「大滝詠一」さんのアルバム『A LONG VACATION』を購入しました。
CDジャケットの紹介や曲を聴いた感想を書いています。
目次
『ザ・カセットテープ・ミュージック』
大滝詠一さんのCDを購入するきっかけは、tvk(テレビ神奈川)で再放送されているBSトゥエルビの音楽番組『ザ・カセットテープ・ミュージック』です。
当ブログでは何度も記事にしている番組ですが、番組の特にオープニングですね、そこで流れる曲が大滝さんの「君は天然色」です。
実はよく知らない
私は「君は天然色」はテレビCM等でもしばしば使われてきた曲と思われ、私でも聴いたことのある曲でした。
大滝詠一さんもお名前は知っていました。
ところが、どういうプロフィールをお持ちの方なのか、どういった曲を作ってきた方なのか、いまいちわかっていませんでした。
「細野晴臣」さんや「松本隆」さん、「鈴木茂」さんと「はっぴぃえんど」を組んでいた方ですよね。
つい最近まで「はっぴぃえんど」の認識すら怪しかったのですが……。
「はっぴぃえんど」は私が生まれる前に活動していたバンドですし、私が物心ついた頃にはとっくに解散していて、細野さんを除いたメンバーは表舞台にはあまり出てこなくなっていたと思います。
なので、私のようなライトな層にはわからなくて当然かもしれません。
ここで言うライト層とは、例えば「風立ちぬ」は松田聖子さんが歌っていた曲だと観たり聴たりしていても、作詞作曲者までは興味がいかなかった人たちのことですね。
ちなみに「風立ちぬ」は作詞が松本隆さん、作曲が大滝詠一さんです。
私は「君は天然色」も知っているし、「大滝詠一」さんのお名前も知っていました。
しかしこの両者がつながっていなかったのです。
それをつなげてくれた存在が『ザ・カセットテープ・ミュージック』だったということになります。
また、1981年当時にしっかり聴き込まなかったことも、私が大滝さんたちをしらないことに影響しているかなと思います。
私が当時子どもも子どもだったことと、大滝さんがテレビに出演することがなかったと思いますので、そのことが大きかったのでしょう。
ラジオを聴いていればまだ知る機会はあったかもしれないですね。
しかし当時の我が家ではラジオを聴く習慣がなく……あってもAMでした。
大滝詠一『A LONG VACATION』
今回紹介するCDは『A LONG VACATION』です。
略してロンバケ。
画像がCDジャケットの表。
「CD選書」シリーズで、通常のCDより簡素な作りをしています。
ジャケットのデザインは「永井博」さん。
イラストの1980年代感がすごい。
実際にデザインが描かれたのは1970年代の可能性もあるでしょうけど、ジャケットから受ける印象は80年代ですね。
中身、歌詞カードは1枚を何度か折りたたまれたタイプ。
本品は『ブックオフ』で購入しています。
価格は税込みで1,200円ほどだったと思います。
購入したのは2019年6月頃で、記事作成時点からしても3ヶ月ほど前のことになります。
説明
簡単な説明です。
インターネットで調べると、本作『A LONG VACATIONは大滝詠一名義では5作目のオリジナルアルバムでしょうか。
1981年3月21日リリース。
ジャンルはWikipediaによると「ポップス」とあります。
もう少し突っ込んで書くと「シティポップ」や「AOR (Adult-oriented Rock) 」になるのでしょうか。
基本的には作詞が松本隆さんで、作曲が大滝詠一さんです。
4曲目「Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語(ストーリー)」のみ作詞も大滝さん。
参加したミュージシャンを見ると、「はっぴぃえんど」の他のメンバー、「細野晴臣」さんと「鈴木茂」さんもベースやギターで参加しています。
「井上陽水」さんの作品にも多数参加している「安田裕美」さんや、ユーミンのパートナーである「松任谷正隆」さんの名前もありました。
曲リスト
『A LONG VACATION』の曲リストです。
- 君は天然色
- Velvet Motel
- カナリア諸島にて
- Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語(ストーリー)
- 我が心のピンボール
- 雨のウェンズデイ
- スピーチ・バルーン
- 恋するカレン
- FUN×4
- さらばシベリア鉄道
曲のリストは上記のようになっています。
全10曲、トータル41分。
「君は天然色」はシングル曲でもあるのですね。
シングルとしては7作目、リリースは本アルバムと同日だそう。
聴いた感想
大滝詠一さんのアルバム『A LONG VACATION』を聴いた感想です。
これから書くことは、あくまでも私の感想です。
絶対的な評価ではないことをご了承ください。
見当違いなことを書いていたり、認識に誤りがあったりしたら申し訳ありません。
感想は「とても良い」です。
2020年から振り返るとそこまでの新鮮さはないです。
しかし当時の方々が本作を聴いたときに、新しい時代の到来を感じただろうなと思います。
おしゃれですね。
山下達郎さん?
最初に本作を聴いたときに感じたことは、もっと言うとテレビCMなどで「君は天然色」を聴いたときにも感じたことは、「山下達郎」さんが歌っているの? ということですね。
お二人の曲の感じや声や歌い方がとても似ているように私には思います。
裏声にするときや裏声から地声に戻るときの声の出し方が特に似ている感覚です。
大滝さんは、山下さんが所属していたバンド「シュガー・ベイブ (SUGAR BABE) 」にも深く関わっていたようですから、似ているのはある意味当たり前かもしれません。
アルバム『SONGS』では大滝さんがプロデュースをしているのですね。
両者が影響を与えた&受けた可能性は少なからずあるでしょう。
影響を受けたであろう海外、特にアメリカのミュージシャンも、多重録音の技巧的な部分からも、無意識的に私自身に両者の共通点を見出しているのかなとも感じます。
「君は天然色」
1曲目「君は天然色」が本作で最も有名な曲でしょう。
大滝さん自らが歌う楽曲の中でも最も有名かもしれません。
レコードを購入した方は、海外と思われるプールとビーチが描かれたオシャレなジャケットを見て、それから曲を聴き始めるのですよね。
LPレコードに針を落とすと、あの印象的な「ジャンジャン! ジャジャッジャン! ジャジャッジャンッ!!」というイントロが流れてくる。
リリースは1981年3月なのに、一気に夏がやって来た感じがしたでしょうね。
鮮やかで爽やかな風が吹き込んできた感。
別の見方をするならば、70年代というとフォークの時代で、暗さを美徳とする風潮があったようにも思います。
「君は天然色」、ひいては『A LONG VACATION』がそれまでの暗い、モノクロのような世界に彩りを与えていくようで、あの華やかな1980年代の時代がヒシヒシと迫って来るようでもあります。
でもどこか切なさもあるのですよね。
名曲と言われるのもわかります。
演奏も素晴らしいですね。
大滝さんの歌だけに注意していると、一聴シンプルなメロディです。
ですが、それだけでなく演奏に耳を傾けると、途端に色々な音が鳴っていることに気付かされます。
様々な音が鳴っていてそれらが絡み合って、「ナイアガラ」さながら、音が怒涛のごとく迫ってきます。
かと言って音はそれぞれバラバラではなく不思議とまとまっている感じ。
1981年が転換点?
書きながら1981年のヒット曲には何があったか、気になってきました。
どういう曲があったかを調べました。
まずは前年、1980年のヒット曲も見てみましょう。
- 「ダンシング・オールナイト」(もんた&ブラザーズ)
- 「異邦人」(久保田早紀)
- 「大都会」(クリスタルキング)
- 「ランナウェイ」(シャネルズ)
- 「順子」(長渕剛)
- 「贈る言葉」(海援隊)
- 「おまえとふたり」(五木ひろし)
- 「別れても好きな人」(ロス・インディオス&シルヴィア)
- 「さよなら」(オフコース)
- 「哀愁でいと」(田原俊彦)
次は1981年。
- 「ルビーの指環」(寺尾聰)
- 「奥飛騨慕情」(竜鉄也)
- 「スニーカーぶる~す」(近藤真彦)
- 「ハイスクール・ララバイ」(イモ欽トリオ)
- 「長い夜」(松山千春)
- 「大阪しぐれ」(都はるみ)
- 「街角トワイライト」(シャネルズ)
- 「恋人よ」(五輪真弓)
- 「チェリーブラッサム」(松田聖子)
- 「守ってあげたい」(松任谷由実)
1982年も。
- 「待つわ」(あみん)
- 「セーラー服と機関銃」(薬師丸ひろ子)
- 「聖母たちのララバイ」(岩崎宏美)
- 「心の色」(中村雅俊)
- 「北酒場」(細川たかし)
- 「悪女」(中島みゆき)
- 「ハイティーン・ブギ」(近藤真彦)
- 「チャコの海岸物語」(サザンオールスターズ)
- 「情熱☆熱風☽せれなーで」(近藤真彦)
- 「ふられてBANZAI」(近藤真彦)
上記がそれぞれの年間レコードの売上トップ10みたいです。
当時は歌謡曲・演歌がまだまだ強い時代でした。
しかし「ダンシング・オールナイト」や「大都会」、「ルビーの指環」等々は歌謡曲といっても、もはや唱歌のようなそれではなくなっています。
81年になるとアイドルの隆盛が本格化している感もありますね。
マッチ、トシちゃん、そして聖子ちゃん。
聖子ちゃんの名前が1回しか出てきていないことが意外で、色々な曲が上位に入っているであろうと思い込んでいました。
調べて特に興味深く思ったことがあります。
それは、80年は「順子」や「贈る言葉」といったフォークを感じさせる曲がちらほら見受けるのに、81年になるとフォーク感がほぼなくなっている点です。
80年は70年代の残り香が漂うようで。
フォークの代わり……かはわかりませんけど、ポップやニューミュージック系が強くなっているでしょうか。
などと考えると、1981年に日本の音楽業界に大きな転換点があるのかもしれません。
その転換点にあるのが、81年3月にリリースされた本作『A LONG VACATION』であり、「君は天然色」である、という考えは1つありそうな気がします。
これまで聴いたことのないタイプの、オシャレな曲に聴こえたでしょうし、こんなオシャレな曲を作れるのかと衝撃を受けたでしょうし、多くの人にとって時代が変わった感じすら受けたかもしれませんね。
「はっぴぃえんど」はバンドとしては4年間ほどしか活動していないようです。
解散から8年ほど経った1981年頃にようやく時代が彼らに追いついた、という考え方もある気がします。
その他も名曲ぞろい
「君は天然色」の他の9曲もどれも名曲揃いです。
個人的には中でも2曲目「Velvet Motel」と「恋するカレン」が良いと思っています。
「Velvet Motel」は大滝さんのシンガーとしての実力、声の魅力を感じることができる曲です。
歌うことがとても難しい曲と思いますけど、大滝さんは見事に歌い上げています。
演奏もなかなか面白くて、ストリングスを含めて多くの演奏者がそれぞれが複雑なことをしているのに、違和感なくまとまっています。
不思議。
ジャケットのビーチサイドのホテルのプールっぽいイラストは、この「Velvet Motel」をイメージして描かれたのでしょうか?
「恋するカレン」もコーラスや演奏、その魅力を感じることができる曲です。
山下達郎さんの楽曲にもしばしば用いられる「多重録音」が採用されていると思いますけど、この曲の音の厚みがとりわけ凄いですね。
ぜひレコードで聴いてみたいです。
おわりに
ということで、ブックオフで大滝詠一さんの『A LONG VACATION』を購入して、聴いた感想を書いた記事でした。
モンスターですね、このアルバムは。
購入してからもうずいぶんと聴いてきました。
他のミュージシャンの作品も聴くのですが、他へ行ってもしばらく経つと本作に戻ってしまいます。