NHK連続テレビ小説『スカーレット』が2020年3月28日、最終回を迎えました。
最終回と作品全体の感想を書いています。
以下、最新話のネタバレ要素がありますので、バレても構わない方のみ下方スクロールをお願いします。
目次
朝ドラ『スカーレット』
朝の連続テレビ小説は2019年10月から『スカーレット』が始まっています。
戦後まもなく、大阪から滋賀・信楽にやってきた、絵が得意な女の子。名前は川原喜美子。両親と二人の妹との暮らしは貧しく、頑張り屋の喜美子は、幼いながらも一家の働き手だった。15歳になった喜美子は、大阪の下宿屋で女中として働きはじめる。大都会での暮らしと、個性豊かな下宿の人々との出会いは、喜美子をさらに成長させる。3年後に信楽に戻った喜美子は、地元の信楽焼にひかれ、男性ばかりの陶芸の世界に飛び込む。やがて愛する男性と結婚し、息子を授かり、仕事にも家庭にもまい進する日々が始まる。相変わらずの貧乏だが、夫や息子のかたわらで、大好きな陶芸にいそしむ喜美子。だが、幸せなはずの生活は思惑どおりにはいかず、大きな波乱が彼女を待ち受けている。どんなにつらいことがあっても、陶芸への情熱は消えることがない。喜美子は自らの窯を開き、独自の信楽焼を見出していく。
公式webサイトの番組説明には上記引用部のように書かれています。
第25週「炎は消えない」
令和2年3月23日月曜日からの『スカーレット』は第25週「炎は消えない」が放送されていました。
いよいよ最終週です。
武志(伊藤健太郎)の作品が完成し、喜ぶ喜美子(戸田恵梨香)。しかし同じ病気で亡くなった智也(久保田直樹)からの手紙を読み、初めて心情を吐露する武志に、つらさを思いやる。喜美子は武志の作品がチリンと音を立てていることに気づく。それは作品に新たなヒビ模様が生まれる音。喜美子は作品が生きていることを武志に伝える。信作(林遣都)が発案した「みんなの陶芸展」に出品すると決めた喜美子。武志も出品したいと願い出る。作品作りに没頭する武志を見守る真奈(松田るか)。そんな武志との日々を、喜美子は八郎(松下洸平)と共にいとおしくかみしめる。「みんなの陶芸展」には草間(佐藤隆太)、ちや子(水野美紀)、ジョージ富士川(西川貴教)が訪れる。ジョージ富士川のひらめきで「今日が私の一日なら」を寄せ書きすることに。武志は「いつもと変わらない一日は特別な一日」と書き込む。後日、みなで訪れた琵琶湖。その雄大な景色が武志を励ます。
webサイトの「あらすじ」ページにあった先週第25週「炎は消えない」の説明は上記引用部のように書かれています。
抜粋は途中までです。
喜美子(戸田恵梨香)は武志(伊藤健太郎)と信楽の仲間とびわ湖に出かけ、すがすがしい思いに満たされる。武志は闘病しつつ作陶を続け、側で喜美子も陶芸に励む日々。喜美子は武志との時間を大切に過ごしながら、ふと武志に問いかける。喜美子に強く抱きしめられる武志。2人は幸せを胸に刻む。二年後、喜美子は武志の作品を大崎(稲垣吾郎)と共に見つめていた。作品作りに挑戦する大崎。そして八郎(松下洸平)が訪ねてきて…
録画データの番組説明には上記引用部のように書かれています
2020年3月28日放送分の150話、つまり最終話の内容です。
武志の最期
武志は「慢性骨髄性白血病(まんせい・こつずいせい・はっけつびょう)」にかかり、医師からは余命が3年から5年と宣告を受けました。
武志の病気が判明した辺りで、一度ブログに記事にしています。
病気がわかったとき、そう遠くないタイミングでXデーがやって来ると予想していました。
武志がいつ亡くなるのか、私は緊張感をもって視聴していました。
病気が判明してからも、武志は体調を崩したり毛髪が抜けたりしながら、生きており、作陶に勤しんでいました。
そしてとうとう最終週に入るまで武志は生きていました。
最終週に入るまでどころか、最終週に入ってからも、もっと言えば週の後半になっても、武志は生きていました。
いや武志が生きていることは良いことなのですけど、私の緊張感はずっと維持されたままです。
最終週半ばまで存命となると、私の考えも次第に変わってきます。
残り数回になるまでまだ生きているのなら、もしかしたら劇中では武志は死なずにいてくれるのではないか。
史実とは異なる展開があるかもしれない。
そういう淡い期待を抱くようになりました。
武志は劇中では死なず、喜美子たちは彼の最期のときまで静かに見届けようという最終回になるのではないかと。
しかし、その淡い期待は露となって消えます。
最終回が始まって5分ほど経ったときに場面転換が入りました。
桜の花が舞い散る映像に切り替わって……
「(二年後)武志は26歳の誕生日を前にして、旅立ちました……」
……というナレーションが入りました。
やはり亡くなってしまったのです。
最終回でとうとうそのときが来てしまった。
いつもと変らない一日は特別な一日
武志が手術をする様子や亡くなる瞬間は劇中で一切描かれていません。
喜美子にしても、息子の死に直面して悲嘆に暮れる姿も、そこから立ち直る姿も描かれませんでした。
喜美子がこれまでと同じく、穴窯の炎と向き合う姿を見せるだけで終わっています。
炎と向き合うことは自分自身と向き合うことにつながっているでしょう。
私はこれで良いと思います。
「いつもと変らない一日は特別な一日」でしたっけ。
武志が最終回の1回前である149話に、とあるボードに書いた言葉です。
息子・武志の言葉を母・喜美子が体現する最終回のラストシーンの描き方になりました。
最後まで「生きる」ことを描いたということですね。
本物のドラマだった
『スカーレット』は余韻といいますか、視聴者に想像の余地を残す演出が多いように思います。
描きすぎないし、描かなすぎない。
その塩梅が私にとってはちょうど良く、心地良いレベルで、ほぼ全編にわたって安心して観ていられた作品でした。
「傑作」に入るドラマと思います。
劇的な亡くなり方をした人は「北村一輝」さん演じる喜美子の父「川原常治」くらいでしょうか。
これはこれでとてもジョージさんらしかったですよね。
「富田靖子」さん演じる母の「マツ」が亡くなったときは、呆気ない描写だったと思います。
喜美子と八郎の離婚なども比較的呆気なかったかと。
離婚や死といった、親しい人との「離別」はドラマの大きな出来事です。
高い視聴率を見込めるでしょうから、劇的に描写したくなるのが脚本家や演出家の心情であろうと私は思っていました。
しかし、脚本を担当された「水橋文美江」さんを始め、演出を手がけられたスタッフの方々に「力」があったのでしょう。
作り手の自己陶酔ドラマにならず、タンパクにもなり過ぎず、視聴者が劇を観て考える時間や余地を残してくれる、良い距離感をもたらしてくれていました。
これらはストーリーや設定の軸がしっかりしている証左でもあるかなと感じます。
下手に劇的な演出や演技などせずとも、という。
本作は、喜美子を始めとする人々が「生」と向き合う姿を、冷静且つ力強く描ききりました。
「本物のドラマ」を観させていただいた思いです。
特に戸田恵梨香さんと水橋文美江さんには「ありがとうございます」と伝えたいです。
武志と真奈の関係は?
最終回を観て唯一気になったことがあります。
武志と「石井真奈」の関係はその後どうなったのか? ということです。
真奈は「松田るか」さんが演じていました。
「信楽窯業研究所」の事務員で、武志たちの中学時代の2年先輩でしたっけ。
武志と真奈は恋人同士にはなったのだろうと思います。
その後、武志が亡くなるまでの2年ほどの期間で関係がどれだけ発展したのか、それが気になりました。
その点も私たちが想像すれば良いことですかね。
とか言いながら、結婚をしたのかどうか気になっています。
おわりに
ということで、朝ドラ『スカーレット』の最終回と作品全体の感想を書いた記事でした。
今日明日と余韻に浸りたいです。
そして月曜日からは『エール』ですね。