものだったでしょうか。
私には必要とは思えないです。
そもそもモネがあのエピソードを知らなかったことに違和感があります。
みーちゃんはお祖母ちゃんに避難を促したけれど、お祖母ちゃんは頑なにそれを拒むので、仕方なく見捨てたのでしたよね。
お祖母ちゃんは他の誰かが助けて無事でした。
それならモネたち永浦家の人たちは、助けてくれた人や避難所を運営している人たちから、あるいはお祖母ちゃん本人から話を聞かされているのではと思います。
お祖母ちゃん自ら「自分で避難した」「みーちゃんとは会わなかった」と嘘をつけば成立するかもしれません。
しかし仮にそうだとしても、何年も自責の念に駆られるくらい、みーちゃんにとっては重大な出来事なのですから、家族に告白しないことは考えづらいです。
また、物語の序盤にモネとみーちゃん、そしてりょーちんたちモネの同級生たちが浜辺でキャッキャと騒いでいたシーンがあったと記憶しています。
みーちゃんは海のそばで騒ぐことなんてできるでしょうか?
彼女にとって津波は10年ほども引きずるくらい大きな出来事だったのに。
実際に、東日本大震災で大津波が迫ったとき、家族なり近所の人なりを見捨てて逃げた人はいらっしゃると思います。
今尚そのことを引きずっている方がいらっしゃるかもしれません。
相当にデリケートな問題のはずですから、ドラマで扱うならもっと時間をかけて丁寧に描くべきでした。
少なくとも最終週にとってつけたように挿入するほどの軽さはないはずです。
どうしてとってつけたと思えるかは、先ほど述べたようにドラマの序盤に浜辺ではしゃいだシーンが描かれたからです。
心に大きな傷を負われた方もこのドラマを観ていらっしゃったかもしれません。
朝ドラの最終盤となると普通はゆったりと穏やかで和やかな内容に終止するものです。
そんなときに唐突に心をえぐられるシーンを観させられたらどう思われるか、想像するだけでいたたまれない気持ちになります。
書きたいことはもう少しあるのですが、ネガティブなことばかりになりそうなのでここで終わりにします。
そんなこんなで私にとってはつまらない朝ドラでした。
おわりに
ということで、朝ドラ『おかえりモネ』を最終話まで視聴した感想を書いた記事でした。
他のことで手一杯になってしまい、感想を書くタイミングが遅れてしまいました。
次作品の『カムカムエヴリバディ』は既に始まっています。