「山下達郎」さんのアルバム『僕の中の少年』を購入しました。
CDジャケットの紹介や曲を聴いた感想を書いています。
目次
山下達郎さん
私は山下達郎さんのことはあまり知りません。
もちろん名前やお姿は知っていますし、「クリスマス・イブ」などの超メジャーな楽曲の存在も知っています。
私が音楽を意識的に聴くようになるのは1980年代に入ってから、もっと言うと80年代半ば以降と思います。
90年代からは洋楽を多く聴いていたこともあり、邦楽はあまり聴いていませんでした。
ということもあって、私が達郎さんを知っている時期はおそらくとても限定的です。
とは言え、当時は現在よりテレビの音楽番組が多くありましたし、街なかでも音楽がよく流れていた時代ですから、耳には入ってきました。
おそらくですが、一番古い記憶にある達郎さんの曲というと「 踊ろよ、フィッシュ」です。
なんて高い声なんだと思いましたね。
曲冒頭からいきなりサビで、あの声ですから。
「おぉ↑↑↑どぉ↑↑↑ろぉ↑↑↑」で。
他は「さよなら夏の日」と「アトムの子」と「DREAMING GIRL」も覚えています。
90年代に入ってからの達郎さんの作品で最も好きな曲は「ヘロン」でした。
曲も好きですけど、ミュージックビデオがとても印象的で、MV込みで好きです。
全身を青くペイントしたダンサーと思われる女性が、ビーチで曲に合わせて踊っているMVだったと記憶しています。
このくらいの記憶しかないです。
改めて調べると、私の達郎さんに関する記憶は80年代後半と90年代後半に限られているみたい。
Wikipediaで90年代前半にリリースされた曲タイトルを見ても、いまいちピンとこないですから。
80年代前半の楽曲は、後に知った感が強いです。
例外としては70年代と80年代前半の楽曲で知っている曲が2曲ありました。
あるテレビ番組でかかっていたからです。
詳しくは後述します。
『ザ・カセットテープ・ミュージック』
今回、山下達郎さんのCDを買おうと思ったきっかけがあります。
本ブログの「貧乏ミュージック」カテゴリでは毎度のことですが、今回も同じきっかけです。
きっかけは『tvk(テレビ神奈川)』で再放送されているBSトゥエルビの音楽番組『ザ・カセットテープ・ミュージック』です。
私は影響を受けやすい性格のため、『ザ・カセットテープ・ミュージック』で扱われた曲を聴きたくなることがしばしば。
tvkでは2019年6月2日に第17回「80年代山下達郎特集」が放送されました。
そこで初めてと言っていいレベルで聴いた「ある曲」に衝撃を受け、それまで私の中にはあった「山下達郎」のイメージがぐるんと覆されました。
ああいう曲を作っていた方が、私のイメージする達郎さん風に変わっていった過程を知りたい、と感じたことがCD購入のきっかけです。
ある曲については上にリンクを貼った記事に書いています。
ラジオ『山下達郎のサンデー・ソングブック』
後にラジオにハマって、そこでも達郎さんに出会っています。
達郎さんの番組『山下達郎のサンデー・ソングブック』です。
私にとっては相当にマニアックな番組でして、達郎さんのイメージがまた変わっていっていますし、CDを集めたい思いをより強くしています。
どんな曲を作っていたのだろう、どんな人なのだろうと。
山下達郎『僕の中の少年』
そうして購入したCDは『僕の中の少年』です。
ジャケットの表と裏。
達郎さんがロダンの「考える人」のように座っていて、目線の先に自転車が。
自転車は少年時代の象徴として置かれているのでしょう。
今作は紙ジャケット仕様ですね。
私は紙ジャケが苦手です。
角がグニャリとなって汚く見えるので。
パタパタと2回開くと画像のようになります。
ブックレットは真ん中のパーツの内部に入り込んでいました。
こういう仕様を「デジパック」というそうです。
今知りました。
そしてCD。
今回は『ブックオフ』で中古盤を購入しました。
価格は税抜き780円でした。
説明
簡単な説明です。
本作『僕の中の少年』は、山下達郎さんの9thアルバムのようです。
1988年10月19日リリース。
前作『POCKET MUSIC』は1986年4月23日リリースですから、およそ2年半の間が空いています。
2作品の間には『 ON THE STREET CORNER 1 ('86 VERSION)』と『 ON THE STREET CORNER 2』のリリースがありました。
アカペラのアルバムですか。
オリジナルリリースのレーベルは「MOON ⁄ ALFA MOON」とのこと。
1988年版
本品は1988年版と思われます。
「32XM-77」とCDの盤面に印字されています。
これはLPと同時に発売された88年版の品番とのこと。
1989年と91年、99年、2020年に再販やリマスターがされているみたいです。
曲リスト
曲リストです。
- 新・東京ラプソディー
- ゲット・バック・イン・ラブ -Get Back In Love-
- The Girl In White -ザ・ガール・イン・ホワイト-
- 寒い夏
- 踊ろよ、フィッシュ
- ルミネッセンス -Luminescence-
- マーマレイド・グッドバイ -Marmalade Goodbye-
- 蒼氓
- 僕の中の少年
曲のリストは上記のようになっています。
全9曲、トータル43分。
作詞・作曲は基本、達郎さん。
3曲目が「ALAN O'DAY」さん、4曲目が「竹内まりや」さんが作詞を担当されているようです。
聴いた感想
「山下達郎」さんの9thアルバム『僕の中の少年』を聴いた感想です。
これから書くことは、あくまでも私の個人的な感想です。
絶対的な評価ではないことをご了承ください。
見当違いなことを書いていたり、認識に誤りがあったりしたら申し訳ありません。
一言の感想は「とても良い」です。
好きな作品
今作は1stから聴いてきた中でも好きな作品です。
良い作品でも、一聴して良いと感じられるタイプと、何度か聴いていくうちに良くなるタイプとがあります。
今作は前者でした。
前作『POCKET MUSIC』は音の問題がありこそすれ作品そのものは良作でした。
しかし、アルバムトータルでまとまりがあるというより、似たテイストの曲が結果的に集まった感が私には感じられていました。
アルバム全体として統一されたテーマ感は弱い。
言い換えますと、アナログからデジタル収録への移行期のため音作りに問題があったから、ああいう曲調のものばかりを作らざるを得なかったのではないか感があったのです。
そういう意味で今作も過渡期にあるとは思うのですが、前作よりもアルバム全体の統一感がある作品になっているように感じます。
私のイメージに合う作品
今回『僕の中の少年』を聴いて、記憶が大きく揺り動かされました。
以前、『Melodies』の感想を書いたときに「私のイメージにある『山下達郎像』にある作品が出てきた」的なことを書いたと思います。
それはそれで嘘はないのですが、今作を聴いて改めて同じことを思ったのです。
今作の感覚は『Melodies』で感じたそれとは別の、それよりもっと深いところにあった記憶です。
初期のファンク=ディスコ感でも、『Melodies』や『FOR YOU』の「夏だ、海だ、タツローだ!」感でもない。
そういうところにも私の山下達郎像があったのですね。
今回蘇った山下達郎像は、80年代終盤から90年代前半までのイメージです。
時系列的には今作は『Melodies』より後発の作品ですから、『Melodies』で受けた私の感覚は、後年植え付けられたものの可能性がありそうです。
80年代終盤から90年代前半までとなると、私の中では夏と言えば「TUBE」や「サザン・オールスターズ」です。
達郎さんももちろん、夏をイメージするミュージシャンの上位にありました。
ありましたけど、当時の私の感覚でいうとTUBEやサザンの方が上位です。
といいますか当時は達郎さんの存在そのものが、今ほど絶対的なものではないのですよね、私にとって。
そもそも山下達郎とは何者かと、そこからして当時はよくわからなかったです。
メディア、特にテレビへの出演がなかった達郎さんは、人名や曲名、曲そのものは知っていてもビジュアルにリンクしない人でした。
音楽が大好きで、テレビを観まくったり、ラジオやレコード、CD、カセットを聴きまくったり、コンサートに行きまくったり、ファンクラブに入ったり。
私はそういうことを一切していない「ライト層」だったこともあって。
達郎さんは存在しているけど存在していない、謎の人物。
インターネットのない時代ですから、現在よりも自分から知ろうと動かない限り、知らない事・人は知らないままであることが多かったです。
そんな私が山下達郎なる人物を明確に意識していくことになったきっかけ。
はっきりした思い出はありません。
でもこの頃のテレビCMに流れていた達郎さんの曲は妙に印象に残っています。
はっきりと思い出せる曲は「アトムの子」と「さよなら夏の日」です。
2曲が収録されているアルバムは『ARTISAN』。
アトムの子は夏の頃、ビールのCMに使われていた記憶ですので、達郎さんといえば夏のイメージであることは間違いないですね。
また、多くの方がそうであるように『JR東海』のテレビCM「X'mas Express」も、達郎さんを意識する大きなきっかけになっているでしょう。
CMに使われていた曲は言わずもがな「クリスマス・イブ」ですね。
「X'mas Express」のCMは1989年から92年まで放送されていたそうです。
当時は大いに話題になりましたから、否が応でも私の意識は向いたことでしょう。
JR東海のTVCMが流れていた頃にリリースされた今作は、先ほど挙げたCMに使われた楽曲とも紐付けされて脳に焼き付いた可能性があります。
音圧はまだ弱い
今作の音圧はまだ弱いです。
音はまだ平坦と言いますか、音の閉塞感を感じます。
そして音の歪みを一切許さない、きっちりかっちりしすぎている感がある。
これらは前作『POCKET MUSIC』でも書きました。
前作発表から2年半ほどが経った88年頃にあっても、アナログからデジタル録音への移行期、試行錯誤の最中にあったのでしょう。
しかし『POCKET MUSIC』よりは平坦さはやや改善されている感覚もあります。
今作の何曲かはベストアルバムの一つ『TREASURES』に収録されています。
『TREASURES』は1995年11月13日リリース。
両方を聴き比べると違いは歴然でした。
『TREASURES』の方が音圧が強く、音が深く、細かい音を拾えています。
重厚さがある。
私の感覚が間違えている可能性は大いにあります。
間違えていたら申し訳ありません。
1「新・東京ラプソディー」
1曲目「新・東京ラプソディー」。
新の読みは「ネオ」だそう。
キャッチーで好きな曲です。
以前から知っている曲でした。
知っていると言っても聴いたことがあるくらいの感覚ですけど。
「東京シティハーフマラソン」のテーマソングだそうなので、中継などを観たときに聴いたのでしょう。
シンセサイザーがモータウン系のビートに感じられます。
高いスキルのベースとドラムと、シンセサイザー、さらにトラペットも入って、ジャズっぽさがあります。
それでもポップに仕上がっている理由はメロディと、全編に渡って奏でられるシンセサイザーの軽快さかなと感じます。
そういう意味でデジタルならではの楽曲かもしれないですね。
2「ゲット・バック・イン・ラブ -Get Back In Love-」
2曲め「ゲット・バック・イン・ラブ -Get Back In Love-」。
こちらも知ってはいましたが、しっかり聴いたのは今回が初めてかもしれません。
『ザ・カセットテープ・ミュージック』で扱われた曲でした。
音が綺麗なことが「マキタスポーツ」さんたちから語られていた記憶です。
クレジットにパソコンの銘柄まで入っていることから、それくらいこだわって音作りをしている、その自負について言及されていました。
私は音に関しては先述したとおりの感覚を持っているので、また違った感想になるのですが。
そこを差し引いても、完成度の極めて高い楽曲とは感じます。
元々、完成度の高い楽曲制作は山下達郎を山下達郎たらしめている主要因と思っていますが、その中でもこの曲は高い完成度に感じられます。
音文一致感が高いからでしょうか。
それと何でしょう、この「ゲット・バック・イン・ラブ」を聴くと「RIDE ON TIME」を思い出します。
この曲はピアノの音をメインにしたバラードですから、特に似ている曲ではないと思うのですが。
また、書きながらあれこれと調べたところ、TBSのドラマ『海岸物語 昔みたいに…』のワードがかかりました。
ドラマのテーマソングにこの曲が採用されていたそうです。
ドラマのタイトルは知っているような知らないような。
ところが海岸物語 昔みたいに… - Wikipediaを見たところ、キャストに覚えがありました。
奥田瑛二さんと麻生祐未さん、久保京子さん、渡辺裕之さん、賀来千香子さん、島田紳助さん。
断片的ですけど、彼らと海がリンクして脳に浮かび上がります。
どうやら観ていたドラマだったようです。
話の内容はまったく覚えていないため、面白く感じてはいなかったのでしょう。
5「踊ろよ、フィッシュ」
5曲目「踊ろよ、フィッシュ」。
私にはこの曲の思い出がとても強いです。
曲冒頭の「おぉ↑↑↑どぉ↑↑↑ろぉ↑↑↑」については上の方でも触れています。
今作で一番好きな曲でもあります。
思い出補正が思いっきり入っているでしょう。
しかし、ネット情報を見ていると、本曲はセールス的に芳しいものではなく、達郎さんご自身があまり乗り気で作った曲ではないと知りました。
私の中では「高気圧ガール」や「アトムの子」などと一緒に、達郎さんのイメージ形成を担うレベルで印象的な作品だったので、少々どころではなく意外な情報でした。
ちなみに「アトムの子」は歌詞の内容的に夏ではないかもしれませんが、私の中では思いっきり夏のイメージです。
良い曲ですけどね、「踊ろよ、フィッシュ」。
爽やかで軽快なポップソングで、踊ろよフィッシュの語感も良く、何より達郎さんの声にとても合っていると思えるので。
どう思うかは人それぞれということですか。
7「マーマレイド・グッドバイ -Marmalade Goodbye-」
7曲目「マーマレイド・グッドバイ -Marmalade Goodbye-」。
この曲も奥底にあった記憶とリンクしていた曲の一つ。
そして今作の中でも好きな曲の一つ。
「踊ろよ、フィッシュ」と同じようにハイトーンが際立つ曲です。
『ザ・カセットテープ・ミュージック』で取り上げられていたかと思います。
そこでハイトーンについて触れられていました。
曲も良いですけど、この曲に関しては詞が良いです。
好きな女性と別れ、旅立つ男性のことが描かれています。
恋愛について歌っていますけど、より大きく捉えて「自立」とも受け取れます。
達郎さんの詞は、曲の付属品と言っては言いすぎかもしれませんけど、心地よく歌うためにメロディを邪魔しないように添えられているものと私は捉えています。
なので文章の意味や音文一致であることは、無視はできなくても、そこまで重要ではないように思っていたのです。
ところが、先ほどの「ゲット・バック・イン・ラブ」もそうですけど、この曲に関しても詞と曲の一致感が強いです。
「走り出すのさ」のところのハイトーンで、一歩踏み出している感じ。
8「蒼氓」
8曲目「蒼氓」。
読みは「そうぼう」です。
蒼氓とは「人民」みたいな意味だったと思います。
政治家や著名人のように名前が汎く知られているのではない、一般人のことを指しているのでしょう。
つまり、そういう市井の人間の日々の営みこそが社会や国、世界を形作っているのだということを歌いたいのだと思います。
突き詰めては自分もそういう人間の一人である、またはそうで在りたいと言いたいのかもしれません。
ご自身は著名人に違いないですけど、姿勢はそう在り続けたいと。
私が最初にこの曲を聴いたのは『TREASURES』でした。
JACCSカードのTVCMにも採用されていたそうです。
実は最初に聴いたとき、あまりピンと来ない曲でした。
歌っていることが大きすぎて、実感が湧かなかったのでしょうか。
ところが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響が強く出、また影響が長引くに従って、曲の意味が身に沁みてきました。
とりわけ医療関係で働く方、スーパーマーケットやドラッグストアなどで働く方、彼らの日々の働きによって私たちの生活が成り立っていることを、ことさら強く感じられたからです。
達郎さんの『サンデー・ソングブック』で、この曲がかけられていたことがありました。
新型コロナウィルスの影響で世界はギスギスしているけど、こういときだからこそ助け合いの精神で乗り切りましょうというメッセージとともにかけられたのでしたっけ。
そのときにじんわりと沁みましたね。
そういうことかと頭ではなく身体で理解することができました。
おわりに
ということで、「山下達郎」さんの9thアルバム『僕の中の少年』を購入したので、聴いた感想を書いた記事でした。