『MBS(毎日放送)』で放送されている『プレバト!!』では、2021年8月19日の放送に俳句コーナーがありました。
お題は「蜩(ひぐらし)」。
視聴した感想を書いています。
目次
MBS『プレバト!!』
テレビ番組『プレバト!!』についてです。
人気芸能人にはそもそも才能があるのか?あらゆるジャンルで抜き打ちテストを実施、その結果をランキング形式で発表する。
公式webサイトのディスクリプションには上記引用部のように書かれています。
あらゆるジャンルとは、今回紹介する俳句だったり、水彩画だったり、消しゴムはんこだったり、絵手紙、生花、スプレーアート、色鉛筆などです。
中でも俳句がメインコンテンツと思われます。
放送時間
放送時間について。
放送は毎週木曜日の19時から20時までです。
出演者
出演者です。
メインの司会は「浜田雅功」さんです。
ダウンタウンの浜ちゃんですね。
アシスタントが毎日放送の「玉巻映美」アナウンサー。
ナレーションが「銀河万丈」さん。
俳句の査定員は「夏井いつき」さん。
俳句カテゴリの出演者は「梅沢富美男」さんを始め、「東国原英夫」さんや「立川志らく」さん、「中田喜子」さん、「千原ジュニア」さん、「藤本敏史」さん、「村上健志」さん、「横尾渉」さん、「千賀健永」さんなどがいます。
俳句
『プレバト!!』の俳句カテゴリが2021年8月19日の放送でも扱われました。
今回のお題は「蜩」です。
読みは「ひぐらし」ですね。
セミのヒグラシ。
「夏が終わり秋の訪れを告げるひぐらし」とナレーションがありました。
私の住む地域では、「ヒグラシ」はセミが鳴き始めた7月末には既に鳴いていて、夏の終りまで長く鳴いている印象です。
夏の終わりと秋の始まりを告げるセミは「ツクツクボウシ」ですよね。
ツクツクボウシは、私の住む地域では8月の中旬から鳴き始め、下旬に盛りを迎える印象です。
俳句の世界では「蝉」は夏の季語。
「蜩」は秋の季語だそう。
「涼しさ」の象徴とも。
この回では俳優の「勝村政信」さん、フリーアナウンサーの「高橋真麻」さん、お笑いコンビ「ジョイマン」の「高木晋哉」さん、タレントの「峯岸みなみ」さんが出演していました。
レギュラー陣では「梅沢富美男」さんと、「立川志らく」さん、「千原ジュニア」さんが出演していました。
順位戦
まずは今回行われた俳句カテゴリの、順位戦の結果です。
4位が高橋さん(才能ナシ、37点)、3位が峯岸さん(凡人、50点)、2位が高木さん(凡人、65点)、1位が勝村さん(才能あり、72点)でした。
2位ジョイマン・高木さん
順位戦で個人的に気になった方は2位に入った高木さんです。
今回初出場ですか。
凡人査定でしたが、65点と悪くない点数でした。
句は、子どもの頃に夏休みが終わる寂しさを、買ってもらったアイスの外れ棒を振り回して紛らわす、そんな様子が詠まれていました。
夏休みにおばあちゃんの家に遊びに行って、夏休みが終わるとおばあちゃんと別れてしまう寂しさを詠んだと仰っていましたか。
季語は「ひぐらし」、平仮名でした。
音が5・7・7と17音に収まっていません。
そこがどう判断されるかというところです。
ジュニアさんは褒めていました。
めちゃくちゃ良いと。
「ジョイマン高木として詠まなければいけない」と高木さんが感じたからか、下五で「ひぐらし楽し」と韻を踏んでいる。
今後そういう思いを脇に置いて、ラップを外して詠んだらすごい俳人になるかも、と仰っていました。
夏井先生は、目のつけどころが非常によいと褒めています。
上五「はずれ棒」から始まる判断がよかった。
下五「ひぐらし楽し」と文字数が溢れてしまったのか、そこだけが不満だった。
「ひぐらし楽し」で韻を踏んでいると、スタジオの話を聞いて合点した様子です。
中七のうち「タクト振る」の「振る」を言わなくても、俳句はわかるように詠むことができる。
「ひぐらし楽し」の「楽し」の箇所も、季語「ひぐらし」に楽しさに混じる切なさを、季語が言ってくれる。
添削では「振る」と「楽し」を削除。
「タクト振る」を「タクトに」とすれば、棒をタクト代わりに振っていることがわかる。
「楽し」も削って代わりに「蜩の空を」とすれば、空の下を歩いているとわかる。
上記のような添削をしていらっしゃいました。
添削したことによって、中七下五に句またがりが生まれていますけど、17音に収まっています。
「あなたはすぐ上手くなる」と先生は高木さんに言っていました。
先生は高木さんに俳句の能力を見出したみたいですね。
ジュニアさんと先生の言葉に私も大いに共感しました。
高木さんのはずれ棒をタクトにする発想がよいですし、言葉選びの効率もよく、はずれ棒から始めるセンスもよいと思います。
その上で蜩の物悲しさが引き立っていました。
俳句ならではの表現なりを覚えれば特待生にはすぐに上がれるのではと感じます。
別の俳句も見てみたいです。
1位勝村さん
順位戦で1位を獲得したのは勝村さんでした。
点数は72点。
句は、羽化しているセミの幼虫を見つけ、その白く輝くセミの姿がまるで秋の朝をつれてきたように感じられた、そんな様子を詠まれていました。
子どもの頃におばあちゃんの家に泊まって、トイレが母屋から離れたところにあったため、早朝トイレに行こうと庭に出ると、洗濯物干しに蝉の幼虫いて羽化しそうだったということのようです。
季語は「秋の朝」を選択していました。
閃閃とは「ひらひら」と「キラキラ」の意味がある言葉だそう。
先生からの添削はなし。
中七下五は「閃閃秋の朝つれて」です。
「閃閃」としたことで、その後の「秋の朝つれて」に対する作者の感じ方がちゃんと描かれている。
季語「秋の朝」が主役として前に出てきている。
この辺りのバランスは、作者が表現したかったとおりに言葉を選べている。
語順も正しい。
勝村さんは一度破門になったそうです。
私はその頃に番組を観ていなかったので事情がわかりません。
今回の順位戦1位をもってしても破門は解かれないそうで、何が先生をあれほどまで頑なにさせているのか不思議です。
勝村さんの今回の俳句は、タイトル戦に出ても上位争いができるくらい、私にとって素晴らしいと思える作品でした。
先週放送された特待生1級の方が詠まれた句より断然優れているように思います。
下手をすると名人ランクの方でも、今回の勝村さんより上手く詠めない方はいらっしゃるのではないかと。
よほど破門になったときの句が「ふざけ」すぎたのでしょうか。
まぁこれも番組の脚本や演出でしょう。
昇格試験
今回は志らくさんとジュニアさんの昇格試験がありました。
志らくさんは試験を迎えて「名人3段」でした。
1ランク昇格なさったら名人4段になるようです。
ジュニアさんは試験を迎えて「名人7段」でした。
1ランク昇格なさったら名人8段になるようです。
志らくさん
番組では志らくさんから試験が行われました。
句は、空蝉を拾うことしかすることがなくなったご老人の思い、それを詠まれていました。
このたび志らくさんは8・6・3音の自由律で挑まれました。
季語は「空蝉」。
結果は「1ランク昇格」。
名人4段になったようです。
志らくさんはここ1年ほど昇格がなかったそうですから、久しぶりの昇格です。
おめでとうございます。
昇格の理由は「助詞で人物像を描けている!」でした。
助詞とは「今日も」の「も」、「拾うだけ」の「だけ」、「朝か」の「か」です。
「も」と「だけ」としたことで、セミの抜け殻を拾うの行為を毎日繰り返していると描けている。
「か」によって、ため息のような効果を生んでいる。
この助詞のニュアンスをつけ方が、登場人物がどのような人かについて、自分の思いどおりに焦点を合わせることができている。
他のものを拾っていいのに、あえて「セミの抜け殻」を選んでいる。
セミの抜け殻を選んだことで、抜け殻のような心持ちの人を表している。
好きな句だと。
私は七五調の俳句が好きな傾向にあります。
といっても破調なり自由律の句が何がなんでもダメということではなく、上手くいっているのであればそれでよいと思います。
今回は上手くいった句だと感じられました。
志らくさんが詠む句というと、これまでは破調で固有名詞をぶつけることが多かったです。
今回は、俳句を使って自分の知識を見せつけようとか、テクニックに走りすぎるとか、そういうことをせず、素直に頭に浮かんだ言葉を俳句にしていると感じられます。
なので私も好きな句です。
志らくさんがこれまで詠まれた句の中で一番かもしれません。
私の知る範囲では。
ジュニアさん
次はジュニアさんの昇段試験です。
句は、蜩の鳴き声と、早朝に部活をしている野球部の金属バットの打球音が協奏曲を奏でている、と詠まれていました。
季語は「蜩」。
ご実家でしたか、家の近くに学校があって、朝、ヒグラシが鳴いている時間帯によく金属バットの「キーン」という打球音がこだましていたそうです。
結果は「現状維持」。
名人7段のまま。
ジュニアさんはここまで6回連続昇格を果たしていたそうです。
番組記録だったそうですけど、ここで一旦途絶えてしまいました。
現状維持となった理由は「陳腐!」。
ヒグラシと金属バットを取り合わせた感覚は悪くない。
ところが下五「協奏曲」という比喩表現の使い方が、非常に凡たるもの。
上五「蜩に」の「に」も散文的。
「蜩や」としっかり切って季語を立てる。
蜩を立てることで、続く「金属バット」を相対的に弱くできる。
中七を「金属バットの」と添削。
「の」を入れることで8音になるが、促音である小さい「つ」があるから、声に出して詠むとあまり気にならない。
下五を協奏曲から「音かすか」とし、耳元には蜩の鳴き声、遠くから金属バット音と、遠近感を出すことができる。
上記のような添削をしていらっしゃいました。
なるほど、確かに遠近感が出ました。
これはさすがの添削でした。
梅沢さんの俳句史に残る句集作り
永世名人である梅沢さんの句です。
句集に入れる50の俳句を、掲載決定かボツかを先生が判定します。
句は、温泉に浸かっているとヒグラシの鳴き声が聞こえてくる、様子を詠まれていました。
季語は「蜩」。
判定は「掲載決定」。
先生からの一言は何でしたっけ。
中七の見立ての問題。
中七は「(蜩の)声かけ流す」です。
ヒグラシの声をかけ流している見立てでありつつ、湯殿でお湯をかけ流すこととかけていることを、作者が意図として持っている。
その意図どおりの句になっている。
だからそこをダメとは言えない部分がある。
原句は下五が「湯殿かな」となっています。
この「かな」は切れ字、詠嘆をしています。
「かな」は「自分はそんな風に感じている、皆さんはどうですか?」と、相手に判断を委ねているというのが本来の意味だそう。
梅沢さんの今回の句はその「かな」本来の意味使えている。
私自身が好きか嫌いかと聞かれると、そんなに好きじゃないけど、作品としては成立している。
だから掲載すべきだという評価でした。
先生からは消極的な評価でした。
名人のお二人もいまいちな反応でした。
ジュニアさんは「かけ流す」が引っかかると仰り、志らくさんも(他の人の)句集を読んでも出てくる(ありふれた表現)と仰っていました。
私も、今回の梅沢さんの詠まれた句は手垢のついた表現かなと感じました。
破綻がないから掲載という先生のご判断もどうかと思っています。
句集は中でも優れた句のみ掲載するものとばかり思っていたので。
そもそも『プレバト!!』では、プレバトに限らずでしょうけど、俳句はありふれた表現を避けるべきだと散々言われていた記憶があります。
技術的に破綻してしないから句集掲載となると、今後句集のための俳句集めのハードルはずいぶんと下がった感があります。
番組制作側が、視聴者がそろそろ梅沢さんに飽き始めていると判断したのかもしれませんね。
御大にはさっさと卒業していただき、他の視聴率を取れそうな人にシフトしていこうかという。
先日の犬山紙子さんの優勝はその一環かも。
おわりに
ということで、MBS『プレバト!!』の俳句コーナーのお題「蜩」回を視聴しての感想を書いた記事でした。