『サイダーのように言葉が湧き上がる』なるアニメ映画が、2023年8月26日にNHK Eテレで放送されました。
視聴した感想をあれこれ書いています。
以下、ネタバレ要素を含みますから、バレても構わない方のみ下にスクロールしてください。
目次
アニメ映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』
『サイダーのように言葉が湧き上がる』というアニメ映画がEテレで放送されました。
17回目の夏、地方都市——。
コミュニケーションが苦手で、俳句以外では思ったことをなかなか口に出せないチェリーと、見た目のコンプレックスをどうしても克服できないスマイルが、ショッピングモールで出会い、やがてSNSを通じて少しずつ言葉を交わしていく。
ある日ふたりは、バイト先で出会った老人・フジヤマが失くしてしまった想い出のレコードを探しまわる理由にふれる。
ふたりはそれを自分たちで見つけようと決意。フジヤマの願いを叶えるため一緒にレコードを探すうちに、チェリーとスマイルの距離は急速に縮まっていく。
だが、ある出来事をきっかけに、ふたりの想いはすれ違って——。
録画データには上記引用部のように書かれています。
本作の公式webサイトもありました。
2021年の作品とのこと。
サイダーのように言葉が湧き上がる 1 (MFコミックス アライブシリーズ)
放送日時
放送日時です。
2023年8月26日の21時30分から。
放送局はEテレ。
監督など
本作の監督について。
- 原作:フライングドッグ
- 脚本:佐藤大音楽:牛尾憲輔
- 絵コンテ:イシグロキョウヘイ
- キャラクターデザイン・総作画監督:愛敬由紀子
- 演出:山城智恵
- アニメーション制作:シグナル・エムディ、サブリメイション
- 監督・脚本・演出:イシグロキョウヘイ
- チェリー:市川染五郎
- スマイル:杉咲 花
一部です。
原作はあるのか?
本作の原作があるのかないのかについて。
上には原作フライングドッグと書かれていました。
アニメや音楽の制作会社さんですよね、フライングドッグさんは。
なので例えば同じEテレで放送されたアニメ映画の『漁港の肉子ちゃん』のような、小説家さんが発表した小説を、後年になった映画化したという意味での原作とは意味合いが異なるのかもしれません。
詳しい事情はわかっていませんけど。
ただ小説化や…
…コミカライズはされているようです。
感想
アニメ映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』を観た感想です。
一度しか観ていない
私は本放送を一度しか観ていません。
なのでセリフを聴き逃していたり、セリフや設定を忘れてしまったり理解を間違えていたりしている可能性があります。
その点ご留意ください。
正直に言うと
正直に言うとあまり面白くなかったです。
観ている間も観終えた後も特に大きな感慨は起こらず、さら〜っと流れてしまいました。
いえ、終盤はそれなりに盛り上がりましたし、決してつまらなくはなかったです。
でも強い印象は残らなかったですね。
もう一度観たいかと聞かれても、大丈夫ですと即答すると思います。
終盤の展開に不満
結末を予想しやすかったです。
コミュニケーションが苦手な主人公「チェリー」と、前歯にコンプレックスを持ち外ではマスクを欠かせないヒロイン「スマイル」は、恋がうまく行くんだろうな、チェリーが俳句を使って告白をするんだろうなということが。
ああいう結末にするなということを言いたいのではありません。
あの結末は王道で、それはそれで期待を裏切らない意味で個人的には全然ありです。
問題は結末そのものではなく、むしろそこに行き着くまでの展開に対して私は不満を覚えました。
チェリー一家の◯っ◯し、その当日に家族と自動車で移動している途中で、チェリーが親に車を止めてと言って、車を飛び出して△△△△のところに✗けていく。
この終盤の流れに捻りがない、映画やドラマなどどこかで見た覚えが強くあるテンプレ展開が過ぎると感じられたのですね。
そういうことがまるで装置になっていると言いますか。
もうちょっと何とかならなかったのかと思ってしまいました。
それだけでなくチェリーとスマイルの出会いのシーンや、二人の心の距離が近づいていく流れも、よく言えば王道でした。
悪く言えばという。
俳句のレベルは?
先ほど少し触れましたように、主人公のチェリーは「俳句」が趣味です。
趣味といってよいか、自己表現や自分の思いを吐露する手段として俳句を使っています。
私も俳句を趣味にしていますので、この点に興味を持って本作を視聴することに決めています。
観る前から気になっていたことは、作品に登場する俳句のレベルです。
プロの方に作品を依頼した可能性が高いと思っていて、どういう句が披露されるかを、物語そのものよりも楽しみにしていました。
チェリーの俳句のレベルはよくも悪くもない印象でした。
作品タイトルになっている句も、チェリーの発表した俳句の一つですね。
さすがにタイトル句と「やまざくらかくしたその葉ぼくはすき」でしたっけ、その2句は中ではよかったです。
「夕暮れのフライングめく夏灯」も、その2句ほどではないですけどよかったです。
ただそのよいと思えた3句も、サイダーは季語なのにそれを比喩に使っているという指摘や、「好き」などと言わずにそれを伝えるのが俳句だろうという指摘、「夕暮れがフライングめく」って早く日の暮れる季語を説明しているだけでしょという指摘ができそうではあります。
でもそれぞれ若さがよく出ていて、個人的にはこれでよいと思いました。
詳しくは失念しましたが、あまりよくなく感じられる句も中にはありました。
率直に申せば、その3句の他は心に引っかからなかったです。
だから駄目ということではありません。
高校生の、中学生でしたっけ? まだそれほど長くないであろうチェリーの句歴を踏まえた句力だったなと思いました。
そういう意味でのリアルさを感じさせる句の数々でした。
長年研鑽を重ねた俳句の達人だって、多作した中で捨てた句を他人が見ればどうしようもないレベルのものもきっとあると思いますし。
私が作った句も同じで、中にはよいと思っていただけるものもあるでしょうし、う◯こレベルと思われるものもあるでしょうから。
俳句の捉え方
本作の俳句に関して強く思うことがありました。
それは本作での俳句の捉え方と、私の俳句の捉え方とはだいぶ異なるかなということです。
本作の俳句はチェリーの言いたいこと、いわば主張を17音に乗せている感じです。
そういう句ばかりではなかったですけど、「ぼくはすき」の句なんてまさにそうですよね。
そこがわからないです。
言いたいことを言うには季語を含んだ17音では短すぎると感じられるから。
言いたいことがあるなら、何も有季定型の俳句である必要はなく、短歌でも定型ではない詩でも、詩でなくて文章でも、音声でも、音楽でも、絵画でも、彫刻でも、漫画でも、映像でもいいじゃないかなと。
いやどうしても俳句がいいと言うのなら、それは自由なのでいいのですけど。
俳句は自分の言いたいこととは無関係なところにあると私は思います。
言いたいことの内ではなく、言いたいことの外側にある。
だからこそ私は俳句をやっていますし、言いたいことを言うためなら俳句をやらないです。
なので俳句の捉え方の点において、本作には共感できなかったです。
色彩にシティポップ感
絵が、色彩がとても1980年代っぽかったです。
色彩がというか塗り方が、でしょうか。
山下達郎さんの『FOR YOU』など'80年代のレコードジャケットデザイン的に、コントラストのはっきりとした絵柄・色彩でしたね。
ああいう手法は「リーニュクレール」というのでしたっけ、違うかも。
物語序盤はその色彩にばかり目が奪われて、内容が頭に入りにくい、見にくいアニメだなと思いました。
徐々にそれにも慣れていきましたけど、観終えた後もあれはちょっと行き過ぎかなと思えたくらいには違和感がありました。
スマイルが動画配信者だったり、ジャパンやタフボーイなど他の登場人物などにポップさがあると言えばあるので、そこを踏まえてのポップな絵柄だったのかもしれません。
しかし、物語は主人公とヒロインのコンプレックスが大きく絡んでいることもあって、個人的には(制作側が思うほど)作品内容がポップではなく受け取れ、色彩が物語に合っていない感覚を覚えました。
サマーウォーズみたいな内容の作品だったらまだわかるのですけどね。
おわりに
ということでEテレでアニメ映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』が放送されたので、視聴した感想を書いた記事でした。
私の認識や理解が間違っていたら申し訳ありません。
↓漫画や小説を読むとまた印象が変わるかも。
気になる方はぜひ。