『漁港の肉子ちゃん』なるアニメが、2023年1月3日にNHK Eテレで放送されました。
視聴した感想をあれこれ書いています。
以下、ネタバレ要素を含みますから、バレても構わない方のみ下にスクロールしてください。
目次
アニメ『漁港の肉子ちゃん』
『漁港の肉子ちゃん』というアニメがEテレで放送されました。
西加奈子の原作を明石家さんまプロデュースでアニメ映画化。北の漁港で暮らす訳あり母子のハートフルコメディー。
直木賞作家・西加奈子の原作を明石家さんまのプロデュースでアニメ映画化。能天気でいつも明るい肉子ちゃんとしっかり者の娘・喜久子。肉子ちゃんが男にだまされ失恋するたびに各地を転々としてきた二人が北の漁港に流れ着き、そこで出会った焼肉屋の主人が所有する船に住まわせてもらう。こうして肉子ちゃんと喜久子の新しい生活が始まった。漁港を舞台に訳あり母子が繰り広げるハートフルコメディー。
録画データには上記引用部のように書かれています。
本作の公式webサイトもありました。
2021年の作品とのこと。
放送日時
放送日時です。
2022年1月3日の09時30分から11時10分まで。
放送局はEテレ。
実はこの1月3日の放送が再放送だったようです。
NHKのwebサイトによると初回放送は2022年9月24日とありました。
監督など
本作の監督について。
- 原作:西加奈子
- 監督:渡辺歩
- 脚本:大島里美
- アニメーション制作:スタジオ4℃
- エンディングテーマ:GReeeeN「たけてん」
- © 西加奈子 幻冬舎 ©2021 「漁港の肉子ちゃん」製作 委員会
- 肉子ちゃん:大竹しのぶ
- キクコ:Cocomi
- 二宮:花江夏樹
- サッサン:中村育二
声の出演は上記リストのとおりです。
他にもマツコ・デラックスさんや吉岡里帆さんらも参加しているようです。
原作はあるのか?
本作の原作があるのかないのかについて。
上記のとおり「西加奈子」さんの小説が原作のようです。
漫画化もされていて、アニメ映画化もされているということですね。
明石家さんまさん
本作のプロデュースに「明石家さんま」さんの名前があります。
アニメのプロデュースをさんまさんが、という点は個人的には全く結びつかないです。
今回一番驚いた情報かもしれません。
大竹しのぶさんが肉子ちゃんの声を担当しているのも無関係ではなさそう。
SWITCH Vol.41 No.1 特集 110年目のお笑い 前編(表紙巻頭:明石家さんま)
感想
アニメ『漁港の肉子ちゃん』を観た感想です。
一度しか観ていない
私は本放送を一度しか観ていません。
なのでセリフを聴き逃していたり、セリフや設定を忘れてしまったり理解を間違えていたりしている可能性があります。
その点ご留意ください。
ジブリ感
観始めてすぐに感じられたことは、本作から『スタジオジブリ』の香りがぷんぷんすることです。
ジブリ感は特に物語の序盤に多かった印象です。
後半からはほとんど感じなかったですね。
Wikipediaを拝見したところ、ジブリ感の正体が何となくわかりました。
キャラクターデザインの担当者が「小西賢一」さんだったからです。
キクコたちキャラクターのテイストがジブリ感があるので。
いえ、私は小西さんのことを全く知らないのですが、調べたところでは彼はジブリにいらしたみたいなのですよね。
なるほどと合点がいきました。
キャラクターデザインだけでなく、演出面でもジブリ感はところどころに見受けられました。
例えば、肉子ちゃんが寝ているときの様子は『となりのトトロ』で、メイちゃんがトトロと出会うシーンを彷彿とさせます。
実際にその様子を見たキクコが「トトロ?」みたいな台詞を言っていましたよね。
「夢だけど夢じゃなかった」の台詞もあったような。
他にも、肉子ちゃんとキクコが水族館へ行くときに、バスを待っているシーンも、サツキとメイが父が帰ってくるバスを待っているときにトトロと会うシーンにとてもよく似ています。
意識して「寄せて」いる感があります。
それがよいか悪いかは人それぞれあると思います。
私は特に変な感じはしませんで、単にトトロっぽいな、意識しているなと思っただけでした。
肉丸くん?
肉子ちゃんは「肉丸くん」に似ています。
『さすがの猿飛』の主役の子ですね。
画像の下にいる子が猿飛肉丸くんです。
外見のぽっちゃり感だけでなく、ほんわかした性格も似ている感じです。
本作を観て、肉丸くんを意識しているだろうなと感じました。
『さすがの猿飛』は昔の漫画ですので、ご存知ない方も多いかもしれません。
私は子どもの頃好きで、アニメを観ていました。
実は単行本も、全巻はないものの1〜5巻を持っています。
だから駄目という話ではなく、単に想起したのですね。
キクコはセラフ?
キクコのビジュアルは「セラフ」に似ているかなと感じました。
セラフとはPS2ソフト『DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー』の主人公です。
「サーフ」と「セラ」が一つになった存在、完全な人間でしたっけ。
ご存じなくて気になる方はぜひ検索をかけてみてください。
それと作品名を思い出せないのですが、「手塚治虫」さんの描く女性っぽさもありますか。
目の大きさや位置が似ている感じがします。
上にも書いたとおり、だから駄目という話ではなく単に想起したのですね。
DIGITAL DEVIL SAGA ~アバタール・チューナー~
DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー2
四畳半神話大系
演出や世界観はどこかアニメの『四畳半神話大系』を思わせます。
例えば二宮くんが変顔をする癖が出るときの顔の演出は、どこか「小津」を彷彿とさせる感じがありました。
それと、本作のところどころに出てくるトカゲ(ヤモリ?)や神社などの演出も、どこか四畳半神話大系に通ずるところがあるような気が、観ていてしました。
しつこいようですが、だから駄目という話ではなく、単に想起しただけです。
作画クオリティが高い
作画のクオリティが高い。
この点も本作では見逃せない点でしょう。
キクコが通学で毎日使っている、鉄製でしょうか、赤い小さな橋の質感、生活をしている船内の様子、サッサンの焼肉屋「うをがし」の店内の陰影、どれも細部まで精細に描かれています。
とりわけ綺麗だったのは川など「水」の表現ですね。
が、場面によっては、人物にフォーカスを当て周辺はあえてぼかすように描かれてもいて、使い分けている感じ。
私は絵の精細さはあくまでストーリーの添え物で、あまり突き詰めなくてもよいのではと思っているタイプなのですが、それでも美しく感じられ印象的でした。
静物画だけでなく、人物に躍動感があります。
特に肉子。
暗い物語
物語は「暗い」です。
いえ、物語の表面上は基本的に「明るい」です。
主に肉子のキャラクターのおかげで明るく見えます。
ところが、物語に描かれていない部分を想像すると途端に、結構なレベルの暗さが湧き出てきます。
肉子はずっと騙されている人生です。
特に男に騙され続けています。
今後も男に騙される可能性は大いにありそうです。
でも彼女は底抜けに明るく、他人を疑わない・恨まない人なので、彼女自身はあっけらかんとしていますが。
いえ、あっけらかんとしているところだけを描いているだけなのでしょうけど。
それに人を疑わないからこそ騙されてしまうのですけどね。
今も肉子は現在進行系で騙されています。
騙されているというか、キクコの母親「みう」でしたっけ、彼女にいいように言いくるめられている感があります。
色々あったのでしょうけど、それでも結局みうは肉子や娘より自分の幸せを選んだのですよね。
今も肉子と連絡を取っているみたいで、それも肉子の人の良さを利用しているとも受け取れますし、個人的には彼女の身勝手な行いに見えます。
劇中ではみうの言い分が描かれていないので、わからない部分も大いにありますが。
肉子はそれでも懸命にみうをかばっているところが、健気というかお人好しというか阿呆というか。
フレンチトーストを毎朝のように食べているところからもそれがわかるという。
娘のキクコにしても、学校での人間関係で悩んでいますし、何より実の親に捨てられてしまっています。
父親は誰だかわからないみたいですし。
冷静に考えれば、いや冷静に考えなくても、決して楽ではない人生を歩んでいます。
この母子家庭のこれからも、未来への道がぱっと開けている訳ではないでしょう。
ちょっとしたことで転落しそうな危うさを孕んでいます。
でも焼肉屋のサッサンはよい人ですし、二宮くんもいますし、このまましばらくは、せめてキクコが働くまでは、このまま北の町で楽しく暮らしてもらいたいと願わずにいられません。
よく捉えている
これはアニメではなく原作者の西加奈子さんのことかもしれません。
「人間関係」をよく捉えているなぁと、観ていて強く感じました。
具体的には、先ほど少し書いた、小学校内での人間関係ですね。
女子生徒内での権力争いが勃発していて、キクコはそれに興味はないのだけど巻き込まれていく感じとか。
小学生時代の小さな世界では逃げ道なんてそうそうないですものね。
ああ、あるよね、いるよねという。
また、小学校内での権力争いに関係して、男子と女子とでは人の印象がずいぶん異なるエピソード、これも実生活で経験したことがあるなぁと感じました。
劇中ではマリアでしたっけ、キクコと仲のよい女の子の印象が、キクコと二宮とでは大きく違いました。
男って女を見る目がないと言う女性を、実生活でも聞いたことがあり言われたこともありますけど、まさにこういうことなのでしょう。
異性の前で態度を変える人もいますしねぇ。
いい物語
『漁港の肉子ちゃん』は「よい物語」です。
これまで書いてきたとおりこの作品は暗い部分も多いのですが、笑えるシーンも多々あります。
終盤、キクコが肉子と腹を割って話すシーンは泣けます。
そのシーンでは、肉子の駄目なところをしっかり認めつつ、それでも肉子のことを大好きだと、これからも一緒に暮らしたいと言えるキクコが素晴らしいです。
ラストシーンで、大人の階段を一つ上ったキクコに対して「おめでとう」と言った肉子の表情も、まさにキクコの親なのだなと思わせ、とてもよいと思いました。
肉子のキクコへの献身はみうのためでもあるのでしょうけど、それ以上に自分がキクコの親という自覚がそうさせていると思わせるシーンでした。
子どもらしくなんてならなくていい
子どもらしさなんて大人が作った幻想だ
それと同じで完璧な大人もいない
大人でも辛いこと恥ずかしいこと泣きたいことがたくさんある
その時のためにも、遠慮はいらない、怖がらなくていい
子供の時から、たくさん恥かいて、迷惑かけて、怒られて、傷ついて
それで生きていけばいい
みんながみんなそれぞれでいい
サッサンも、キクコを家族同然に考えてくれていますよね。
聴き違えがあるかもしれませんけど、この台詞はよかったです。
原作を読みたい
今回初めて本作の存在を知ったのですが、映画を観終えて、原作小説を読んでみたいと思いました。
記事作成現在Kindleで価格440円、文庫本で728円とのこと。
おわりに
ということでEテレでアニメ『漁港の肉子ちゃん』が放送されたので、視聴した感想を書いた記事でした。
私の認識や理解が間違っていたら申し訳ありません。
↓Amazonでも観られるようです。
気になる方はぜひ。