漫画『Sunny』の1巻を購入しました。
読みは「サニー」ですね。
「松本大洋」さんの作品です。
読んだ感想を書いています。
目次
漫画『Sunny』
漫画『Sunny』についてです。
松本大洋が到達した少年期作品の金字塔。
星の子学園――様々な事情を持つ子供たちが、親と離れて暮らす場所。陽光が燦々と降り注ぐ園の片隅に放置されたポンコツサニー。其処は彼らの遊び場であり、彼らの教室だった。『鉄コン筋クリート』『ピンポン』『GOGOモンスター』――未来、スポーツ、異界…あらゆる世界で、その体と心を躍動させる少年たちを描き続けてきた松本大洋が、自らの少年期に思いをはせつつ、その最高峰を目指す渾身の作品。
Amazonの販売ページには上記引用部のように書かれています。
出版社は『小学館』、掲載誌は『月刊IKKI』。
掲載誌はIKKIが休刊したため、『月刊!スピリッツ』へ移籍しているようです。
全6巻で完結しているようです。
Sunny コミック 全6巻完結セット (IKKI COMIX)
松本大洋
作者は『松本大洋』さん。
『鉄コン筋クリート』や『ピンポン』などで有名な漫画家さんです。
有名も有名な方ですので、私が説明するより皆さんの方が詳しいはずです。
私の松本大洋歴
私の松本大洋歴です。
あまり詳しくないですし、すべてを読んでいる訳でもないです。
『週刊少年ジャンプ』だったかと思いますが、巻末の作者さん等の一言メッセージが掲載されていました。
今も掲載されているでしょうか?
そこでどなたかが、スピリッツでしたっけ、そこに連載されている松本大洋さんの『鉄コン筋クリート』がすごい、構図が天才的だ、みたいなことを書いていました。
どなただったでしょうか、冨樫義博さんだったか忘れましたが。
私はそこで初めて「松本大洋」さんの存在を認識しました。
そのときまで私は青年誌の漫画や青年誌そのものがどうも苦手でほとんど手を出しておらず、そのとき初めて『ビッグコミックスピリッツ』と記憶していますが、それを購入しています。
青年漫画が苦手と書いているからには、それまでも読んだことはありました。
例えば『孔雀王』などを友だちから借りたことはあるのですが、どうしても馴染めなかったです。
実は今も苦手なままです。
なので当ブログで漫画の話をするときも、青年漫画の名前がほとんど出てこないのですよね。
とにかくその一回だけスピリッツを購入しましたが、そのときはそれで終わっていました。
連載の途中を1回だけ読んでも、その良さがわからなかったのだと思います。
その後何年か経って、松本大洋さんを激賞する知り合いがいまして、そこで単行本の『鉄コン筋クリート』を読ませてもらいました。
そこで本格的にハマりました。
この人は確かに、あのとき漫画家さんが言っていたように天才かもしれないと。
その人から『ZERO』やら『花男』やら『ピンポン』やらも借りました。
鉄コンとピンポンはその後手元に置いておきたいと購入しています。
さらに先ほどの『IKKI』の発刊が始まってからは購読するようになりました。
連載に松本大洋さんの『ナンバー吾』があったからです。
ナンバー吾は単行本も購入しています。
ナンバー吾の連載終了と同時にIKKIの購読も止めたのか、その前に止めたかは忘れましたが、いずれにしてもIKKIの購読は長く続かなかったです。
先ほど書いた青年漫画が苦手というあれがどうしても拭えなかったこともあるでしょうか、好きなジャンルではない作品が多かったです。
IKKIが青年誌かどうかは微妙なところですけど。
さらに描き下ろしの『GOGOモンスター』も買いました。
『竹光侍』は1〜3巻まで購入しています。
竹光侍はいずれブログに感想を書きたいですし、最終巻まで集めたいです。
『東京ヒゴロ』は1巻を◯◯◯◯フで触りだけ立ち読みしました。
購入後に手放した作品もあります。
現状手元にある松本大洋作品は『鉄コン筋クリート』と『竹光侍』、それと今回ご紹介している『Sunny』ですね。
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感想
前置きがすっかり長くなりました。
『Sunny』1巻を読んだ感想です。
1巻だけでなく3巻などのことも言及してしまうかもしれません。
以降ネタバレ要素があります。
バレても構わない方のみ下方スクロールをお願い致します。
1・3巻だけ
と言いながら前置きをしますが、現状『Sunny』は1巻と3巻しか持っていません。
情けない話ですが安くなっていないと買えないのです。
2巻は古本屋に行くたびに少しずつ立ち読みをして読みました。
4巻から6巻まではまだ全然手を付けていません。
すごい漫画だ
読み終えてすぐ思ったことは「これはすごい漫画だ」です。
個人的には、今まで読んだ松本大洋作品の最高峰、最高傑作かもしれません。
懐かしい
物語の舞台は1970年代後半と思います。
春男たちの着ている服やアップリケ、歌う曲、家具・調度品・テレビのデザイン、建物のデザイン、町の様子、乗っている自転車のデザイン、出てくる有名人の名前、日産サニー。
これらもすべて1970年代の当時のものです。
それが懐かしいです。
「春男」たちは私より年上です。
ですが今の子どもたちを見るより、私にとってずっと「近い」ものです。
読んでいてタイムスリップをしたような気分になれます。
それも本作が好きな理由の一つになっています。
あるネット記事では本作は松本大洋作品の中で「入りづらい」部類なのだそうです。
私は逆に、本作はとても入りやすかったです。
むしろ『ナンバー吾』や『GOGOモンスター』などの方がずっと入りづらかったです。
その理由は、私と本作の時代的な「近さ」にあるのかもしれません。
実体験?
ネット情報を見ると、本作は作者・大洋さんの実体験が反映されているようですね。
大洋さんの自伝的な作品であるという情報が散見されますし、Wikipediaにも書かれていましたし、インタビュー記事を読んでも一時期施設にいたことを話していらっしゃる箇所がありました。
私は詳しいことを知りませんので、知りたい場合は検索をかけてください。
実体験だからあれほどまでリアルで、あそこまで子どもの心情を乗せられるのだろうと、妙に納得できました。
記事作成現在、大洋さんは56歳です。
作品1〜3巻の時代は、沢田研二さんの『勝手にしやがれ』の歌詞が出てくることなどから、1970年代後期から1980年ほどと思われます。
そのころ大洋さんはちょうど春男たちと同じくらいの歳だったのでしょう。
児童養護施設
本作の舞台は関西にある「星の子学園」です。
学園といっても小学校や中学校などではありません。
いわゆる「児童養護施設」でしょう。
当時の言い方で表すなら「孤児院」ですか。
それぞれ事情があって、親元を離れている子どもたちが共同で生活をしています。
毎日明るく騒がしくしている子どもたちですが、それぞれが暗い過去と現在、未来を抱えています。
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学園の群像劇
本作はその星の子学園で生活している人の「群像劇」です。
彼らの家族や星の子で働いている人の物語でもあるでしょう。
学園の日常を描きつつ、そこで生活をする一人ひとりの人生の背景にも迫っています。
物語は「静(せい)」という男の子(画像)が入園するところから始まります。
そこからして暗いです。
それはそうですよね、静に対して春男が言っていましたが、その子は「親から捨てられた」から学園に入るのですから。
自分の居場所は実家であってここではないと、おそらく全員が思っていることでしょう。
実際に春男も静もそう思っている描写があります。
諦めきっている子がいるかもしれないので、全員ではなく「ほとんど」でしょうか。
だとすれば、それはそれでとても辛いですけど。
しかし、そうは言っても目の前にある現実がそうそう変わる訳ではないことも、彼らはわかっているのです。
部分部分は受け入れつつ、芯の部分では受け入れていない感じ。
それが読んでいて痛いほど伝わってきます。
一方で子どもたちは強くもあります。
学校へ行ったりさぼったり、園のお手伝いをしたり、園の外に置かれた廃車の「日産サニー」にたむろしたり、喧嘩をしたり、皆で食事をしたりお風呂に入ったり寝たりしています。
当たり前ですが普段は日常生活を送っているので、園の中での人間関係、学校での人間関係、町の中での人間関係が育まれています。
そういう何てことのない生活と並行しつつも、彼らの人生の背景に迫る物語が『Sunny』です。
静がどうして『大洋ホエールズ』の野球帽をかぶり続け、星の子学園のある関西方面の言葉遣いに染まらないのか。
逆に春男はどうしてすぐ関西の訛りになったのか、どうして白髪になったのか、どうして『ニベア』が好きなのか。
「純助(じゅんすけ)」はどうして手の爪を切らないのか、四つ葉のクローバーを集めているのか。
物語を通じて読者の私たちは、その理由を知ることになります。
そしてそれらの理由の根っこは皆同じです、たぶん。
それを知るごとに私たちは考えさせられ暗い気持ちになり、それと同時に彼らを愛おしく想うのです。
春男がかっこいいけど哀しい
先ほど書いたように本作は群像劇です。
ですが、あえて一人中心人物を挙げると「春男」になるでしょう。
春男は星の子で1,2を争う問題児です。
1番と言い切ってもいいです。
不良児童。
年齢は10歳前後しょうか、しかし頭髪がすべて白髪の男の子。
運動神経が高く、エロけんから奪った(?)サングラスを掛け、野球とハードボイルド、ロボットのフィギュア、廃車「サニー」の運転席に座って想像で運転すること、「牧男(まきお)」さんが好き(憧れ)、そして『ニベア』の香りが大好き。
口が悪く、悪知恵が働き、万◯きもするようですし近所の大人たちともトラブルが絶えないようですし、学校に行かない、勉強もしない、「家のモン・家の奴ら(自分の家で親と暮らせている子)」を敵視していて、彼らと喧嘩もします。
学園内でも、保護者代わりに生活を共にしている大人の「足立」さんを呼び捨てにしていたり、上に書いた「エロけん」こと中学生「研二(けんじ)」からサングラスを◯んだり、女子を冷やかしたりからかったりします。
その一方で、同じような境遇の星の子の皆を気遣う言動もまま見られ、家の奴らにいじめられていた純助を助けたり、「めぐむ」と一緒に事故でタヒんだ猫を埋葬してあげたりします。
仲間意識も人一倍強く持っているのでしょう。
髪は、入園時は黒髪が多かったようですけど、1話時点ですべて白髪になっています。
東京から学園に来た頃は標準語でしたが、すぐに関西弁を話すようになり、現在は流暢になっているようです。
こういう春男の、星の子入園後の急激な変化は、彼の純粋さと繊細さを表す「裏返し」にもなっています。
現時点で最終回まで読んでいないためはっきりとはわからないですが、春男はおそらく純粋すぎる・繊細すぎるが故に意識的に「悪い子になっている」のでしょう。
「別人になろうとしている」と言ってもいいかもしれません。
その理由は「辛い」からです、たぶん。
母に捨てられた今なお、母を大好きであるからです。
大好きなのに裏切られ続けているから、今までとは別の自分になろうとしているのだと私は思っています。
自分が別人になれば母親が振り向いてくれると思っているのかもしれません。
好きだけど、諦めきれないけど、忘れようと努めているのかもしれません。
10歳前後の子がそんなことを考えているというだけで、とても悲しいです。
認識を間違えていたら申し訳ありません。
春男が心配
その春男は、今後大きな騒動を巻き起こすであろうと予想されます。
1巻からそのフラグが立っているように見えるからです。
1巻では「家のモン」を敵視して喧嘩をすることと関連して、園長の孫である牧男さんから「そんなことばっかしとったら いつか痛い目見るで」と言われています。
これは絶対にフラグだろうと私は思っています。
研二からは「あれは将来ぜったいカタギにはならん!」と言われていました。
春男の普段の行動を鑑みるに、学校や近所を巻き込むような大きなトラブルが起こったときに、星の子の関係者の他に彼の味方をしてくれる大人がほぼいないの可能性が現状高いです。
トラブルの内容次第では皆無の可能性だって高く、星の子の大人も、全員とまで言わないでも何人かは彼を見放そうとする危険さえあります。
それを1巻を読みながら危惧しています。
そしてこれは願望ですけど、最終的に星の子は春男を見放さないと信じています。
春男との「一時的な別れ」があっても。
Sunny コミック 全6巻完結セット (IKKI COMIX)
アニメ化されるか?
『Sunny』をアニメ映画化してくれませんかね。
アニメ映画にするには物語が長いようなら1〜2クールのテレビシリーズで。
実写よりアニメで見たいです。
実写で彼らに合う人を探すのは難しいでしょうし、イメージと違う人だと相当がっかりしそうなので。
似ている似ていないを無視して、力の強い事務所が売り出したい人に決まってしまいそうじゃないですか。
アニメにしても声がイメージと合っていないと萎えますけど、それ以上に見た目の印象の違いは決定的なものになる気がします。
それ以前に、アニメであっても松本大洋さん以外の人が、映像でこの漫画の雰囲気を表現するのは無理そうではあります。
おわりに
ということで松本大洋さんの漫画『Sunny』の1巻と3巻を購入し読んだ感想を書いた記事でした。