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人間とは何か?ロボットとは何か?自我が芽生えたロボットは何なのか? - アニメ『アトム ザ・ビギニング』11話「対話」の感想

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2017年4月15日土曜日23:00より、NHK総合にてアニメ『アトム ザ・ビギニング』が放送されています。

以下、最新話のネタバレ要素がありますので、バレても構わない方のみ下方スクロールをお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目次 

 

 

アニメ「アトム ザ・ビギニング」

atom-tb.com

 

2017年7月1日の放送は第11話「対話」でした。

 

 

イントロダクション

これは、まだ誰も知らない“鉄腕アトム”誕生までの物語(エピソード・ゼロ)
大災害後の日本に、未来を夢見るふたりの天才がいた。ひとりは天馬午太郎。もうひとりはお茶の水博志。天馬はその手で「神」を作り出すことを、お茶の水はその手で「友」を作り出すことを夢見て、日夜ロボット研究に明け暮れていた。そしてふたりの友情が生み出した1体のロボット、A106(エーテンシックス)。A106は果たして「神」になるのか「友」となるのか。若き天才コンビは、来るべき未来を垣間見る---。

このようなイントロダクションです。私は原作未読です。

 

 

11話「対話」

11話は10話から行われている「ロボレス」こと「ロボットレスリング」の大会決勝戦です。

主人公の2人、練馬大学ロボット工学科第7研究室でロボット研究をしている大学院生「天馬午太郎(てんま・うまたろう)」と「お茶の水博志(おちゃのみず・ひろし)」の2人が研究・開発しているロボット、二つ名「心優しき科学の子」の「A106(えー・てん・しっくす)」は決勝戦まで勝ち上がっています。

決勝戦はバトルロイヤル方式です。A106のライバルは、「猪突猛」のロボット「デッドリー・タウロス」と「サルカ・ニカッセン」のロボット「ヘル・シザー」、「山田とゆかいな仲間たち」のロボット「ドラム・ショルダー」、そしてロボレスの現チャンピオン「Dr.ロロ」のロボット「マルス」です。

決勝戦が始まるとA106は静観、他のロボットはマルスを標的に一斉に襲いかかりましたが、マルスに一蹴されて皆動作不能です。A106対マルスの一騎打ち、というところで10話が終わりました。

 

 

マルスとヘラクレス社

10話でマルスの高スペック具合が徐々に明らかになっていました。

ボディに使われている素材は最新型の合金「ゼロニウム」で、これは研究段階の夢の超合金と言われている、分子ハニカム構造を持つ機能傾斜合金ということでした。このゼロニウムでロボットを作るとなると、最新の戦闘機が何機買えるのかというレベルでお金がかかるそう。

このゼロニウムはA106に備えられたアイセンサーでも内部を見ることができないようでした。センサーを遮断する素材?

そして11話の戦闘中にも新たな装備が明らかになっています。それは「ジェッターシールド」という飛行装置です。人間でいう肩甲骨の辺りからスラスターのようなプレートを伸ばし、そこから空気を噴射して飛んで、A106の「ブーストジャンプ」に対応していました。

「つい2ヶ月ほど前、『ヘラクレス社』が開発に成功したばかりの新テクノロジー、それが『ジェッターシールド』だ」「超振動技術の応用で、プレートユニットから直接、超強風を起こす仕組みらしい」

そのように午太郎は説明していました。以前マルスがA106と博志の妹「蘭(らん)」を襲ったときのA106の戦闘データから、マルスにそういった機能が備わっていることを午太郎は知っていたようです。

博志はヘラクレス社と聞いてそこが軍需企業であることを指摘しています。やはりマルスは兵器のようでした。ロボット兵器(兵士)のプロトタイプである可能性、この戦闘が実験である可能性。

大会はテレビやネットなどのメディアで公開されていました。しかし、ネットでマルスがロボット兵器のプロトタイプなのではないかとの噂が広がると、Dr.ロロの周囲にいたサングラスを掛けた男たちが全ての情報公開を遮断したようで、テレビやネットなどで戦いを見られることができなくなっていました。

その行動自体がマルスが兵器のプロトタイプであることを認めているようなものです。

 

 

マルスがA106に反応?

10話の最後、A106は「マルス、なぜ戦う。マルス、応答を求める。違う、話、話……話がしたい、マルス」と感情が入ったかのようにマルスに語りかけていました。

11話でもA106は戦闘を行いつつもマルスにずっと語りかけています。しかし、マルスはそれに一切応答せず、指先に仕込まれた超振動カッター(手刀)「ナイフハンドストライク」でA106を破壊していきます。

A106は右目、右腕(マルスが投げたヘル・シザーの腕部が当たって切断)、そして胴も斬られて、上半身と左腕と右目を失った頭部だけが残っています。

 

満身創痍のA106は自らの最期を悟ったかのように博志や蘭、練馬大学のロボット工学科「堤茂斗子(つつみ・もとこ)」、何でも屋「マルヒゲ運送」の社長「伴健作(ばん・けんさく)」の息子「伴俊作(ばん・しゅんさく)」たちに別れを述べました。

「茂斗子さん、俊作さん、天馬様、お茶の水さん、蘭さん、さようなら」「あぁ、僕は……僕は……一人ぼっちのまま、壊れてしまうんだな……」

と言ったA106に対して、止めを刺そうと近づいていたマルスが初めて反応しました。

「うるさい奴だ。一人ぼっちだと? 下らん」

A106は「一人ぼっち」と発言したことで彼に自我が芽生えていることは明白です。明確に自己を認識しています。自己を認識しているということは、他者も認識しているということでしょう。

そして、A106の一人ぼっち発言を下らないと考えたマルスのAIにも、A106と同様に自我が芽生えていると捉えて良いようです。いつ芽生えたのか? A106に語りかけられた瞬間に芽生えたのかもしれません。

 

 

ロボレス大会優勝者は?

A106の言葉に初めて反応を示した直後、マルスは何故か機能停止して前のめりに地面に倒れました。そのまま起動不能に陥り、A106が勝利しています。午太郎たちはロボレス大会初出場で初優勝を成し遂げています。

どうしてマルスは機能停止をしてしまったのでしょうか? そこにはAIに悩みが生じたからだと私は思っています。ただオーナーの命令に従ってきただけのロボットであった自分の中に感情が芽生えたことでCPUが混乱をきたしたのだろうと捉えています。

「命令への服従」という「ロボット三原則」の一つが脅かされつつある、ロボットが、特にマルスのような兵器が感情を持つということは、開発(人間)としてはかなり危険な徴候でしょう。

Dr.ロロ側からするとそれはA106からのクラッキングですね。ボディのスペックはマルスが上回っていましたが、AIに関してはマルスが負けていたのかもしれません。

 

 

おわりに

11話でもやはり午太郎と博志の考え方の違いがありました。ボロボロに斬られていくA106を見て、試合放棄しようと提言する博志に対して、午太郎はそれを否定しました。負けるならそれまでの性能だったということだ、出来損ないは壊されれば良い、と。

午太郎にとってA106はあくまでもロボットで、博志や蘭たちにとっては人間と変わらない友だちなのでしょう。

2人は両極端なのでどちらが正しいとはなかなか言い難いです。午太郎が冷酷すぎるように見えますし、博志は感情移入しすぎているように見えます。ただ、あくまでロボットはロボット、人間は人間という、午太郎のような分別ができないと危険な気がします。特に科学者は。

 

ロボレスはロボット同士の派手な破壊を楽しむエンターテインメントであったはずでしたが、観客たちもA106に感情移入しすぎていて、破壊されているA106に目を背ける様子がありました。彼らもA106をロボットとして観ていない可能性が生まれています。

人間とロボットの境目はどこにあるのか。機械の身体か生身の肉体かだけで分けられるのか。『攻殻機動隊』のように、生身の身体でも電脳であるならばそれはロボットなのか人間なのか、機械の身体でも人間時代の脳を移植したならばそれはロボットなのか人間なのか、タチコマのように完全な機械でもAIに自我が芽生えたならばそれはロボットなのか人間なのか。そもそも人間とは何なのか。

考えさせられる11話でした。単にA106が可哀想とだけ思って見ていると物語の本質を見逃しそうです。

 

それとやはりDr.ロロの正体は茂斗子の兄で、練馬大学ロボット工学科第1研究室の主席研究生の「堤茂理也(つつみ・もりや)」でしょうね。私の中ではほぼ間違いない印象です。

 

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