毎週月曜日22:25よりEテレにて放送されている教養番組『100分de名著』、2019年7月度は「小松左京スペシャル」です。
記事作成現在第2回の放送まで終わっていますが、面白すぎてたまりません。
目次
Eテレ『100分de名著』
Eテレ『100分de名著』とはどのような番組でしょう。
一度は読みたいと思いながらも、手に取ることをためらってしまったり、途中で挫折してしまった古今東西の“名著”。
この番組では難解な1冊の名著を、25分×4回、つまり100分で読み解いていきます。
公式Webサイトの「番組について」ページの一部を抜粋しました。
「偉大な先人の教えから、困難な時代を生き延びるためのヒントを探る」番組で、毎月ある名著を取り上げて、その作品や著者を出来る限り掘り下げていきます。
25分番組を月4回放送するため、25分*4回=100分で収めている番組です。
放送日である月曜日が5回存在する月は5週目にも4週目の内容が再放送されます。
再放送は元々、毎週水曜日の05:30からと12:00からの1日2回あります。
個人的に好きな番組で毎回欠かさず視聴しています。
小松左京スペシャル
先述したように、通常時はある作家の作品1つを100分に渡って掘り下げていく内容の番組です。
ところが2019年7月度は特殊な回で、同じ作家の異なる作品を4回に分けて紹介しています。
過去には、2018年3月度に「松本清張スペシャル」として、松本清張を1回1作品紹介していました。
松本清張さんは個人的に好きな作家さんのため、当時ブログに書いています。
あわせてご覧になってください。
2019年7月度も松本清張スペシャルと同様に、1ヶ月間で一人の作家さんの異なる4作品を1回ずつ放送しています。
今回取り上げている作家さんは記事タイトルにも書いているとおり「小松左京(こまつ・さきょう)」さんです。
小松 左京(こまつ さきょう、1931年(昭和6年)1月28日 - 2011年(平成23年)7月26日)は、日本の小説家。本名、小松 実(こまつ みのる)。
星新一・筒井康隆と共に「御三家」と呼ばれる、日本SF界を代表するSF作家。
小松左京のWikipediaにはこのように書かれています。
日本を代表するSF作家であると。
「小松左京スペシャル」の指南役の先生は「宮崎哲弥」さんです。
小松左京知らず
私は小松左京さんの作品を一度も読んだことがありません。
小松左京作品が原作の映画やドラマも観たことがありません。
SFを好んで読まない影響もあるのか、縁がありませんでした。
SFが嫌いという訳ではないです。
Wikipediaに登場している星新一さんは学生時代によく読んでいましたから。
なので2019年7月度の『100分de名著』が始まると知った際も、ただ「次回から小松左京か」と思った程度で特別な感情は起こりませんでした。
がしかし、第1回の放送を観て興味が湧き始め、第2回の放送を観て読みたくて仕方がなくなっています。
影響を受けやすい性質。
第2回『日本沈没』
2019年7月8日放送された『100分de名著』「小松左京スペシャル」の第2回で取り上げられた作品は「日本沈没」でした。
『日本沈没』(にっぽんちんぼつ[1])は、1973年(昭和48年)に刊行された小松左京による日本のSF小説
日本沈没のWikipediaには上記引用部のように書かれています。
出版と同年に映画化され、2006年にも映画化、翌1974年にはテレビドラマ化、1973年と1980年にはラジオドラマ化、1970年代と2000年代には漫画化もされているとのこと。
これだけメディアに登場しているにもかかわらず、私は一切触れてこなかったことに私自身が驚いています。
ナショナル・アイデンティティ
『日本沈没』の大きなテーマとして、日本人の「ナショナル・アイデンティティ」の問題があるようです。
私も本作が単なる大災害を扱う作品やパニック映画ではないことを知り、俄然興味をもつようになりました。
いざ日本の国土が沈むとなるときに、国のトップ連中で話し合いがもたれ、その中で4つの選択肢が提案されていました。
「新しい国を作るのか、外国に帰化するのか、難民として分散するのか、あるいはそのまま何もしない(大地と一緒に沈む?)のか」
最後の選択肢は、沈むまでの時間と沈む瞬間を思うと、とても恐ろしいものです。
しかし他の選択肢で生き残った後の困難を想像すれば、ある意味で最も幸福な選択かもしれませんね。
故郷である日本列島を失ったときに、私たち日本人は日本人として生きていけるのだろうか、土地が無くなったとしても日本人としてのナショナル・アイデンティティを復興の基盤にするべきではなかろうか。
そういうことを小松左京は私たちに訴えているように感じられます。
これは何も日本人に限った話ではない、普遍的な問題と思いますが。
本を持っている
先ほど書いたように、小松左京さんの著作を一度も読んだことがありません。
ところが氏の代表作の1つ『日本沈没』だけはなぜか持っています。
どうして持っているかというと、図書館で無料でいただいたからです。
いらなくなった本を捨てたり売ったりするのではなく、他の読みたい人に譲るシステムを採用している図書館でいただきました。
私も読み終えた本やキープしていたけど今後も読まなそうな本は、もうかれこれ20冊以上になると思いますが、図書館に提供させていただいています。
なので譲ったり譲られたりですね。
そこでいただいた本の1作品が「日本沈没」でした。
いただいてからまだ読んでいません。
画像がそれ。
『光文社』の「カッパ・ノベルス」から出版されていた書籍2冊です。
カッパ・ノベルスは光文社の新書シリーズでしたよね、確か。
印象的な表紙デザインですよねぇ。
特に色使いがすごく好みです。
デザインは「伊藤憲治」さんです。
キヤノンのロゴマークやカッパ・ノベルスのデザインなどを手がけられたグラフィックデザイナーだそう。
背表紙。
裏表紙。
当時430円だったのですね。
挿絵にも味わいがあって素晴らしい。
この時代の挿絵の妙に暗い雰囲気が、個人的には大好物です。
「第一部 完」で締めくくられています。
第二部は小松さんは書かなかったみたいですね。
小説の続編である『日本沈没 第二部』が、2006年の再映画化に合わせ、谷甲州との共著という形で2006年7月に出版された。
Wikipediaには上記引用部のように書かれていました。
ネットの評判を見るに映画は酷い出来だったようです……。
驚いたことは、昭和48年3月20日が初版にもかかわらず、昭和49年2月20日の時点で389版まで発行されているという事実です。
1年も満たずに390回ほども印刷されているということですから、当時どれだけ話題になったか、その一端をここからうかがい知ることができます。
上下巻で469万部の大ベストセラーだそう。
第1回「地には平和を」
話が前後して恐縮ですが、第1回の放送の「地には平和を」もなかなかに面白そうでした。
1945年8月15日に無条件降伏せずに太平洋戦争が続いていて、本土決戦に突き進んでいたら、という「ヒストリカル・イフ」と「パラレル・ワールド」を描いた作品です。
こちらもまた面白そうでした。
ヒストリカル・イフとは「歴史改変」もの、パラレル・ワールドは「並列(並行)世界」ものと言い換えることができると思います。
小松左京が最初に書いたSF作品と紹介されていたでしょうか。
指南役の宮崎哲弥さんは、小松左京は戦争を体験したけど戦闘は体験していない世代であること、これが「地には平和を」の原点にあるのではないか、というようなことを仰っていました。
そうですよね、子どもの頃に軍事教練を受けていた人たちは、戦時が続けば自分も大義のもとでアメリカと戦闘をして死ぬのだと信じて疑わない人も大勢いて、当時の彼らにとっては「地には平和を」の世界線こそがリアルな世界線ですから。
恐ろしいまでのリアリティがあるはずです。
また、本作は戦後の高度成長期に現代人が得た豊かさは、隠蔽や欺瞞の上に成り立っているのではないか、戦争とは何か本当の豊かさとは何かという疑問を突きつけているとも言われています。
非常に興味がある作品です。
体験がもたらす「何か」
小松左京たち以前の世代は戦争を体験している、もっと言うと敗戦を経験していることで、何か独特な陰鬱さが共通して作品に内在しているように思います。
小松左京の作品は読んでいなくても、『100分de名著』の番組を観ているだけでも伝わってくるものがあります。
それは『ウルトラマン』など昔の特撮ドラマを観ていても感じられます。
「日本沈没」の装丁デザインや挿絵もそうですね。
私にとってその雰囲気は恐ろしいものではあるのですが、それと同時に魅力的なものでもあります。
単純に古いからだけではない、私たちには持ち得ない「何か」を彼らは持っている気がしてなりません。
おわりに
ということでEテレ『100分de名著』の「小松左京スペシャル」についての記事でした。
いやぁ面白いですね、今回の小松左京スペシャルは。
面白いというのはfunnyではなくInterestな意味で。