昨日2015年7月11日土曜日放送された『美の巨人たち』は、2週にわたって人気キャラクターを“芸術”の視点でひも解く“懐かしの人気キャラクターSP”でした。ニ週目はトーベ・ヤンソン『ムーミン』でした。
Tove Marika Jansson(トーベ・マリカ・ヤンソン)はフィンランドの画家、作家などです。番組では1945-70年に制作された『The Moomins(ムーミン)』を紹介していました。
前回のウルトラマンの時も少し書きましたけど、ムーミンのデザインは、初期のものは昭和ムーミンや平成ムーミンでのアニメで見たものとはかなり違っています。番組でも初期のムーミンの絵が登場していましたが、愛らしさはほぼ感じられず、どちらかと言うと醜い外見をしています。
ムーミンの第1作は『小さなトロールと大きな洪水』です。このときのムーミンも、カバみたいな大きくひょうたん型のような顔ではなく、鼻が長い生き物でした。しかし、それよりも更に少し前に、ムーミンの原型と言われているキャラクターを、Toveさんは描いていたみたいです。番組で紹介していました。挿絵画家として風刺雑誌『GARM』に描いていた「いつも怒っている 醜い生き物」がそれだそうで、やはりこちらも太く長い鼻をした生き物でした。
ムーミンシリーズも、初期はまだムーミンが鼻の長い変な生き物ですけど、時代が進むに連れて、ふっくらとした愛らしいデザインに変わっていきました。番組では、そのデザインの変化を、戦争体験が「いつも怒っている醜い生き物」を作り出し、世界が平和になるに連れて、いつも怒っている必要がなくなったからだとしていました。
私の初ムーミンは、アニメのいわゆる“昭和”版『ムーミン』でした。その後“平成”版『楽しいムーミン一家』を見て、それから原作を読みました。特に平成版が好きだったので、ふんわりやわらかな絵柄に慣れていた事もあり、原作のToveさんの挿絵を見たときに驚きました。結構オドロオドロしんですよね。恐ろしさすら感じます。アニメのような色彩豊かなムーミン谷ではなく、インクで描かれたモノクロの世界も、怖さを増長させていたのでしょう。私の中には、水木しげるさんの絵に通ずるものがあるようにも感じられます。
番組では、トロールのことを「お化けや妖怪、この世のものではない生き物のこと」と紹介していましたけど、普通に妖精と言ってしまっていいような気がします。北欧の妖精。ムーミンはムーミントロールですから、おそらくムーミンはトロールの種類を指す言葉でしょうけれども、ムーミンが名前になっていますね。昔、犬を飼っている方が、その犬種をそのまま犬の名前にしていた方が私の近所にいました。そういう感覚かも。
他に番組で気になった点は、スノークのお嬢さん(スノークのおじょうさん)について、日本限定で「ノンノン」と呼ばれていると紹介していた点です。確かにそれ自体は合っていて、ノンノンは昭和ムーミンのスノークのお嬢さんの名前でした。でも平成版もあったのですから平成版の名前である「フローレン」も一緒に紹介していてもよかったのではないかと見ていて思いました。
Toveさんは昭和版の「ノンノン」の名前を気に入ってはいなかったはずです。"non"や"no"といった否定の言葉を想像させるから、と『ダ・ヴィンチ』か何かで読んだ記憶があります。平成版の「フローレン」は、Toveさんも気に入っていたと言っていたはずです。フローレンは花を想像させ、スノークのお嬢さんに合っている、というようなことを仰っていたかと。
以前、本ブログでアニメのランキング記事を書いています。
ここで、ムーミンを取り上げていて、「ムーミンパパの思い出」の話が特に好きだと書いています。ムーミンパパが、フレドリクソンやスナフキンのお父さんのヨクサル、スニフのお父さんのロッドユールと一緒に、海のオーケストラ号で冒険するんです。この平成版の「ムーミンパパの思い出」の回は、嵐のシーンが見ものですよ。空の雲や海の波の画が素晴らしいんです。是非一度ご覧になってください。
飛行鬼(飛行おに)が出てくるエピソードも大好きです。飛行鬼は作中に何回か登場しますけど、どの話も良いです。ムーミン谷の皆は飛行鬼を恐れているのですが、実際は話の分かる紳士です。魔法が怖いのでしょう。探し始めて300年、月にまで探しに行くほど欲している「ルビーの王様」を、持ち主であるトフスランとビフスランから奪わなかったですから。鬼といっても本当は魔法使いですけどね。空飛ぶ黒豹に乗っています。トフスランとビフスランからルビーの王様を奪わなかった飛行鬼は、この2人のおかげでルビーの王様を手に入れられました。どうやって手に入れたのか……は、アニメを観るか原作を読んでみてください。