漫画『タッチ』の文庫版の2巻と3巻を所有しています。
購入したのは記事作成時点から見ても15年以上前のことと思います。
どうして2巻と3巻しかないのか。
それは2巻と3巻が好きだからです。
目次
『タッチ』
『タッチ』についてです。
『タッチ』は、あだち充による日本の漫画作品。『週刊少年サンデー』(小学館)に1981年36号から1986年50号まで連載された。高校野球を題材に、双子の兄弟である上杉達也・和也と幼馴染の浅倉南の3人を軸にした恋愛を絡めて描いている。
タッチ (漫画) のWikipediaには上記引用部のように書かれています。
説明不要な名作ですね。
私の「あだち充」歴
私の『タッチ』との出会いは、姉が持っていた単行本です。
姉が「あだち充」先生の作品が好きで、色々な作品の単行本を持っていました。
借りて読んだあだち作品の1つが『タッチ』でした。
初めて読んだ当時はまだ『週刊少年サンデー』で連載中、でも終盤だったと思います。
だとすると『みゆき』は連載が終わっていましたっけ。
この2作品は記憶では同じような時期に連載されていたような。
当時読んだ作品は『タッチ』と『みゆき』、『陽あたり良好!』、『ナイン』、『ああ!青春の甲子園』、『夕陽よ昇れ!!』あたりでしょう。
後になって『ラフ』は読みましたが、『虹色とうがらし』と『H2』は途中まで読んで断念しています。
それ以降はまったく読んでいません。
好きな「あだち充」作品
私の一番好きなあだち作品。
それは『陽あたり良好!』です。
それか『みゆき』のどちらか。
2作品に比べると今回紹介している『タッチ』を含む他の作品は少し落ちます。
『タッチ』は売れたからでしょうけど、作品が長すぎる感じがして。
とはいえ『タッチ』も好きな作品であることは間違いないです。
絵柄
『陽あたり良好!』のどこが好きか。
私は『めぞん一刻』が一番と言って良いくらい好きな作品です。
その『めぞん一刻』と同じような、下宿屋が舞台なことが『陽あたり良好!』の共通点としてあります。
そういう狭い空間でワイワイやっている青春群像劇が、私は好きなのかもしれません。
それに当時の「絵柄」もあると思います。
『タッチ』や『みゆき』の初期のあだちさんの絵が好きです。
漫画界が劇画の時代にあった影響が少し残っている感じが。
『タッチ』の終盤になると線が減って、絵が丸くなっていきます。
それと同時に私の好みからは外れていきました。
文庫版『タッチ』2巻と3巻
今回紹介するのは『タッチ』の2巻と3巻です。
2021年現在から見て15年以上前に古本で購入したものです。
その時点で結構な使用感がありました。
裏には値札シールの跡が見られます。
どうして2巻と3巻?
『タッチ』は文庫の2巻と3巻しか持っていません。
どうして2巻と3巻なのか。
それは2巻と3巻が好きだからです。
特に3巻が。
2巻は終盤に1巻から続いた3人の関係が少し変化したように感じられます。
なので2巻も買いました。
1巻も安いものを見つけたら購入しようと思いつつ、いつしか探すのを止めて今に至ります。
4巻は買う予定がありません。
どうしてかと言うと「上杉和也」が交通事故で他界するからです。
甲子園予選の都大会決勝の当日でしたっけ。
確か、道路に飛び出した子どもを助けようと身を投げだして、という感じだった記憶。
あれは見たくないなと思って買わないですね。
4巻を買うときは最終巻まで買うと決めたときでしょう。
南の気持ち
先ほど2巻の終わりから3人の関係が変化したと書きました。
それはヒロイン「朝倉南」の気持ちが明らかになることで起こりました。
単行本で全話を読んだのははるか昔のことですし、文庫版の1巻を持っていないので細かいところまでは覚えていませんけど。
1話からしばらくは、南は和也ととりわけ仲が良く、家族や学校の人たちからも恋人同士かと思われるくらいな距離感にあったと思います。
和也の双子の兄・達也は、幼馴染の南と和也の3人、いつも一緒です。
達也は素直で真面目な和也と違って、ちゃらんぽらんと言いますか捉えどころのない性格で、なかなか周りに本心を見せません。
達也は和也のことが大好きですから、和也が周りに褒められ、認められることを心の底から喜び、和也の夢の実現を応援し、自分のエゴを捨てて「できない兄」を演じ続けています。
和也の夢とは南の甲子園に行きたいという夢を叶えることですね。
しかしあるとき達也は和也と同じく、南のことが好きだと気がつきます。
そうしたときに「できない兄」はどうするか、どうしたか。
こういうことが物語では描かれているかと思います。
これは和也が亡くなってからも同じでしょうか。
さらに、先ほど南の気持ちが明らかになったと書きました。
文庫版3巻で南は達也のことが好きなことがわかります。
「和也→南→←達也」、三角関係が明確になった瞬間です。
単行本だと5〜6巻くらいですかね。
南の押しの強さ
話が逸れました。
私がどうして『タッチ』の3巻が好きなのかを書いていたのでしたね。
理由は南が達也を好きなことがわかって嬉しいから。
言い換えると南の達也への押しが男心をくすぐったから、でしょうか。
今思うと、子どもの頃から達也に自分を投影させて読んでいたのかもしれないです。
「こういう風に女の子に想われたい!」と子どもながらに思ったのでしょう。
モテない子どもでしたから。
南の達也への押し。
それは例えば、ある雨の日、傘を忘れた達也のためにボクシング部の部活が終わるまで待ってあげたり。
和也たちには図書館に調べものがあると言って。
ボクシングの試合に負けた達也を慰めようと、達也の言うなりにキスをしたり。
自分が絶対に勝ってなどと身勝手なことを言ったから、それまで達也にとってはどうでも良かった試合が、勝たなくてはいけない試合に変わった。
和也の双子の兄ですから、運動能力やセンスはずば抜けたものがある達也。
しかし、初めての試合ということと絶対勝たなくてはと余計な力が入ったこと、性格的にボクシングが向いていないこともあるでしょうか、そういういくつかの要素が重なって、試合は惜しくも負けてしまいました。
勝とうと必死だったから慰めてやってくれと、原田から事前に電話をもらっていたのですね、南は。
自分がけしかけたからという罪滅ぼしの意味も、多少なりともあったことでしょう。
キスしたのは相手が「タッちゃん」だからと言ってみたり。
完全に告白ですよね。
「好きな相手との、生まれて初めてのキスなんだもの」などと言ってみたり。
こぶ平さんが聞いてしまっています。
「南だって…本気だよ」なんて言ったり。
この文庫版3巻で見せる南の達也への攻勢の数々が凄まじいのです。
達也がめちゃくちゃ羨ましかったですよ、当時は。
このシチュエーションに憧れました。
達也に憧れていた
憧れたのはシチュエーションだけでなく、達也が南に対してふと見せる優しさ、こういう面にも憧れました。
例えば画像の2コマ目ですね。
普段は南に嫌がらせをしたり南を怒らせたりばかりの達也ですけど。
南のことをよぉく見ています。
そしてそっと気づかえる。
押し付けがましさは一切ない。
周りからは漏れなくダメ兄貴のレッテルを貼られている達也。
自らも意図的にピエロを演じています、おそらくは。
しかし、南は達也の根っこの部分にきちんと気づいていて、そしてそこが好きなのでしょうね。
好きだから気づけたのか、気づいたから好きなのか。
どちらもあるのでしょう。
南は達也と和也のどちらを選んだか
2巻の途中、達也は高校に進学してからボクシングを始めます。
南をめぐる戦いに参戦し始めます。
もちろん南をめぐる相手は弟の和也です。
当初は完全に和也と同じ舞台に立とうと、つまり野球部に入ろうとしました。
しかし、いざ入部しようとしたときに南がマネージャーになることを知って、野球部には入部をしない選択をしました。
自ら引いたのです。
野球部に入らなかった理由は作中では語られませんでした。
思うに理由は2つあるでしょうか。
1つは南がマネージャーになったことで弟が喜んでいるところに、自分が入ることでその雰囲気を壊したくなかったこと。
1つは自分が野球をすることで、和也の夢を2つ、甲子園と南を奪うことになりかねないこと。
同じ舞台に上ると決めたものの、まだ葛藤があったのだろうと思われます。
原田の策略もあって、結果的に達也はボクシング部に入部します。
和也は、達也の南への気持ちに気がついているはずですし、南の達也への気持ちにも気づいていることでしょう。
他は全員、南と和也の相思相愛だと思い込んでいます。
いえ、この時点では3人の他では唯一、原田だけがそれぞれの気持ちには気がついていますか。
先輩マネージャーの「西尾佐知子」もそうかも。
しかし、和也はおそらく、兄のことを対等以上に評価していると思います。
ある面では達也に敵わないとすら思っているでしょう。
それでも、いえ、だからこそかもしれませんが、南を甲子園に連れて行くという幼い頃からの夢を叶えることに邁進するのですね。
甲子園に行けば南が自分に振り向いてくれる、そう思ってのことかはわかりません。
しかし、甲子園に南を連れて行ければ、兄貴に対して少し間リードを築けるとは思っていたかなと感じます。
強烈な一手になるに違いないですから。
「自分の夢をかなえてくれた男を 女はどうするんだろうな」
物語の解説役で達也たちの良き理解者「原田正平」がこう言っています。
本当にそのときが来たらどうしたのでしょうね、南は。
和也を選んだのでしょうか、それとも達也への好意を貫いたでしょうか、はたまた両方と距離を置くことにしたのでしょうか。
恋の決着がつくまえに和也は旅立ってしまいました。
このようにして書くと、なんだか漱石の『こゝろ』みたいですね。
雨の描写
文庫版3巻が好きな理由はこれまで書いたとおりです。
こうして漫画を改めて読み返すと、やはりこの頃の絵柄が一番好きだと再認識します。
線の一つ一つが繊細で柔らかいですし、描き込みのバランスも描き込みすぎず省略させすぎず、絶妙です。
少女漫画も描いていらしたからか、そのテイストが含まれていることに、バランスの良さの秘訣がありそう。
それと、私はあだちさんの雨の描写がとても好きなんです。
ちゃんと湿気がある気がして。
画像のコマからも、梅雨時のじとじとした気配が伝わってくるようで、自分が学校に通っていたときの思い出がじんわりと蘇ってきます。
良くも悪くも。
おわりに
ということで漫画『タッチ』の文庫版2巻と3巻を持っていて特に3巻が好きな理由をあれこれ書いた記事でした。
久しぶりに全巻通して読みたくなりました。