私のお気に入りのジャズ、オススメできるCDを紹介します。
私は普段それほどジャズを聴いている訳でもありませんし、詳しい訳でもありません。
紹介するのはど定番でベタな作品ばかりと思います。
目次
チャールズ・ミンガス『直立猿人』
まず紹介するのは「チャールズ・ミンガス(Charles Mingus) 」の『直立猿人 (PITHECANTHROPUS ERECTUS) 』です。
1956年リリース。
画像の左端です。
初めて聴いたとき、ミンガスの音楽の攻撃的な音に圧倒された覚えがあります。
暴力的なのはミンガスのベースだけでなく、「ジャッキー・マクリーン (Jackie McLean) 」や「J.R.モンテローズ (J.R.Monterose) 」のサックスも、暴力的なまでに攻撃的です。
それらは作曲家としてのミンガスの計算された狂気でもあるかもしれませんけど、それだけではあそこまで表現できないはず。
「直立猿人」は、ミンガス自身の説明によれば、「Evolution(進化)」「Superiority Complex(優越感)」「Decline(衰退)」「Destruction(滅亡)」の4部構成の組曲。
直立猿人のWikipediaにはこのように書かれています。なるほどわからん。
Wikipediaには「人類の文明社会を風刺しているとも取れる曲」と書かれていますが、50年代という時代を考えれば、表向き人類の文明社会に向けていながら、その実、白人社会への風刺をしているのでは、という気もします。
それとこの作品はジャケットのデザインがくそカッコイイです。
どことなく『ビーツ, ライムズ&ライフ (Beats, Rhymes and Life) 』など「ア・トライブ・コールド・クエスト (A Tribe Called Quest) 」のジャケットデザインを想起させます。ヒップホップの人たち。
時系列を考えれば逆なんですけどね。
ジャズベーシストというと、私は「ロン・カーター (Ron Carter) 」が好きでよく聴いていました。
ミンガスを聴いた後にロン・カーターを聴く、その逆もまた面白いです。
- アーティスト: ザ・チャーリー・ミンガス・ジャズ・ワークショップ,チャールス・ミンガス,ジャッキー・マクリーン,J.R.モンテローズ,マル・ウォルドロン,ウィリー・ジョーンズ,チャーリー・ミンガス,ジョージ・ガーシュウィン,アイラ・ガーシュウィン
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2016/06/29
- メディア: CD
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マイルス・デイヴィス『ビッチェズ・ブリュー』
次は「マイルス・デイヴィス (Miles Davis) 」の『ビッチェズ・ブリュー (Bitches Brew) 』です。
1970年リリース。
CDを持っているはずなのですが、記事を書くために探しても見つかりませんでした……誰かに貸したままなのかもしれません。覚えていない。
ジャズのエレクトリック化、フュージョン化を推し進めたマイルス・デイヴィスの代表作の一つ。
フュージョン化のきっかけというと、ビッチェズ・ブリューの前作(?)『イン・ア・サイレント・ウェイ (In A Silent Way) 』なろうかと思います。
イン・ア・サイレント・ウェイも好きですが、個人的にはビッチェズ・ブリューの方が、ジャケットデザインの秀逸さも相まって印象に残っています。
フュージョン(Fusion, Jazz Fusion)は1960年代後半から現在に至るまでのジャズを基調にロックやラテン音楽、R&B、電子音楽などを融合(フューズ)させた音楽のジャンルである。
フュージョン (音楽) のWikipediaにはこのように書かれています。
タイトルのビッチェズ・ブリューの意味は「娼婦たちの飲料」ですか。媚薬? 性的なイメージの強い言葉。
当時「魔女ブーム」が起こっていたと記憶しています(私は生まれてないです)ので、もちろん「ウィッチズ・ブリュー」を掛けているはずです。
魔女たちが大きな釜でグツグツと如何わしい飲み物を煮込んでいる、そういうビジュアルが連想されます。
ブリューはブルースのブルーとも掛かっていますか。
このビッチェズ・ブリュー辺りにおけるジャズのエレクトリック化は、リリースされた1970年当時のアメリカの社会と大きな関係があったことでしょう。
当時は、その前年1969年にウッドストックが開催されるなど、ロックやヒッピーといったカウンターカルチャーが勢いを増していた時代で、マイルス・デイヴィスがジャズとロックとの融合を考えるのは自然な成り行きだったのかもしれません。
当時の彼は既に40代半ばに差し掛かろうかという年齢のはずで、そんな彼が1ジャンルを作るほどの試みをしたこと自体が快挙と言えるのではないでしょうか。すごいことです。
1969年というと、ブラス・ロックバンドの「ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ (Blood, Sweat & Tears) 」がバンド名と同名の『Blood, Sweat, and Tears』でグラミー賞最優秀アルバムを受賞しました。
この『Blood, Sweat, and Tears』と、その翌年(ビッチェズ・ブリュー発表と同年)に発表した『BS&T 3』も、ジャズのテイストを加えたロックです。
いや『BS&T 3』はもはやジャズと言ってもいいくらいの音楽になっています。
特にアルバム『Blood, Sweat, and Tears』はマイルス・デイヴィスに相当な影響を与えたのではないでしょうか。
ビッチェズ・ブリューは、ロックにジャズを融合しようとした彼らへのアンサーの意味もあったのではないかと。
当時、ロックの台頭でジャズは死んだと考えられていた向きもあったようで、マイルスなりのジャズの生存戦略、その結果がビッチェズ・ブリューだったという見方をすることもできそうです。
マイルスのロックやヒッピーといったところへの関心は、前出の画像にあるジャケットデザインからも見て取れます。
見るからにサイケデリックですよね。
デザインを担当したのは確か、「マティ・クラーワイン (Mati Klarwein) 」という画家です。ユダヤ系の人だったような淡い記憶。
何だか音楽の感想ではなくなっています……。
良い悪い、好き嫌いの前に、ジャズを聴くならとりあえず一度は触れておいた方が良いかなと感じられる作品です。
本作を単体で聴くよりもそれまでの作品も聴いて、マイルス・デイヴィスの制作の流れを知った方がより面白いと個人的には思います。
こう変わっていくのかと。
ビッチェズ・ブリュー-SA-CDマルチ・ハイブリッド・エディション-(完全生産限定盤)
- アーティスト: マイルス・デイビス
- 出版社/メーカー: SMJ
- 発売日: 2018/08/08
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ハービー・ハンコック『ヘッド・ハンターズ』
上に貼った画像の真ん中にある作品「ハービー・ハンコック (Herbie Hancock) 」の『ヘッド・ハンターズ (Head Hunters) 』です。
1973年リリース。
一番上の画像右にある、ハンコックの金字塔的作品である『処女航海 (Maiden Voyage) 』と悩みましたが、インパクトがより強い作品を選びました。
ヘッド・ハンターズに収録されているハンコックの代表曲の一つである「Watermelon Man」は、1962年リリースの『テイキン・オフ』に初めて収録された……んでしたっけ。
曲が有名になったのはオリジナルではなく、コンゴ奏者「モンゴ・サンタマリア(Mongo Santamaría)」のバージョンだったような。
ウォーターメロン・マンは直訳すると「スイカ男」になります。
少年時代に、ハンコック少年が暮らしていたシカゴの地で出会った、スイカ売りの男性のことを指している、ということだったでしょうか。
客がスイカ売りを呼び止めるためにかけた声が「Hey, Watermelon man!」なのですね。
『テイキン・オフ』はハンコック初のリーダー作品で、ウォーターメロン・マンも売れるために作られたビジネス感がなくもないですが、R&B要素すら感じさせるジャズ・ファンクは一聴の価値ありです。
彼のルーツである少年時代を過ごしたシカゴでの思い出と、黒人としての彼のルーツであろうアフリカをも感じさせる、トリップ感のある名曲です。
私はマインドフルネス、瞑想をしているときによくこのヘッド・ハンターズをかけます。
エレクトリック・ピアノについて、ハンコック自身はかつて、とあるインタビューでこう語っていました。
「そこにあるのはエレクトリック・ピアノだった。
でも僕はエレクトリック・ピアノなんてオモチャだ、シリアスな楽器じゃないって思ってたんだ。
こんなおかしな楽器なんて弾いたこともなかった。
まあ仕方なく弾いてみたんだけど、これがビューティフル・サウンドなんだ。暖かくて、アコースティック・ピアノのようにリッチなサウンドがしたんだ。
それに、ドラムス、特にトニー(・ウィリアムス)のはすごく音がデカくて、アコースティック・ピアノの音なんてかき消されちゃうけど、これだったらボリュームを上げるだけでドラムス並の音が出る」
とジョークを交えて語っています。
ジャズでエレクトリック・ピアノを弾くことに対するファンの嫌悪は、当時かなり強くあったことでしょう。想像に難くない。
彼自身、当時それを感じていたことがこの言葉からもわかります。
このエピソードはマイルスの『イン・ザ・スカイ』の収録時、マイルスがハンコックに初めてエレクトリック・ピアノを弾かせたときのものです。
「ハンコックのエレクトリック化」のきっかけは、やはりマイルスにあったのですね。
そういう意味でも、上記のマイルスの作品を聴いてみる価値があろうかと私は思います。
また、ハンコックはこうも言っていました。
ステージで急遽リズムパターンを変えてみるなどの「音楽的な遊び」を、机上で予め考えてからステージで演奏することはあるのか、という質問に対しての言葉。
「そういう数学的リズムっていうのは考え方としては可能だけど、『音楽』ではないんじゃないかい?
自然に体から出てくる、長年音楽をやっているうちに培われて、それで出てくるものじゃないとね」
私が最近の音楽にあまり感動しなくなったのはこういうところかもしれないなと思ったり思わなかったり。
おわりに
わずか3作品ではありますが、私がよく聴くお気に入りのジャズCD、オススメできる作品でした。
ベース奏者「レイ・ブラウン (Ray Brown) 」がピアノ奏者「デューク・エリントン (Duke Ellington) 」とデュオで演奏した『ディス・ワンズ・フォー・ブラントン (This One's for Blanton) 』を入れれば良かったかな〜と今になって思いましたが、まぁいいでしょう。
こちらも超がつくくらいの名盤なので是非。
冒頭でも書いたように、私は大して詳しくありません。ニワカです。
理解が間違えていたりおかしかことを書いていたりしたら申し訳ありません。