『MBS(毎日放送)』で放送されている『プレバト!!』では、2021年6月17日木曜日の放送に俳句コーナーがありました。
視聴した感想を書いています。
目次
MBS『プレバト!!』
テレビ番組『プレバト!!』についてです。
人気芸能人にはそもそも才能があるのか?あらゆるジャンルで抜き打ちテストを実施、その結果をランキング形式で発表する。
公式webサイトのディスクリプションには上記引用部のように書かれています。
あらゆるジャンルとは、今回紹介する俳句だったり、水彩画だったり、消しゴムはんこだったり、絵手紙、生花、スプレーアート、色鉛筆などです。
中でも俳句がメインコンテンツと思われます。
放送時間
放送時間について。
放送は毎週木曜日の19時から20時までです。
出演者
出演者です。
メインの司会は「浜田雅功」さんです。
ダウンタウンの浜ちゃんですね。
アシスタントが毎日放送の「玉巻映美」アナウンサー。
ナレーションが「銀河万丈」さん。
俳句の査定員は「夏井いつき」さん。
俳句カテゴリの出演者は「梅沢富美男」さんを始め、「東国原英夫」さんや「立川志らく」さん、「中田喜子」さん、「千原ジュニア」さん、「藤本敏史」さん、「村上健志」さん、「横尾渉」さん、「千賀健永」さんなどがいます。
俳句
『プレバト!!』の俳句カテゴリが2021年6月10日の放送でも扱われました。
今回のお題は「折りたたみ傘」です。
折りたたみ傘は季語ではないでしょうか。
折りたたみ傘は季語ではなさそうです。
季語でないならば何か季語を添えて詠む必要があります。
この回では俳優の「村上弘明」さん、アイドルグループ「Kis-My-Ft2」の「宮田俊哉」さん、フリーアナウンサーの「神田愛花」さん、お笑いコンビ「ティモンディ」の「高岸宏行」さん、俳優の「中川大輔」さんが出演していました。
レギュラー陣では「梅沢富美男」さんと「森口瑤子」さんが出演していました。
順位
まずは今回の出演者さんの順位戦の結果です。
5位が中川さん(才能ナシ、25点)、4位が村上さん(才能ナシ、37点)、3位が神田さん(凡人、40点)、2位が宮田さん(凡人、55点)、1位が高岸さん(才能アリ→凡人、70点)でした。
高岸さんの件は後述します。
全体的に低調
今回は才能なしが2人、才能ありは当初1人いましたが、色々あって結果いなくなってしまいました。
そのため全体的に低調だったと思います。
個人的に心に引っかかる俳句が少なかったです。
その一方でレギュラーの梅沢さんと常連の森口さんは、ハイレベルな俳句を詠まれています。
2位宮田さん
そんな中で気になった句の一つは宮田俊哉さんの句です。
2位、55点。
句は、梅雨が明けて犬の散歩に出ようと外に出たら、戻り梅雨で雨が降り始めてしまい、軒から落ちる雨粒の音でしょうか、それに対して犬が吠えている、そんな様子が詠まれました。
梅沢さんは句が三段切れになっていると指摘していらっしゃいました。
これは私も気がつきましたね。
森口瑤子さんは中七の「軒先の粒」が何を指しているのかわかりにくいと仰っていたでしょうか。
確かに何の粒かわかりにくい表現です。
夏井先生は、宮田さんは中七を格好つけたと言っていましたが、格好ついていないし無理矢理な感じがすると仰っていました。
凡人であるという事実だけがあると。
三段切れについても指摘されていました。
添削は、原句では下五に「犬吠える」とありましたが、それを上五に持ってきました。
「梅雨『の』戻り『の』」と、「の」を繰り返すことで調べを生み、最後、下五を「軒しずく」とし、軒から雨水が落ちている様子をしっかり描写していました。
私には「軒しずく」の発想は浮かびませんでした。
よい日本語ですね。
1位は高岸さん
1位は高岸宏行さん。
点数は70点。
句は、夏の朝に重たい丸太を持ったり下ろしたりを繰り返している、そんな様子を詠まれています。
実は、この丸太の上げ下げは、朝の部活の風景を詠まれたようです。
高岸さんは愛媛県の済美高校野球部のご出身だそうで、雨が降ると雨天練習場で1日練習することになります。
屋内では練習メニューが限られるためランニングメニューが多くなります。
その中でも一番きついメニューが、丸太を両手で抱えたまま走るものがあるそうで、それを一日中のでしたっけ、そういう厳しいトレーニングをしている様子を詠んでいるようでした。
しかし、梅沢さんも夏井先生も、これは林業などをなさっている方が、朝から丸太を切っては移動させているという、労働を詠んだ俳句だと受け取ったようです。
素直に受け取ると、梅沢さんたちのように解釈できる俳句になっています。
先生も、労働の俳句として評価をしたので、才能ありの70点としていました。
牧歌的でよいと。
ところが、これは高校生の野球の練習の風景を詠んだと説明されるや、詠まれた俳句からは高校野球も練習も要素を感じられないことから、才能ありから凡人査定に覆されています。
添削はやや投げやりな感じになっていました。
高岸さんのどこまでもポジティブなコメントを聞いていて怒りが湧いてきた様子。
添削は中七「丸太もっては」下五「おろしては」を、「丸太かついでランニング」にしていました。
私はこのやり取りに疑問がありました。
俳句は、作者のものであると同時に、読者のものでもあると思います。
言い換えますと、作者の意図と読者の意図が合致する必要はないと思っています。
今回の高岸さんの句は、私たち読者が林業をしている人たちの労働の句と読めば、それはもう労働の句です。
作者の意図と合っているか外れているかなど問題ではない。
現在高い評価を得ている俳句にも、作者の口から、あるいは文章で句の説明がなされていないものが数多く存在するでしょう。
そんな句の中には、今の時代にそうだと思われている解釈とは異なる意図をもって詠まれたものも数多くあると推測されます。
説明がなければ確認のしようがないですからね。
作者の説明があっても、説明を超えて高く評価されている俳句も数多くあるでしょう。
逆に、作者の意図とは異なる解釈をされて評価を落としている俳句もまた、数多くあるのではないでしょうか。
だからこそ詩歌や文学は面白いと思うのですけどね。
一つの解を求めるなどナンセンスですし、それほどつまらないものはないです。
高岸さんが詠まれた句は、技術的に大きな問題がある句とは思えませんでした。
なので私には、作者の説明どおりに先生が「添削する必要のない」タイプの句と思いながら観ていました。
添削をした結果、つまらない句になってしまいましたし。
『プレバト!!』はあくまでもエンターテイメントです。
現場を盛り上げるために、視聴者を面白がらせるために、視聴率を取るために、ああいうやり取りをあえて起こしたのだろうとも思っています。
原句がよい句とは思いますけど気になる点もあります。
それはお題「折りたたみ傘」を詠んでいないことです。
傘から雨、雨から高校時代の雨天練習へと発想を広げたのだと想像しますが。
昇格試験
今回は「森口瑤子」さんの昇格試験がありました。
森口さんは試験を迎えて「特待生2級」でした。
昇格なさったら特待生1級になるようです。
名人まであと少し。
句は、自分の中の一番厄介な「ジェラシー」、ジェラシーのような黒い感情を折って畳んで小さくして白日傘に仕舞い込んだ、ということが詠まれていました。
白日傘は貴婦人が使う純潔なイメージがあるのでそこに仕舞い込んだとのこと。
結果は「1ランク昇格」。
特待生1級です。
昇格の理由は「対比が巧い」でした。
夏井先生が仰るには、ジェラシーのような重い感情を俳句に詠み込み、その上で季語を立てることはとても難しいことだそうです。
感情は折ったり畳んだりできないもので、俳句の発想法の一つだと。
感情を折ることは強い感情の発露を感じさせ、一方畳むことは丁寧な動作で静けさを感じさせる対比があります。
また、ジェラシーのような、ある意味で不潔などす黒い感情と純潔な白日傘とで、心理的な対比と色の対比も行われています。
そういう発想を働かせた上で17音にきちんと収める言葉の選び方と配置の巧みさ。
夏井先生は「この人の今、伸びてる力は目覚ましい」とまで仰りました。
もちろん添削はなし。
いやいやこの句は素晴らしいです。
前回名人に昇格なさった方の俳句と比べても、いえ、比べてはいけないくらいレベルの高い俳句でした。
梅沢さんの俳句史に残る句集作り
永世名人である梅沢さんの句です。
梅沢さんの句集に入れる俳句を、掲載決定かボツかを先生が判定します。
今回の判定は「掲載決定」でした。
句は、小学生が一面だけ透明になっている傘を差していて、道端にカエルがいたようで、子どもが傘の透明部分から覗くようにカエルを見てる、そんな様子を詠まれていました。
季語は「青蛙」です。
確か「蛙」は春の季語です。
しかし「青蛙」や「雨蛙」は夏の季語になるのだったはずです。
蛙は冬眠から覚めた様子なのでしょうね。
掲載決定の理由は「伏線が張れている」です。
原句の中七が「透ける窓あり」と言い切っています。
「あり」とすることで説明的な雰囲気が出てしまいます。
ですが、これが伏線になっているのだそう。
この伏線の後に季語の青蛙が飛び出してくる。
子どもは透ける窓から今見つけたんじゃないかと読者に思わせる、作者の狙いどおりに読むことができる俳句になっている。
そういう評価でした。
そこにカエルがいた、それを小学生が見つけて傘の透明部分から見ている、ただそれだけを詠んでいる俳句です。
けれども映像としては、子どもがカエルを見つけてうきうきとしている様子をうかがえますし、もしかしたらその後カエルがピョンと跳ねて、小学生も飛び退けてキャーキャー騒ぐかもしれない。
などと想像がかきたてられるくらい映像が動いてくる句です。
季語を立てることということはこういうことかと、とても勉強になりました。
こういう俳句を詠みたいものです。
おわりに
ということで、MBS『プレバト!!』の俳句コーナーのお題「折りたたみ傘」を視聴しての感想を書いた記事でした。