ディスディスブログ

気分変調症の男がテレビ番組の感想やカメラ、ファッションのことなどを書きます

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奄美の人になった田中一村が奄美の森を撮っていたカメラは二眼レフ「オリンパス・フレックス」だそうです - Eテレ『日曜美術館』&テレビ東京『美の巨人たち』

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毎週日曜日09:00よりEテレで放送されている『日曜美術館』、2018年7月29日の放送は「奄美の森に抱かれて〜日本画家 田中一村〜」でした。

 

目次

 

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Eテレ『日曜美術館』

www4.nhk.or.jp

 

「日曜美術館」は1976年4月の放送開始以来、今年度43年目に入ります。その伝統ある番組に新しいキャスターを迎えます。

2015年の芥川賞作家で、現在立教大学の教授でもある小野正嗣さんです。フランスに留学した経験もあり、西洋絵画や写真が好きで、伝統的な日本の織物などの工芸にも興味があると言います。小野さんとともに日曜美術館は新たな歴史を刻みたいと思っています。

また今年の12月からはスーパーハイビジョンの本放送が始まります。4Kという新しい技術で各地の美術館を紹介したり、現代アートの作家も取り上げられないかと検討中です。

もちろん、これまでのように絵画、彫刻、工芸、写真、書……。多彩な作品をじっくり鑑賞しながら、その裏に隠された意外な事実や、芸術家の格闘、さらには驚きの技法から時代の息吹まで、美にまつわる珠玉の物語を伝えるスタイルも健在です。スタジオには、アートに思いをよせるゲストをお招きし、独自の視点で語っていただきます。

Eテレで放送されている『日曜美術館』の番組説明です。

言わずもがなの長寿番組。

 

九年前の祈り

2018年度からメインMCが、それまでの「井浦新(いうら・あらた)」さんから「小野正嗣(おの・まさつぐ)」さんに代わっています。

芥川賞作家で比較文学者、フランス文学者でもあるそうです。

現在は立教大学教授もしていらっしゃると。凄い。

 

私は個人的に井浦さんの司会が好きでした。

しかし2017年度は、理由はわからないものの、積極的に番組に参加していらっしゃらなかった印象を受けていて、MCが代わる前触れだろうなと覚悟をしていました。

小野さんはそれまで存じ上げなかった方で、初めて拝見したときは彼の揃えられた前髪のエキセントリックさに、オイオイ大丈夫かい? と不安になりました。

実際に番組での発言を聞いてみると、私のような人間にも聞きやすい言葉を使ってくれ、また鑑賞についても変に意識を高く持つのではなく素直な目で見ていらっしゃるように感じられ、私は好感を持っています。

 

www6.nhk.or.jp

 

司会のもうお一方は、NHK「高橋美鈴(たかはし・みすず)」アナウンサーです。

高橋アナは前年度からでしたか、継続ですね。

小野さんと高橋アナの掛け合いも、お互いがしっかりを会話を合わせようと気を配っていらっしゃいますし、息があっているように感じられます。

良いコンビです。

 

日美「奄美の森に抱かれて〜日本画家 田中一村〜」

2018年7月29日日曜日に放送された『日曜美術館』は、「奄美の森に抱かれて〜日本画家 田中一村〜」というサブタイトルでした。

 

田中一村作品集[増補改訂版]

日本画家の「田中一村」を扱っています。

「たなか・いっそん」と読みます。

 

明治41年に生まれた田中一村は、彫刻家だった父親の手ほどきを受けて画を学び、8歳のころから神童と呼ばれた。

優秀な成績で東京美術学校に入学するが、病気や教育方針の違いから辞め、自分独自の世界を切り開いていった。

特に旅で九州を訪れ、南国の自然に魅せられ、それが奄美大島に渡るきっかけとなった。

奄美では木々や生き物すべてに神が宿るという信仰があり、彼の画風は森に抱かれるような心象風景にまで昇華していった。

という今回の放送の番組説明でした。

 

私は田中一村の絵がとても好きです。

日本人画家では「熊谷守一(くまがい・もりかず)」も好き。

この2人が2トップですね、私の中では。

 

dysdis.blog.fc2.com

 

実は、2015年4月12日に同番組で放送された「アートの旅スペシャル みつけよう、美」の中でもこの田中一村のことが扱われていました。

上記の記事リンクは私が以前運営していたブログです。

読んでみると、俳優の当時「ミムラ」さん、現在は「美村里江(みむら・りえ)」さんですが、彼女が奄美の「田中一村記念美術館」を訪れていたようです。

私はこの放送のことをほとんど忘れていました……。

 

番組の紹介されていた一村の作品の中では、最初に紹介されていた「初夏の海に赤翡翠」(しょかのうみにあかしょうびん)」が特に好きでした。1962(昭和37)年頃の作品だそう。南国の植物が生い茂る中にアカショウビンの赤やオレンジが映えます。アカショウビンは森林に棲むカワセミの仲間だそうです。大きな葉っぱ、あれはソテツ(蘇鉄、蘇鐵)でしょうか、が黒く塗られていて縦長のキャンバスに大きく張り出し、手前には薄緑の葉やあり、目を下にやると岩に止まったアカショウビン。

極彩色のようにも感じられますが、色が純色ではなくトーンを落としている(ミムラさんはペールトーンと言っていましたか)ため、極彩色というほど色がけばけばしくなく、どこか柔らかさや優しさを感じつつ、でもソテツの配置に力強さ・豪快さも感じられました。ソテツのパカっと開いたところがスポットライトのように…的なことをミムラさんは仰っていましたが、確かにネガティブスペース的に捉えると余白がスポットライトで、アカショウビンを照らしているようにも見えました。なるほどです。

ミムラさんは「奄美の海に蘇鐵とアダン」(あまみのうみにそてつとあだん)が気になったそうです。確かにこちらもいいですね。1960(昭和35)年の作品。アダンはタコノキですか?

リンクを貼ったブログ記事で私はこのように書いています。

一つ一つの文章が今より長い。

 

今回、「パパイヤとゴムの木」のように墨の濃淡でだけで葉などを描いている、その陰影の描写が素晴らしく、また構図の大胆さもちょっと当時の他の日本画家ではなかなか見られないなという感想を持ちました。

変に色を加えている絵よりもインパクトが強いです。

葉が墨だけで、黒く描かれている点について、番組ではそれだけ奄美の太陽の光が強かったのだという解説があったかと思います。

これを聞いてああなるほど……と見ていて思いました。

奄美の鬱蒼と茂る森の中で、地面から森の木々を見上げると、葉の影が濃く、黒っぽく見えるかもしれません。

 

小野さんが番組で、初めは一村の絵が日本画には見えなかったと仰っていましたが、これは実は私も持った印象でした。

グラフィックデザインのようなテイストがあるような。

似ていないと思われるかもわかりませんけど、私は一村の絵が「アルフォンス・ミュシャ」に通ずるところがあるように感じているのです。

あるいは「ウィリアム・モリス」のような。

 

一村は独りで暮らしていて、亡くなったときも独りだったそうです。染色工場で働き、相当な薄給だったそうですが、生活を切り詰めその多くを画材に宛てていたそうです。家の外観や内装も映像で流れていましたけど、森の中にぽつんと佇んでいるんですね。怖かった。

以前のブログ記事ではこのように書かれています。

一人暮らしで亡くなったときも一人ではあったみたいですが、今回の放送では、一村が奄美で孤独な生活をしていた訳ではなかったことがわかっています。

国立療養所和光園、ハンセン病関連の施設だそうですが、そこの官舎に住まわせてもらっていて、療養所の庶務課長だった方とその家族と交流があったようですし、地元の魚屋さんで珍しい魚を見つけると、店の人に頼んでスケッチを描かせてもらってもいたようです。

魚はエラブチでしたっけ、極彩色の魚を一村は好んで描いていたようです。

そんな現地の方々との交流もあって信頼もされていた様子が窺え、生活は決して孤独ではなかったそうです。

 

内地から来た一村だからこそ

また、奄美の写真家さんが印象的なことを仰っています。

 

「内地から(外部から)来た人というのは、海の向こうで開けている海から集落を見る訳です」

「外から中を見るけど何も見えない」

「一番奥の方、この道で言えば一番奥の泉、水が出るところ」

「あそこに立って逆に海側を見る」

「そうすると見えないものが見える」

「本当はそこが大事」

 

ということでした。

 

皆、入り口の見やすいところだけを見て、集落や集落の人の思いがわかったような気になってしまう。

まっすぐ裏に入って行く、一切横は見ない、そこで色んなものを見て、そうすると集落の人々が何百年、何千年集落の歴史とか人々の風習とか風土がそういうのが何となくわかってくるような気がする……

……と。

 

これは奄美に限らず、どの土地でもそうでしょうね。

旅行で行って名所を巡っただけ、名物を見たり触れたり食べたりしただけで、その土地の全てがわかったように思う人もいるかもしれないけれど、それじゃわかった気になっているだけだよと。

そこで暮らしてみて、現地の人との深い交流を経てからでなければ、本当の意味でのその土地のことやそこで暮らす人々のことなんてわからないよと。

 

一村は50歳から69歳でなくなる19年ほどですか、長い年数を奄美で暮らしたことで、旅人ではなく島の人間になった、ということでしょうか。

しかし外から来た人だからこそ気づける奄美の美しさもまた一村は知っています。

現地の人にとっては当たり前に存在する、名前も知らない木や草花も、外から入ってきた一村にとっては珍しいもので、だから絵に残した部分もあったでしょう。

 

テレビ東京『美の巨人たち』

実は『日曜美術館』の少し前に、テレビ東京の美術鑑賞番組『美の巨人たち』でも、田中一村が扱われていました。

『美の巨人たち』では、一村が毎日のように日の出と共に森に向かって散歩をしていた、と伝えています。

森の中で一村は、二眼レフのカメラで植物や鳥など奄美の自然を撮影したり、スケッチを描いたりしいました。

使っていたカメラは、どうやら「オリンパス・フレックス (OLYMPUS FLEX) 」のようでした。

 

おわりに

2つの番組で近い時期に放送された理由は、どうやら「田中一村記念美術館」の開館20周年、そして一村の生誕110年を記念して「田中一村展」が開かれているから、みたいです。

いやぁやはり一村の絵は良いです。

奄美で一村の絵を見たい。

 

日美「奄美の森に抱かれて〜日本画家 田中一村〜」の再放送は、2018年8月5日20:00から予定されています。

気になった方は是非ご覧になってください。

 

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