毎週日曜日06:35からEテレにて『NHK 俳句』が放送されています。
2019年度の月の第2週の選者である「長嶋有」さんの解釈や解説に毎度感心しています。
目次
『NHK俳句』
『NHK俳句』とはどのような番組でしょう。
『NHK俳句』は、4人の俳人が俳句を楽しみながら上達するコツを伝授する俳句講座です。俳句のエッセンスを味わいつつ、実作に役立つノウハウも習得できる情報をお届けします。
公式webサイトのディスクリプションには上記引用部のように書かれています。
視聴者が投句をし、その中から毎週異なる選者さんが8句選び、8句の中から特賞を選ぶ形式の番組です。
他にも上達へのコツを教えてくれるミニコーナーなどがあります。
第4週は初心者向けの『俳句さく咲く!』に番組が変更されます。
2019年度の選者
『NHK俳句』2019年度の選者です。
- 第1週:宇多喜代子
- 第2週:長嶋有
- 第3週:井上弘美
- 第4週:堀本裕樹
上記のとおりです。
2019年度の司会者
『NHK俳句』2019年度の司会者です。
- 第1週:小林聡美
- 第2週:岸本葉子
- 第3週:戸田菜穂
- 第4週:武井壮
2018年度からでしたか、司会者も毎週異なる方が担当していらっしゃいます。
長嶋有さんがいい
『NHK俳句』第2週の選者である「長嶋有」さんがとても良いと感じています。
長嶋さんは、2018年度以前から『NHK俳句』で定期的にゲスト出演されていたので、番組を通して知っていました。
しかしその他の活動は全く知りませんで、知ろうともしていませんで、何をしていらっしゃる方なのかわかっていませんでした。
調べたところ、漫画を描いたり、小説を描いたりをされている方のようです。
豊崎由美さんの言葉
2019年10月13日の放送は、ライター・書評家の「豊崎由美」さんがゲストでした。
今回豊崎さんは、私が長嶋さんの良いと感じている部分を、ズバリと言ってくれていました。
「読み手にね、私に気づきを与えてくれるんですよ」
「自分の凝り固まった考えとかに風穴を開けてくださるんですけど」
「俳句のね、句をどういう風に読んだのかって、隣りで聞いてても、さっきの砂時計なんかもそうだったし」
「カップラーメンを横に置くだけで変わるな、光景がって」
「すごい勉強になったし、楽しかったです」
このコメントです。
長嶋さんの句の解釈は、豊崎さんがおっしゃったように私とは異なる視点をもたらしてくれます。
また、その視点を素人の私にも伝わるように説明されている、と私には感じられるのですね。
得心できる
過去の方を含めた他の選者の中には、句が良いか悪いかを言えても、どう良いかを視聴者に説明できていない方が、何人か(何人も)いらっしゃるように私には感じられていました。
例えば、投句に取り合わせや句またがり、意図的な字余ありがあったとします。
それらが効いている・効いていないについて、どういう理由から効いているのか効いていないのか、を伝えられていない選者さんがいる、と私には感じられるのですよね。
それらは感覚的なものに依るところが大きいのでしょうし、感覚的なことを説明するのは野暮なことかもしれません。
けれども、『NHK俳句』は視聴者の中には、私のように俳句素人の方も少なからずいらっしゃるはずです。
そんな番組の選者を担当したからには、野暮なことであっても視聴者に向けて言葉で説明する必要が出てくるのではないかと思います。
「そういうものだから」ではいけないのでは? ということ。
私にとって、説明ができていない・わかりにくい選者さんがいるように受け取れることが、これまでには何度か(何度も)ありました。
その意味で、長嶋さんの解釈や解説や説明の内容は、得心できることが最も多い選者さんです。
「竈馬(かまどうま)」
番組をご覧になっていない方には、豊崎さんがおっしゃった「砂時計」や「カップラーメン」が、何のことを指しているのかがわからないと思います。
今回の兼題は「竈馬(かまどうま)」あるいは「いとど」です。
投句の一つに、竈馬が砂時計の砂が落ちる音を聞いている、ということを詠んだものがありました。
番組をご覧になった方に向けて書きますと、2番目の句です。
投句には竈馬は鳴かない・鳴けないというものが多かったそうです。
見た目がコオロギと似ているから、余計に竈馬が哀れだというものが。
ところがこの句は、鳴かない・鳴けないという竃馬の特性を逆に捉えている、と長嶋さんは言います。
どういうことか。
それは竈馬が鳴かない・鳴けないということは、「静かな気配を身にまとっている虫」であるということだそうです。
だからこそこの句は、砂時計の砂が落ちる、ごく小さなシーンを捉えられている、と長嶋さんは受け取っていました。
この視点を持てるかどうか。
夜中のカップラーメン
この句の解説の中で、長嶋さんは「夜中のカップラーメン」を挙げていました。
カップラーメンは句には登場しません。
句の作者が夜中にカップラーメンにお湯を入れ、出来上がるのを待っている。
そこに竈馬がいた、というシーンを長嶋さんは豊崎さんたちに提示していました。
先ほど書いたように、竈馬は音を発しません。
そして、いつの間にか人家に入り込み、そこに存在している虫です。
「(竈馬は)そういう何か生活の中にひたひたと居る、何かじっとしているっていうことが(この句は)上手く咏めている」
と長嶋さんはおっしゃっていました。
豊崎さんの言葉に戻しますと、長嶋さんがカップラーメンを取り上げた瞬間に、彼女は句の光景が変わったように感じられたということですね。
豊崎さんと同じように私も、頭の中で砂時計の隣りにカップラーメンを置いた瞬間に、この句がリアリティを持ち始めたと感じられ、身体がゾワッとしました。
重さを感じたというか、空気を感じたというか、私の中で句が呼吸を始めた感じがしたのですね。
俳句は世界と接続する
今回、長嶋さんは「俳句を詠むことは世界と接続しようとする試み」だということをおっしゃっていました。
いい言葉。
その流れで、投句についてあることをおっしゃっていました。
それは大事なことと思いますが、書かないでおきましょう。
今回の再放送は10月18日金曜日の午前05:00からあるみたいです。
早朝の放送になりますから、気になる方は録画などをしてご覧になってください。
おわりに
ということで、久しぶりに『NHK俳句』についての記事でした。
長嶋有さんの句集を読んでみたいです。
小説や漫画も。
長嶋さんの句会は「東京マッハ」ですか、そちらも興味があります。