Eテレ『日曜美術館』の、2020年2月9日に放送がとても良かったです。
写真家の「ソール・ライター」を扱っていて、その写真に衝撃を受けました。
目次
- Eテレ『日曜美術館』
- 日美「写真家ソール・ライター いつもの毎日でみつけた宝物」
- 写真が素晴らしい
- イーストビレッジ
- 撮影スタイルが似ている?
- ライターの言葉
- 1/3構図
- ソール・ライター風の写真を撮らせる意味
- おわりに
Eテレ『日曜美術館』
テレビ番組『日曜美術館』についてです。
「日曜美術館」は1976年4月の放送開始以来、今年度で44年目に入ります。NHKの中でも長寿番組と言えると思いますが、その築き上げた伝統の中でも常に何か新しいものを視聴者の皆さんにお伝えしたい。そんな思いから昨年度、「にほん美の地図」というシリーズを立ち上げました。これは地域の歴史、文化、風土、自然が見えてくるようなアートスポットを都道府県単位で紹介する美術紀行です。地方の美術館や伝統工芸なども応援できるようなものにしたいと思っています。
『日曜美術館』の番組説明の一部です。
日美こと『日曜美術館』は毎週日曜日09:00から09:45まで、Eテレで放送されています。
再放送は毎週日曜日20:00からEテレで放送されています。
司会
番組の司会は作家の「小野正嗣(おの・まさつぐ)」さん。
小野さんとNHKアナウンサーの「柴田祐規子」さん。
小野・柴田コンビは2019年度で2年目ですか。
日美「写真家ソール・ライター いつもの毎日でみつけた宝物」
日美の2020年2月9日放送分は「写真家ソール・ライター いつもの毎日でみつけた宝物」というサブタイトルでした。
写真家であり画家でもある「ソール・ライター (Saul Leiter) 」を扱っています。
アメリカ人ですか。
ニューヨークの街角で、誰に見せるでもなく、“日常にひそむ美”を撮り続けた写真家ソール・ライター (1923 - 2013) 。今、若い世代を中心に共感を集める実像に迫る。
「私は無視されることに人生を費やした。それでいつも幸せだった」。元々ソール・ライターは、1950年代からファッション写真の最前線で活躍した写真家。しかし60年代、突如スタジオを閉鎖、表舞台から姿を消す。再び名が知られたのは、四半世紀が過ぎた80年代。人知れず撮りためてきた路上スナップが出版され世界中で人気となった。残された言葉、関係者の証言を手掛かりに、なぜその写真が時代を超えて心を打つのか探る。
今回の放送の録画データに書かれている番組説明は上記引用部のとおりです。
出演者は、俳優「須藤蓮」さん、写真評論家「飯沢耕太郎」さん、写真家「かくたみほ」さん。
知らなかった
実は私はソール・ライターのことを番組を観るまで知りませんでした。
写真を始めてもう10年近くになろうというのに。
写真家さんの名前を全然知らないのですよねぇ。
もっとアンテナを張らねば。
写真集もいくつか発売されているみたいで、今とても欲しいです。
写真が素晴らしい
番組ではソール・ライターが撮りためた写真がいくつも紹介されていました。
どれもたいへんに素晴らしかったです。
センスの塊のような写真たちでした。
私にはライターの写真が短歌や俳句のようだと感じられたのですね。
雨粒に濡れた窓に映る人、雪の積もる通りを真っ赤な傘を差して歩いている人、仕事帰り(でしょうか)にバスのシートに座っている人。
ライターはそれら全てをフレームに入れて写していませんでした。
人を写していても、顔までは全て写っていないことがとても多い、というか全て写っていなかったかもしれません。
それはまるで読み手に解釈を委ねる詩歌のように、ライターの写真たちは写真を見ている私たちに余白を想像させる写真を提示しています。
あるいは、彼が画家でもあることから、描画的・絵画的なアプローチを感じました。
写真が絵的です。
フィルムで撮影したものということもあって、デジタルで撮影した写真とはどこか色が異なって、絵の具でペイントしたかのようにも見える写真もありました。
先ほども書いた赤い傘を差している女性の写真などはその典型です。
傘の赤色の他は全て、女性が着ている洋服やコートは黒やグレー、町並みも、空も、雪も無彩色。
モノクロ写真で撮影して、後に傘のところだけ赤くペイントしたかのよう。
イーストビレッジ
ライターが撮影したスナップの数々は、アメリカのニューヨーク市マンハッタン区にある「イーストビレッジ」の、歩いて20分ほどの区画に限られていたそうです。
当時のイーストビレッジは家賃が安く、多くの芸術家が暮らしていたのだそう。
街の書店や、通りに設置されたベンチ、通りを行き交う人々、イーストビレッジは特別なものはない、ありふれたアメリカの街だったようです。
そんなありふれた街を、鋭い感性で切り取っていました。
撮影スタイルが似ている?
私もあまり遠くへは出かけない生活をしています。
なので、ライターの撮影スタイルに対して自分に近いものを感じられたことも、ライターの写真が好きな理由として一つありそうです。
写真の良し悪し、撮影スキルが高い低いの話ではなく。
そこは比べるまでもないので。
ライターの言葉
ソール・ライターの言葉も印象的なものが多かったです。
単純なものの美
中でも「単純なものの美」については強く共感を覚えました。
わたしは単純なものの美を信じている
もっともつまらないと
思われているものの中に 興味深いものが
ひそんでいると信じているのだ
中でも気に入った言葉が上記引用部です。
ライターのようにもっと鋭く在りたいですけど、なかなかそうはならないですね。
道は遠く険しい。
カラーとモノクロ
ビビッドなカラーを入れている写真が紹介されていました。
先ほど紹介した赤い傘のように、カラーが効果的かつ印象的に使われています。
ライターはカラーフィルムが世に出た頃から使っている、と番組では言われていたでしょうか。
誰もがモノクロのみが重要であると
信じていることが不思議でたまらない
美術の歴史は色彩の歴史だ
上記引用部もライターの言葉だそう。
モノクロは心象が入り込みやすいですし、高コントラストにすることで独特な迫力も出ますし、モノクロの良さは確かにあると感じています。
「モノクロのみが重要」となるとさすがに言い過ぎ感がありますけど。
いつの発言かわかりませんけど、カラーフィルムが出始めた頃の発言なのでしょうか。
当時の写真家界隈はそういう認識だったのでしょう。
1/3構図
ライターの写真は「1/3構図」が多く使われているそうです。
「1/3構図は画面を縦か横に3分割し、その一箇所に被写体をまとめて配置する方法」と番組では説明しています。
1/3構図は、私はあまり聞かない言葉でした。
似ている言葉に「3分割法」があり、そちらは写真関連の本やネット記事でよく目にする言葉です。
「画面を縦横を3分割ずつにして、縦線と横線の交点に被写体を持ってくる方法」が、私がよく目にする3分割法だったはず。
しかしライターの1/3構図それは「一箇所に被写体をまとめて配置する」点で特異かもしれません。
勉強になりました。
今後、私の撮影にも活かしたいです。
ソール・ライター風の写真を撮らせる意味
番組では、ソール・ライター好きの写真家の方が、ソール・ライターと同じような写真を撮ろうとしていました。
しかし何と言えば良いのか、差は歴然としていましたね。
その写真家さんの写真がものすごくつまらないものに感じられたのです。
それはそうです。
ライターの写真を観た流れでその方の写真を観ることになるのですから、どうしても両者を比べてしまいますから。
その写真家さんも、北欧の写真、ミュージシャンのジャケット写真などで評価を受けている方だそうですから、下手な訳はないのに。
使っているカメラも違うし、撮影した時代も違うし、人も建物も違う、もちろん撮影者も違う。
条件が諸々異なる中で、ソール・ライターが写真を撮っていたイーストビレッジでその方が写真を撮ったとしても、同じものを撮れる訳ではないです。
模写のようなことをさせる必要がどこにあったのか、あの企画の意図はどこに・何のためにあったのか、私にはよくわかりませんでした。
ただ手法を真似ただけ、抽出されるルールを用いるだけでは「ソール・ライター風の写真」になるだけだと、司会とゲスト陣が話していた、そのとおりになってしまっていました。
あれは制作の演出の問題であって、写真家さんが可哀相かなと。
おわりに
ということで、『日曜美術館』の「写真家ソール・ライター いつもの毎日でみつけた宝物」でライターの写真に衝撃を受けたよの記事でした。
本文中にも申し上げているとおり、『日曜美術館』の再放送は毎週日曜日20:00から放送されています。
2020年2月16日20:00からライターの再放送があると思います。
本放送を見逃した方や気になる方はぜひご覧になってください。