NHK連続テレビ小説『おちょやん』は2021年5月14日金曜日、最終回を迎えました。
視聴した感想を書いています。
ネタバレ要素がありますので、バレても構わない方のみ下方スクロールをお願いします。
目次
朝ドラ『おちょやん』
朝の連続テレビ小説は2020年11月30日から『おちょやん』が始まっています。
公式webサイトとTwitterの公式アカウントがありました。
あらすじ
本作のあらすじです。
明治の末、大阪の南河内の貧しい家に生まれたヒロイン、竹井千代は小学校にも満足に通わせてもらうことができず、9歳のときに、道頓堀の芝居茶屋に女中奉公に出される。
そこで目にしたのが、華やかな芝居の世界。
彼女は女優を志し、芝居の世界に飛び込んでいく。
公式webサイト内「番組紹介」にある紹介内容の一部を抜粋しました。
紹介内容テキストはなかなかのネタバレ感がありますので、バレが嫌な方は読まない方が良いかもしれません。
第23週「今日もええ天気や」
2021年5月10日月曜日からの『おちょやん』は第23週「今日もええ天気や」が放送されていました。
最終週です。
竹井千代(杉咲花)と天海一平(成田凌)が別れて2年が経った。一平はついに、鶴亀新喜劇で「初代桂春団治」を上演し、大成功をおさめた。しかし、二人はお互いに、再び会おうとはしなかった。そんなとき、鶴亀株式会社の熊田(西川忠志)が、千代の家にやってくる。熊田は千代に、一日だけ鶴亀新喜劇の舞台に上がってくれないかと相談する。もう一度、千代に道頓堀の舞台に上がってほしい、という熊田の願いからだった。
webサイトの「あらすじ」ページには上記引用部のように書かれています。
最終回を視聴し終えての感想
朝ドラ『おちょやん』を最終話まで視聴しての感想です。
あっという間に終わった
今作は23週、115話で最終回でした。
あっという間に終わってしまった感覚です。
実際に短かったですよね。
今までの朝ドラは150話くらいあったでしょうか。
前作『エール』から朝ドラは週5回放送に短縮されました。
エールが120話ほどだった記憶ですので、それより今作は短い放送になりそうです。
そういう実際の放送の短さ以上に、物語があっという間に終わったと私が感じた理由。
それは『おちょやん』が面白かったからです。
名作だった
『おちょやん』は名作でした。
前作『エール』も、前々作『スカーレット』も個人的には大当たりです。
3作連続で個人的な大当たりが続いています。
記憶の鮮度が高いこともあり、個人的大当たりの最近3作品の中でも、本作は一番だったかもしれません。
いや『スカーレット』もとても良い作品でしたので、どちが上とは明言できないですか。
どちらもとても良い作品でした。
『おちょやん』と『スカーレット』の言いたいことは近いものがあるように思います。
人生良いことばかりではなく、時には自分一人の力ではどうしようもできないことも、身に降りかかります。
それでも人生は進んでいくのだということを、2作品とも言いたかったのではないかと私は感じています。
今作、ヒロインの千代には難儀なことがたくさん降りかかりました。
父親が自分を捨て、弟とも引き離されたこと、父から金を持ち逃げされたこと、父とも最愛の弟とも真からの和解は叶わなかったこと、弟の死、夫に裏切られ離婚したこと。
特にテルヲがね、酷かったです。
一平も大概ですけど。
人生悪いことばかりではありません。
千代には良いこともまたたくさんありましたね。
特に人との出会いが。
「岡安」や「岡福」の人たち、「鶴亀新喜劇」の劇団員や関係者、『お父さんはお人好し』の仲間たち。
そして、最終話で千代が言っていたとおり、夫・一平と別れたことで出会え、後に本当の親子になる娘の春子。
高瀬耕造アナの言葉
朝の報道番組『NHK おはよう日本』の司会を務める「高瀬耕造」アナウンサーと同「桑子真帆」アナウンサーは、ほぼ毎回「朝ドラ送り」のトークをしています。
急なニュースや重い出来事がない限りは。
最終話の1話前、114話を迎えた2021年5月13日の朝ドラ送りで、高瀬アナが発した言葉がこの『おちょやん』を端的に表していると感じました。
「孤独ゆえ、人は強く優しく。孤独ゆえ、人はつながりを求める」
こう仰っていたかと思います。
聴き間違えがあったら申し訳ありません。
これですよね、描かれていたことは。
根本的なところで人間は孤独です。
精神的には常に一人。
主観のみ、客観なんてできません。
だからこそです。
相手のことが本質的にはわからないからこそ、可能な限りわかろうと相手の立場になって考えようする、文字や言葉、行動でコミュニケーションを取ろうとする。
完全に相手の立場になれるかは別として、そうしようと努める。
それを「愛」と呼ぶのだと思います。
『おちょやん』ではそういうことが描かれていたのかなと私は思っています。
本作の脚本を担当された方は『半沢直樹』でお馴染みの「八津弘幸」さんです。
おそらく八津さんは『おちょやん』でそういうことを書きたかったのでしょう。
最終話が良かった
最終話が良かったです。
物語は序盤からところどころ、目を伏せたくなるくらいにドロドロとした人間関係を描いていました。
それなのに最後は綺麗に収まりました。
最終話では千代が、別れた元夫・一平と一緒に舞台に立ちました。
千代が過去をまったく引きずっていない訳はないのですが、それすら笑いに変えて一平と喜劇を演じます。
チクチクとした小さくない胸の痛みは感じつつ、それでも前に進むんだというメッセージを、自分を助けてくれた皆、特に娘・春子に届けたかったのでしょう。
この最終話は史実とは異なると思います。
千代のモデルとなった「浪花千栄子」さんは、2代目「渋谷天外」さんと離婚後、再び同じ舞台には上がらなかったのではないかと。
私の調べ方が足りなかったら申し訳ないです。
このドラマはあくまでもフィクションです。
何でも史実どおりに描けば良いというものでもないでしょう。
私は八津さんのドラマは観たことがなかったのですが、この最終週、最終話を持ってきた八津さんの脚本家としての力を見た思いです。
素晴らしい才能。
栗子に驚いた
脚本に関して個人的にとりわけ驚いたのが「宮澤エマ」さん演じる「竹井栗子」です。
終盤は「上田栗子」でしたか。
千代の父・テルヲの後妻で、千代と相容れず、家から千代を追い出させた張本人と言えなくない存在です。
栗子以上にテルヲがあれなのですが。
千代が家を出てから物語終盤まで、栗子は物語に登場していなかったですよね。
あのまま消えていくキャラクターの一人とばかり思っていました。
胸くそ悪い展開でしたから思い出したくないのでそれで良いとすら思っていました。
いつしか存在を忘れていましたし。
ところが終盤、千代が夫に裏切られた辛さ・悲しさから家を飛び出して、一人雨に打たれていたところを救ったのが、かつて自分を捨てた栗子だったのですね。
栗子は後に親子となる春子とのつながりをも作ってくれました。
いや、あのときはまさかここで栗子が登場するとは思っていなかったですから、大いに驚きました。
そして、ラジオドラマに出演して俳優として復帰する日の朝、栗子は千代に「花籠」を手渡すのですよね。
劇中、ところどころで千代のもとに届けられた花籠は、すべて栗子が贈っていたものだったと、そのときようやくわかります。
千代だけでなく視聴者もわかる仕掛けです。
どうしてあの栗子が、という。
実は栗子は千代の俳優デビューの頃からずっと彼女を応援していて、舞台もバレないようたびたび観に行っていたみたいです。
テルヲとの間にできた子を、テルヲと別れて一人で産み育てる中で、千代に対する想いが変わっていった。
そんなとき千代が俳優となった知り、喜んでいる自分に気がついた、それからはずっと陰ながら応援していたのだったと思います。
ちなみに春子は、栗子の孫だったはず。
栗子とテルヲの間に生まれた子が産んだ子が春子でしたよね。
まさかそんな物語が終盤に用意されていたとは。
事実を知ったとき、思いっきり不意打ちを食らって驚きました。
そう来たかと。
宮澤エマさんの演技も素晴らしかったです。
エマさんは「宮沢喜一」元総理大臣の縁者の方なのですか?
そちらも驚きです。
杉咲花さん
ヒロイン・千代を演じた「杉咲花」さん。
私は今作の他では『とと姉ちゃん』でしか演技を拝見していません。
数年ぶりに杉咲さんの演技を拝見しましたが、素晴らしい俳優さんでした。
物語は哀しい出来事も多かったですから、泣いたり怒ったりが多かったです。
そういう感情を爆発させるだけの演技ばかりでなく、しみじみと感情を噛み締めているシーンで、杉咲さんは良い表情をなさいます。
彼女のメリハリのある演技のおかげで、私にとって今作が素晴らしいものになったのだと感じられます。
主題歌が素晴らしかった
そして、主題歌「泣き笑いのエピソード」、これが素晴らしかったです。
「秦基博」さんの曲ですね。
歌詞に「笑顔をあきらめたくないよ」というフレーズがあります。
作品のすべてを表している言葉だな、いい言葉だなと感心します。
おわりに
ということで、朝ドラ『おちょやん』が最終回を迎えたので視聴した感想を書いた記事でした。