『MBS(毎日放送)』で放送されている『プレバト!!』では、2021年9月30日の放送に俳句コーナーがありました。
今回は2021年秋のタイトル戦「金秋戦」の決勝が行われました。
決勝戦のお題は「バッテリー切れ間近」。
視聴した感想を書いています。
目次
MBS『プレバト!!』
テレビ番組『プレバト!!』についてです。
人気芸能人にはそもそも才能があるのか?あらゆるジャンルで抜き打ちテストを実施、その結果をランキング形式で発表する。
公式webサイトのディスクリプションには上記引用部のように書かれています。
あらゆるジャンルとは、今回紹介する俳句だったり、水彩画だったり、消しゴムはんこだったり、絵手紙、生花、スプレーアート、色鉛筆などです。
中でも俳句がメインコンテンツと思われます。
放送時間
放送時間について。
放送は毎週木曜日の19時から20時までです。
出演者
出演者です。
メインの司会は「浜田雅功」さんです。
ダウンタウンの浜ちゃんですね。
アシスタントが毎日放送の「玉巻映美」アナウンサー。
ナレーションが「銀河万丈」さん。
俳句の査定員は「夏井いつき」さん。
俳句カテゴリの出演者は「梅沢富美男」さんを始め、「東国原英夫」さんや「立川志らく」さん、「中田喜子」さん、「千原ジュニア」さん、「藤本敏史」さん、「村上健志」さん、「横尾渉」さん、「千賀健永」さんなどがいます。
2021「金秋戦」
『プレバト!!』の俳句カテゴリが2021年9月30日の放送でも扱われました。
今回は2021年秋のタイトル戦「金秋戦」の決勝が行われました。
2021年「金秋戦」の決勝出場者
金秋戦決勝戦の出場者です。
- 梅沢富美男(永世名人)
- 東国原英夫(永世名人)
- 村上健志(名人10段☆2)
- 藤本敏史(名人10段)
- 千原ジュニア(名人7段)
- 横尾渉(名人7段)
- 中田喜子(名人5段)
- 立川志らく(名人4段)
- 森口瑤子(名人初段)
- 北山宏光(特待生3級)
敬称略で失礼します。
一応段位順です。
段位を間違えていたら申し訳ありません。
予選の結果と感想は、上にリンクを張った記事に書いています。
結果
2021年「金秋戦」決勝戦の結果です。
- 北山宏光
- 横尾渉
- 立川志らく
- 藤本敏史
- 村上健志
- 梅沢富美男
- 東国原英夫
- 中田喜子
- 千原ジュニア
- 森口瑤子
大波乱が起きました。
出場者で唯一の特待生ランクである北山さんがタイトル戦初優勝を果たしています。
おめでとうございます。
そして、梅沢さんと東さん、フルポン村上さん、フジモンさんの俳句四天王がことごとく上位3位以内に入ることができませんでした。
オレンジ色に変えた順位の方は、次回タイトル戦のシード権を獲得しています。
感想
2021年「金秋戦」の決勝を視聴しての感想です。
個人的に気になった俳句をあげて感想を書きます。
お題
決勝戦のお題は「バッテリー切れ間近」です。
画面にはスマートフォンの充電が切れそうになっている画像が映し出されていました。
バッテリーは季語ではありませんので、各々季語を見つける必要があります。
全体の感想
全体の感想です。
今回、タイトル戦にしてはレベルが高くなかったと思っています。
全体に低調で、個人的に印象に残る俳句が1句もありませんでした。
低調だった理由は「お題」でしょうか。
お題には俳句に合う合わないがあって、今回は合わなかったのだろうなと。
それを踏まえて以降を書いていきます。
1位 北山宏光さん
優勝者は北山宏光さんでした。
改めましておめでとうございます。
句は、スマホが壊れると画面が真っ黒になり、その画面には指紋と月が映っていたことを詠んでいらっしゃいました。
季語は「月」。
夏井先生はこの句を東さんが詠んだと思っていたそうです。
それが北山さんとわかって、たいそう驚いていました。
詠み手がわかってから改めて句を見ると、上五「スマホ死す」は若い人が使う言葉とわかる。
「死す」を重く受け止めていて、評価の分かれ目になると感じていたようです。
北山さんとわかるとこの「死す」はそこまで重くないそう。
そして中七にある動詞「浮かぶ」、これは一般的に俳句に使われると映像になっていないことが多いものだそうですが、本当に画面に浮かんでいるのだから、映像になっていると判断されました。
さらに下五にある「月」と冒頭に持ってきた「スマホ」の取り合わせも上手くいっているようで、印象的な映像を作れているとの評価でした。
私はこの句は優勝まではいかない気がしています。
そう思える理由は何でしょう、最後が6音の字余りで「もたつく」からでしょうか。
声に出して詠んでみると、語感がよくないのですよね。
俳句は「詠む」というように、声に出すものと私は思いますので。
指紋と月の発想がよい句とは思いますけれども。
それに、冷静になると上五「スマホ死す」も、そこまで良い言葉ではないと思います。
ドラマチックに見せようとする狙いが透けているといいますか。
先生が上五に「スマホ死す」と持ってきたことの衝撃に引っ張られて、句全体の評価を見誤っているようにも思えます。
タイトル戦は順位を決めるもの、つまり価値は相対的なものです。
そういう意味で優勝という先生のご判断なのでしょうか。
そうであったとしても、個人的には横尾さんやフジモンさんの句の方が上だったと思っています。
2位 横尾渉さん
2位は横尾渉さんでした。
句は、フリードリンクを飲みながらずっと勉強していたけど電子辞書の充電が切れた、そういうことを詠まれていました。
フリードリンクですからファミリーレストランなどでしょう。
7・5・5音の破調でした。
季語は「夜学子」。
読みは「やがくし」。
夜学に通っている生徒や、夜に勉強をしている人のことでしょう。
秋の季語なのですね、今回初めて知りました。
千原ジュニアさんは「フリードリンク」を褒めていました。
ドリンクバーとすることもできた音数だけど、フリードリンクとしたことで時間の長さをも表現できていると。
これは鋭い鑑賞で、さすがジュニアさんだなぁと思いました。
先生も「フリードリンク」が成功したと仰ります。
どういう場所かわかると。
夜学子は先ほど書いたような意味ですから、フリードリンクは上五、実際は7音でしたが、それと季語「夜学子」の中七だけで、映像が立ち上がってくる。
それが巧い。
そして下五「電子辞書」を含めて、それぞれの言葉が映像を立てて、登場人物も立てていると。
ただ先生は、横尾さんは近ごろ7・5・5で臨むことが多いから、基本は5・7・5なのでそちらもやって欲しいと注文が入っていました。
いや、先ほど少し書きましたけど、私はこの横尾さんの句の方が北山さんの句より上だと思っているのですよね。
破調ではあるものの17音に収まっていますし、内容に秋らしい情緒があります。
3位 立川志らくさん
3位は立川志らくさんでした。
句は、手紙を静かに破いているときに、今にも消えそうに光っている秋の蛍がふと見えたということを詠まれていました。
志らくさんお得意の「破調」の俳句でした。
充電切れから秋の蛍を思い出したそうです。
また手紙はラブレターのことだそうですけど、あえてラブレターとは言わずに季語「秋の蛍」から連想してもらおうとしていると。
季語は「秋蛍」。
秋の季語でしょう。
時期が過ぎている、あるいは過ぎようとしているセミの弱々しさや侘しさ、弱ってもなお懸命に子孫を残そうとするセミの強さや健気さも垣間見える、よい季語と感じます。
先生は「文を破く」と「秋蛍」の取り合わせがよい、詩があると評価なさっています。
引っかかるところは「ふと」。
2音が足りない時に「ふと」、3音足りない時に「少し」を入れることは「俳句あるある」のようです。
添削といいますか、原句のうち「ふと秋蛍」の部分をひっくり返す考え方を、先生は提示していらっしゃいました。
「秋蛍ふつと」か「秋蛍ほのと」とするアイデアです。
「ほの・と」の「ほの」とは「ほのかに」とか「ほんのり」とか、そういう意味になるのでしょうか。
番組では詳しい説明がなかったと思いますけど、おそらくそういうことでしょう。
私は近ごろ、志らくさんは覚醒したように思っていました。
よい句を連発されていたので、個人的に期待していていたのですが。
今回の句に関しては、少々物語を作っている感じが出てしまい、最近見られた素直な感情の発露みたいなものがなかったように受け取れました。
作為的といいますか。
タイトル戦だからついつい色気を出してしまったのかもしれません。
8位 中田喜子さん
下位に目を移しますと、8位の中田喜子さんの句が気になりました。
句は、雷でスマホのバッテリーが壊れてしまって長い夜になってしまったことを詠んでいらっしゃいました。
季語は「秋雷(しゅうらい)」。
意味はそのまま秋になってから鳴る雷のことでしょう。
先生は、中七を「絶縁破壊」という言葉を用いたことが大したチャレンジだったとまず褒めていました。
一方で句が「三段切れ」になっていることを指摘。
その原因は正にその中七。
解消した方がよいと、結果的に中八になってしまっていましたが、「絶縁破壊の」と助詞を加えていました。
さらに原句下五「長き闇」の順番を入れ替えて中七とつなげるようにしていらしたでしょうか。
私はこの句は最下位でもよかったと思っています。
「雷が落ちた→バッテリーが壊れてスマホが使えなくなった→いつもより夜が長くなってしまった」
身に起こった出来事の、原因と結果を順番に書いただけになっていたからです。
先生がご指摘されたように「三段切れ」にもなっていました。
よって私の中でこの句は俳句になっていないのですから、あくまで私の判定ではありますが順位は8位よりずっと下です。
また、俳句とは別のところで、今回の放送内で中田さんが見せた言動は、見ていて気持ちのよいものではありませんでした。
他の出演者によい結果が出なかったときの彼女のリアクションが、極めて品の悪いものに映ったのです。
俳句そのものよりそちらの方が気になりました。
その他
その他です。
10位に終わった森口瑤子のところで、気になることがありました。
それは、夏井先生が森口さんの句が下位に沈んだことは類想の句が多くある内容だったからだと仰ったところでの発言です。
よく詠まれている素材の句を上位にすると、テレビを観ている皆さんの中で「私もあんな句を作った」などとギャーギャーギャーギャー言い出すのでね、順位を上げるのは難しい
こう仰りました。
これは相当におかしな発言と思います。
視聴者から何か言われるのが嫌だから、句の技術レベルがいくら高くても完成度がいくら高くても、好きな句であっても、類想の多そうな句を上位にできない。
先生はそう仰っているように私には受け取れます。
それでは「今回の順位付けは自分の思うようにはできていません」「それは一部のうるさい視聴者のせいです」と言っているようなものですよね。
ギャーギャー言われるのが嫌だから順位を上げない。
それこそ、先生の言うところの「ギャーギャー言う一部の視聴者」の思うつぼ、言いなりになっているではありませんか。
それでは森口さんに失礼ですし、他の出演者にも失礼ですし、視聴者にも失礼ですし、何より俳句に失礼です。
『プレバト!!』の俳句カテゴリの順位付けは、夏井先生が全責任をもってなさるべきです。
誰に何を言われようが関係ない、良いと思ったから上位につける、悪いと思ったから下位につける、それでよいです。
『プレバト!!』の人気が出ているのは、また昨今俳句が人気になっているのは、夏井いつきの力によるものも大きいと、多くの人が思っていることでしょう。
浜田さんや梅沢さんたちの力もあってのものであることなど言うまでもありません。
番組に人気が出てくれば、当然色々なことを言い出す人も増えてきます。
中には自分にとって都合のよくない言葉、怒りを覚える言葉も少なからずあることでしょう。
でもそれは事前に容易に想像ができたはずですよね、有名になるということはそういうことですから。
今までも色々と言われてきたのでしょう。
それもある程度は想像できることです。
俳句のことを何もわかっていないと思える人から、あれこれ言われることに辟易していらっしゃるのでしょう。
しかしそれでも、今回発せられたような言葉を公共の電波に乗せるべきではないと私は思います。
有名になったことで多分に恩恵を受けてきたことでしょう。
恩恵は受けます、被る損害はその大小に関わらず受け入れません。
それではあまりに自己中心すぎませんかと。
おわりに
ということで、MBS『プレバト!!』の俳句タイトル戦、2021年「金秋戦」決勝戦を視聴しての感想を書いた記事でした。