月曜日-木曜日22:00からEテレで放送されている『ハートネットTV』、再放送は13:05から放送されていて、2017年8月23日13:05から「フィルターの先に —写真家・石川竜一—」の再放送があり、興味深く拝見しました。
Eテレ『ハートネットTV』
障害や病のある人、悩んでいる人、支える家族や共感する人。現代社会には、さまざまな「生きづらさ」と向き合っている人がいます。そんな「生きづらさ」を抱える全ての方々のために、ハートネットTVはスタートしました。“当事者の目線”を大切に、ほかのメディアやニュースとは違う視点で「生きづらさ」を掘り下げ、シリーズ化して放送しています。
公式Webサイトにはこのような番組説明がありました。ご覧になった方も多いと思います。
【放送開始】『ハートネットTV(再):フィルターの先に 写真家・石川竜一』。2年前、写真界の芥川賞と呼ばれる木村伊兵衛写真賞を受賞した石川竜一(32)さん。沖縄の風景と人が織りなす強烈な世界を写す彼の素顔に迫ります #NHK #写真家 #石川竜一
— NHKハートネット (@nhk_heart) 2017年8月23日
2017年8月23日は「フィルターの先に —写真家・石川竜一—」の再放送が放送されていました。私は本放送を観ておらず、この再放送も冒頭を観られていません。たまたまチャンネルを変えたところ放送していることを知り、慌ててDVDを起動し録画をしました。
写真家「石川竜一」
石川 竜一(いしかわ りゅういち、1984年[1] - )は日本の写真家。
(略)
2014年度、第40回木村伊兵衛賞を「絶景のポリフォニー」で受賞。
石川竜一さんのWikipediaにはこのように書かれています。
Twitterの文章にもあるように、「石川竜一(いしかわ・りゅういち)」さんは写真界の芥川賞と呼ばれる「木村伊兵衛写真賞」を受賞した写真家さんです。
ボクシングをしていたので体格が良いのですね。ハートネットTVを見ていてもしっかりとした身体をしているなぁと何度か思いました。
ネット検索をかけたところこのようなインタビュー記事がありました。この辺りでもどうして写真を始めたのか、氏のとって写真を撮ることとは何なのかについて語っています。ハートネットTVの内容と被る点がありますから、見忘れた方は記事を読むとある程度のことはお分かりいただけるかと思います。
実は、同じくEテレで放送されている美術教養番組『日曜美術館』の、2016年6月19日の放送「沖縄 見つめて愛して 写真家・平敷兼七(へしきけんしち)」で、石川さんが登場していました。平敷兼七の足跡をたどる形で。
そこで石川さんが使っているカメラが恰好良いなぁと思った記憶が強烈に残っていたので、今回、ハートネットTVをたまたま観たときに録画を録ることを瞬時に決めています。また観たかったのです、カメラを。
「フィルターの先に —写真家・石川竜一—」
ハートネットTV「フィルターの先に —写真家・石川竜一—」は、番組のディレクターさんが沖縄県宜野湾市にある石川さん宅に密着取材を敢行して写真家・石川竜一と素顔の石川竜一を撮っていました。
石川さんは奥様とお子さん2人の4人家族でアパート(?)暮らしをしていらっしゃいます。毎日のように街へ出ては、気になる人達のポートレートを撮影しているそうで、その様子も撮影していました。
他にも、石川さんが普段から仲良く接している、ゲイバーで働いている友人や、腕や胸に入れ墨がビッシリで手を繋ぎ歌を歌いながら国際通りを歩くご夫婦と触れ合う様子を取材していましたし、奥様が夫(石川さん)のことを語っている様子なども収められていました。
全体的に言えることは、石川さんは人間関係が濃密だということです。ゲイの方もそうですし、入れ墨のご夫婦もそうですが、懐に入るのがとても上手い、上手いというと技術的なことを想像させてしまいますけど、そういうことではなくて、石川さんの人懐っこさがそれを可能にしているのかもしれません。
それと 、石川さんは、相手がゲイだからとか職業が○○だからとか、入れ墨をしているからとか過去に犯罪を犯しているからとか、何かで線引きをせずに人付き合いをしている点も非常に大きいように感じました。
「(ポートレートを撮っていて)普通か普通じゃないかっていう基準はあんまりないっていうか(中略)枠みたいなものはどうでもいい」「撮らせてもらえたことで自分っていう存在が少しでも受け入れてもらえたっていうか……」とご本人も言っていました。
名前を出したくないのでこういう呼称になってしまいますが、ゲイの方も入れ墨のご夫婦も、もしかしたら周りからは敬遠されがちなタイプの人間かもしれません。そんな彼らが石川さんを全面的に受け入れていて(そのように私には見えました)、優しい表情で彼のことを語っている様子を見ると、石川さんの写真が持つパワーの秘訣が少し見えたような気がしました。
奥様が印象的なことを言っていまして、初めてご主人(石川さん)に会ったときに「目が不思議な人だなって思った」という言葉です。それが写真にも投影されているように感じられます。
前出の日曜美術館の平敷兼七さんの回で、平敷さんの写真の魅力も、そのレンズを通して向こう側にいる相手との距離感が近いことが原因だろうと感じましたが、石川さんの写真の魅力もそれに通ずるものがあるのかもしれません。
彼の目が人を虜にするから、その目で撮られた写真だから、レンズ越しにもかかわらず距離が近く感じられるし、写真からも力を感じるのではないかと。
石川竜一というフィルター
石川さんはかつて奥様に「俺っていうのは『石川竜一』っていうフィルターなんですよね」と語ったそうです。
彼の写真は人間・石川竜一の情報が写り込んでいる、ということでしょうか? 違っていたら申し訳ありません。
石川さんに限らず、私が撮った写真も皆さんが撮った写真も、「私」という主観が選んだ対象を、「私」という主観が選んだカメラとレンズで、「私」という主観が選んだ構図で、「私」という主観が選んだ日時に、「私」という主観が選んだカメラとレンズの設定で、撮影されたものです。示し合わせでもしない限りは同じものなど他にはありません。
「私」の心が動いたから足を止めて、カメラに手を伸ばし、構え、シャッターを切っていますから、写真には撮った人間の心が入り込んでいると私は思っています。なので、写真の魅力の根本はその人間の魅力がどれだけあるか、なのではないかなと思ったり思わなかったり。これはもはや写真に限った話ではないですね、文章でも映像でも通じる話です。
石川さんや平敷さんは、その根本部分が魅力的なのだろうなと観ていて強く感じました。人間を磨けよと。
おわりに
『絶景のポリフォニー』の最終ページが、奥様が出産をする日に病院へ向かうときの写真なのだそうです。嬉しかったのでしょうし、愛おしかったのでしょうね。奥様と生まれてくる子供が。写真集を見てみたいです。
今回は非常に興味深い放送でした。もう4-5回録画を見返しているくらいにハマっています。
私が沖縄に行ったことがないため、沖縄の日常が垣間見られる点も、私に強い興味を抱かせている要因となっているのでしょう。
惜しむらくは、観たのが再放送だということです。もう一度再放送をしてくれることは期待薄ですから、観られなかった冒頭部分は今後も観られないままの可能性が高いです……無念。
追記
記事を書いてからも何度も見返しています。実はこの追記を書こうと思ったのは、つい先程、本記事を書いたときとは真逆とも思える感想を持ったからです。
記事には「レンズを通して向こう側にいる相手との距離感が近い」ことが魅力としてあるのかもと書いていますけど、それが逆だと思っています。
よくよく見ると(よくよく見なくてもわかる人にはわかると思いますが)、写真によってはカメラ(石川さん)に対して緊張感を持っているものもあるのですね。上記ゲイの方や入れ墨のご夫婦は既に石川さんとの信頼関係が一定以上にまで出来上がっているのですが、そうでない初対面の方を撮影した写真からは緊張感が伝わるものも少なくないです。
何でこいつこんな写真ぶら下げてるんだ?何がしたいんだ?という不信感が伝わってくるようなものも見受けられます。被写体と石川さんの間にある緊迫した空気感が入り込んでいます。
そういう部分も包み隠さず表現しているところが魅力なのかなと、今は思い始めています。全く違うことを言っているようで申し訳ないですが……。