『MBS(毎日放送)』で放送されている『プレバト!!』では、2021年2月18日木曜日の放送に俳句コーナーがありました。
春のタイトル戦「春光戦」が始まり、予選A・Bブロックが行われました。
視聴した感想を書いています。
目次
MBS『プレバト!!』
テレビ番組『プレバト!!』についてです。
人気芸能人にはそもそも才能があるのか?あらゆるジャンルで抜き打ちテストを実施、その結果をランキング形式で発表する。
公式webサイトのディスクリプションには上記引用部のように書かれています。
あらゆるジャンルとは、今回紹介する俳句だったり、水彩画だったり、消しゴムはんこだったり、絵手紙、生花、スプレーアート、色鉛筆、などです。
中でも俳句がメインコンテンツと思われます。
放送時間
放送時間について。
放送は毎週木曜日の19時から20時までです。
出演者
出演者です。
メインの司会は「浜田雅功」さんです。
ダウンタウンの浜ちゃんですね。
アシスタントが毎日放送の「玉巻映美」アナウンサー。
ナレーションが「銀河万丈」さん。
俳句の査定員は「夏井いつき」さん。
俳句カテゴリの出演者は「梅沢富美男」さんを始め、「東国原英夫」さんや「立川志らく」さん、「中田喜子」さん、「千原ジュニア」さん、「藤本敏史」さん、「村上健志」さん、「横尾渉」さん、「千賀健永」さんなどがいます。
最近見始めた
実は私は『プレバト!!』を最近見始めています。
継続して観ているのは1年ほど前、2019年末くらいからでしょうか。
番組の存在は何年も前から知っていました。
しかし当時はどうも夏井先生の言葉の強さと荒さが受け付けないと感じてしまい、少し観ただけでそれから全く観ていませんでした。
その後、夏井先生が『NHK俳句』の選者に就任されてから、あああれはやはりエンターテインメントとして、役として演じている部分も大きいのかと思い至りました。
それからは夏井先生の印象が大きく変わって、ずいぶんと間が空きましたが、2019年末くらいからようやく継続して観るようになっています。
元から民放のバラエティ番組を好んでいないことも理由としては大きいでしょう。
2021年「春光戦」
2021年2月18日から俳句の2021年春のタイトル戦「春光戦」が本格的にスタートしました。
前回は予選ブロック分けの組み合わせ抽選が行われ、今回から予選が始まっています。
今回は予選A・Bブロックの結果が出ました。
予選A〜Dブロックの各ブロックの1位になった方は無条件に決勝進出決定、2位は敗者復活戦に回ります。
敗者復活では、今回は4ブロックから3人が決勝に上がれるのでしょうか。
3/4なら結構高い確率に想えますけど、出場しているご本人にとっては決まるまで気が気じゃないでしょう。
出場者と組み合わせ結果
2021年「春光戦」の出場者と予選ブロックの組見合わせ抽選の結果です。
それらに関しましては以前当ブログに書いています。
あわせてご覧になってください。
予選A・Bブロックの結果
2021年「春光戦」、予選A・Bブロックの順位です。
兼題「ウニの軍艦巻き」
兼題は「ウニの軍艦巻き」でした。
A・Bブロック共通です。
Aブロックの結果
予選Aブロックの結果です。
- 藤本敏史(名人10段☆1)
- 村上健志(名人10段☆3)
- 千賀 健永(名人2段)
- 北山宏光(特待生4級)
- 馬場典子(特待生4級)
敬称略で失礼します。
概ね段位通りの順位になりました。
藤本さんが勝ち抜け、村上さんが敗者復活に回ります。
千賀さん以下は敗退が決定です。
Bブロックの結果
予選Bブロックの結果です。
- 皆藤愛子(特待生2級)
- 中田喜子(名人5段)
- 筒井真理子(特待生4級)
- 武田鉄矢(特待生5級)
- 篠田麻里子(特待生3級)
こちらも概ね段位通りの順位になっていますか。
中田さんが2位で敗者復活戦に回ったことくらいで。
しかし皆藤さんは以前から良い句を詠まれますから、そこまでの波乱感は個人的には感じませんでした。
感想
『プレバト!!』2021年「春光戦」予選A・Bブロックの放送を視聴しての感想です。
Aブロックが強すぎた
予選Aブロックには名人が3人、タイトル戦の優勝経験者も3人入りました。
そのため見応えのある戦いになっていました。
しかし予選Aブロックの後に続けてBブロックの戦いを見てしまうと、いかにAブロックのレベルが高いか、逆にBブロックのレベルが相対的に低いか、その実力差が如実に現れていました。
まとめて放送せず、一回の放送で1ブロックごと紹介できればまだ良かったですね。
時間制約がある中ではある程度まとめて放送するしかないでしょうから仕方ないですけど。
個人的な順位付けで言えば、Aブロックで3位だった千賀さんがBブロックにいたなら、1位を争えていたことでしょう。
Bブロックで1位だった皆藤さんがAブロックにいたなら、最高でも3位にしかなれなかったかなと感じています。
私の中ではそのくらいの差がありました。
村上さんが1位
Aブロックの1位は放送では藤本さんでした。
しかし私の評価は異なります。
放送で2位だった村上さんが私の中では1位です。
Bブロックを含めても1位。
藤本さんが2位、Bブロックを含めても2位。
村上さんの句は、兼題の「雲丹(うに)の軍艦巻き」から海苔の漁場へと発想を飛ばし、等間隔に設置された漁場の「海苔ひび」が暮れてきていることを詠まれています。
村上さんは「海苔ひび」の「ひび」を漢字で書かれていて、確か「竹冠に洪」でした。
海苔ひびとは、海苔の漁場に設置されている、「箒(ほうき)」のような木や竹などの棒状の道具のことです。
海に差し込み、枝などに自然に胞子がかかり、胞子があるところまで育ったら収穫するというのが元々の使われ方だと思います。
現在はどういう使われ方をされているかはわかりません。
差し込まれた海苔ひびが海面から等間隔に伸びていて、それが暮れかかっているよと。
そういう句です。
絵的で、光景がすっと頭に浮かんでくる良句でした。
番組では「置きにきた」などと、周囲からからかい半分で突っ込まれていました。
しかし私は決して村上さんは置きになどいっていないと感じました。
置きにいっていないと感じられた理由は「距離」です。
これまでの村上さんは、ご自身のごくごく身近に起こっていることを句に詠まれる印象を持っていました。
例えば、病院の診療カードで虫をすくう句だったり、2枚目の手紙だけはベランダで読むことを詠んだ句だったり、バターにフォークで刺した4つ穴があることを詠んだ句だったり。
自分の手元で起こっていることを描く句が多いです。
それが今回は、先ほど書いたように、今までに比べると遠景を描かれていました。
番組内での村上さんは周囲の「置きにきた」会話の流れに乗っていました。
けれども観ていた私には、村上さんの中では今までにないトライをタイトル戦で試みたのではなかろうかと捉えています。
そしてその試みは成功していたように感じ取れました。
ああ、村上さんはそういうタイプの句も詠めるのかと、彼の懐の深さを覚えた回でした。
ただのロマンチストではないと、たいへん感動をしました。
2位は藤本さん
なのでAブロックの個人的な2位は藤本さんです。
放送での藤本さんの順位は1位でした。
句は、流星がいくつかが空から降って海に堕ちたものが雲丹になったことを詠んでいます。
村上さんのことをああだこうだと言えないくらい、ロマンチストですね。
1位になるだけあって良い句と思います。
しかし私は彼の句を1位にしませんでした。
理由は2つ。
上五が六音
理由の1つは上五を「流星群」としたことで六音になっていたこと。
元々、詠まれた句は「流星」と「雲丹」で「季重なり」です。
しかし、流星が雲丹になったと詠まれたことから流星<雲丹となり、季重なり感は薄まっています。
流星群を「流星や」などとすることで五音に収めることができます。
しかしそれだと流星が強調されてしまい、「季重なり」問題が再浮上してしまう。
だからこそ藤本さんは流星を「流星群」としたであろう。
そういった苦慮を句から窺えます。
字余りでも良いからと判断されたのでしょう。
俳句は音で詠みますから、流星群の「ぐん」を一音と受け取れなくもないです。
私たちが「流星群」と発音するとき、「ん」と明確に発音していないですよね。
「ん」が少し小さいはず。
なので五音と判断しても良いのでしょう。
もう少し言わせていただきます。
句の上五と中七は「流星群いくつか海に堕ちて」です。
それでは「流星群全体がいくつか堕ちた」のか「一群の流星のうちのいくつかの流星が堕ちた」のか、判断が分かれる可能性があります。
前者の、全体がと捉えるのはやや強引ですか。
しかし「流星や」や「流星の」などとすれば「流星がいくつか堕ちた」としか判断されないでしょう。
音を整える意味と季重なりを避ける意味で仕方ないとはいえ、受け手にブレを生じさせる言葉選びになっているかなと感じます。
音で詠む
理由のもう1つは、先ほど少し書いた「音で詠む」点です。
俳句は詩歌の流れにある定型詩ですから、ベースは「詠む」ことにあります。
つまりは口から声を発して愉しむ、耳で音を聴いて愉しむ認識が根底にある。
字面を愉しむことももちろんありますけど。
音に出して詠んでみると、藤本さんの句は音がぎこちないです。
言い換えますと耳障りがよくない。
ロマンのある内容ほどは音が綺麗に響かない。
翻って村上さんの句を声に出して詠むと音が淀みなく流れます。
夕暮れの、凪のような落ち着いた海苔の漁場の風景が伝わってくるよう。
音からも愉しむことができる句です。
言い換えると「音文一致」感が高いか高くないか。
それが村上さんを1位、藤本さんを2位と私が判断した一因です。
テクニックに走ること
今回に限らず『プレバト!!』を観ていて思うことは、テクニックに走る人が少なからずいらっしゃると感じられることです。
走るというか走りすぎているというか。
以前、番組内で村上さんが「破調」について語っていることを当ブログでも書いています。
今回の放送でもそれに通じるものを感じました。
それは言葉選びや季語選びでレアなものを見つけることに拘泥しいる方がいらっしゃったときに感じています。
誰とは申しません。
確かに現在使われなくなった言葉や季語は、探せばそれはたくさん見つかることでしょう。
先人が何百年と培われた言葉の蓄積は膨大です。
そういう難しい言葉や珍しい言葉を上手に選んで上手に用いれば、情感を増すなどの効果を得られるのでしょう。
夏井先生がしばしば仰る「経済効率」の良い言葉も、中にはあるでしょう。
しかし使われなくなった言葉は往々にして、2021年を生きる私たちにとっては実感が伴わない、伴いにくいものであることもまた事実ではないでしょうか。
実感がこもっていなければただの上っ面、表層だけの俳句、観念的な俳句に陥りがちです。
ここでの観念的とは「頭の中だけでできあがったもの」の意味で使っています。
もっと俳句の本質的な部分を追究していただきたいと、今回の放送を観ていて感じました。
それでは何を以って俳句とするか。
これは難しい問題です。
かつて高浜虚子は俳句とは「客観写生」である、「花鳥諷詠」であると言われたそうですが、虚子の意見を批判する向きもあったみたいです。
おそらく絶対的な答えは存在しないでしょう。
人それぞれに人生があるように、俳句像・俳句観もそれぞれあるように思えます。
だからこそ追究し甲斐があるのではないかとも思います。
村上さんによるアンチテーゼ
今回村上さんが詠まれた句は「アンチテーゼ」になっているように感じます。
何のアンチテーゼとなっているか、それは表面的な技巧に走りがちな『プレバト!!』俳句カテゴリ出演陣への、です。
七五調の韻律で詠む、音で詠む、事象と季語の本質を捉える。
余韻を残すこともそうでしょうか。
そういった俳句の基盤になっているものから逃げず、正面から向き合うことにもっと注力すべきだと村上さんが仰っているように、彼の詠んだ句から感じられたのです。
共演者だけでなく俳句をしている人へのメッセージになるのではないかと。
私は普段俳句を詠まないですけど、詠むときのために心に留めておこうと思います。
おわりに
ということで、MBS『プレバト!!』の2021年「春光戦」予選A・Bブロックの感想を書いた記事でした。
次回はC・Dブロックですか。
兼題は「きのこの山とたけのこの里」でしたっけ、単に「きのことたけのこ」でしたっけ、忘れました。
予告には大波乱が起こったとありましたから、もしかしたら東さんが落選されたのかもしれません。
大波乱となるとそのくらいしかないでしょう。