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ディスディスブログ

気分変調症の男がテレビ番組の感想やカメラ、ファッションのことなどを書きます

本番原稿に手を付けるまでに3年!「ながやす巧」さんの一切の妥協を許さない姿勢に感動を覚えました - 『浦沢直樹の漫勉』シーズン4第4回(最終回)

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2017年3月2日木曜日22:00からEテレのドキュメンタリー番組『浦沢直樹の漫勉』が放送されています。

2017年3月23日の放送は「シーズン4」の第4回「ながやす巧(ながやす・たくみ)」さんでした。番組はパイロット版の「シーズン0」があったため、シーズン4は実質「シーズン5」です。

今回のながやす巧さん回でシーズン4は終わりです。シーズン5はあるのかどうか。

 

 

目次

 

 

漫勉とは?

www.nhk.or.jp

 

日本を代表する漫画家の制作現場にNHKのカメラが入り、漫画家の作業の様子を邪魔にならないよう定点カメラで撮影して、記録した映像を取材したご本人と漫画家「浦沢直樹(うらさわ・なおき)」さんが2人で観ながら、どのような手法で、どのような道具を用いていて、どのようなことを考えながら漫画を描いているのか……といったことを話す番組です。

言わずもがな、浦沢直樹さんは「YAWARA!」「20世紀少年」「MONSTER」などを描いた漫画家さんです。

 

 

『漫勉』シーズン4第4回は「ながやす巧」さん

 『漫勉』シーズン4の第4回(最終回)は「ながやす巧(ながやす・たくみ)」さんです。

 

伝説の漫画家「ながやす巧」がなんとテレビ初出演!72年発表「愛と誠」で一世をふうび。浅田次郎原作「ラブ・レター」「鉄道員」の世界を忠実に緻密に描写した作品は、浅田自身からも絶賛。今回は「壬生義士伝」の執筆に密着。デビューから今まで、アシスタントは一切使わない主義を貫き、すべて一人で作業してきたという誰も見たことない現場に初めてカメラが入った。発見したのは、1日12時間以上妥協なく執筆に取り組む姿だ

このような番組説明です。

 

ながやす 巧(ながやす たくみ、1949年1月4日[1] - )は日本の漫画家。長崎県出身[1]。

ながやす巧 - Wikipedia

ながやす巧さんのWikipediaにはこのように書かれています。情報量がとにかく少ないです。これは前述のアシスタントをおかない、テレビ出演をしたことがない、といった情報をアウトプットする機会が他の作家さんより極端に少ないことが原因と思われます。

 

www.mibugishiden.com

 

ながやすさんご自身のTwitterアカウントやWebページはありませんでした。しかし、番組でも執筆作業をしていた「壬生義士伝」のページはありましたのでリンクを貼っておきましょう。こういう絵柄を描く方です。

私はながやすさんのお名前は知っていましたし、絵も見覚えがありますけれども、作品を読んだことは一度もありません。やはり青年誌方面に行くとさっぱりです。

 

 

ながやす巧さんはシンプル

ながやす巧さんは『漫勉』の番組史上に残るくらいのシンプルな執筆作業でした。デジタルで描くでもない、アシスタントにほとんどの仕事を投げて自分は目だけ描くでもない、昔からの漫画の描き方を忠実に実践している方、という印象です。

とは言えながやすさんならではの小さな特徴もありました。例えば、ペンの持つときに人差し指を浮かせているとか、スクリーントーンをカットするときにカッターの刃を持って使うとかですね。

人差し指を使わずにペンを使うのは薄い線を引く必要があって、そうしていたら癖が付いてしまった、と仰っていましたか。カッターの刃を持つことは、刃を近くに感じられないから違う、ということでした。自分の手でカットしている感覚をより強く持ちたいのでしょう。

そういった特殊な癖のようなものはやはりありました。ありましたけれども、ながやすさんの漫画制作風景は至ってシンプルでした。王道です。そのシンプルさに「ながやす巧」さんという人間のお人柄が現れていました。

 

 

ながやす巧さんの作画は妥協が一切ない

ながやす巧さんの漫画制作には一切の妥協がありませんでした。本番原稿に漫画を描き始めるまでに異常なほどに時間を掛けていらっしゃいます。

 

 

設定資料作成に2年費やす

浦沢さんは、ながやすさんが持ってきた設定資料を見ていたのですが、その設定資料の緻密なこと。登場人物の設定はもちろんのこと、物語の舞台となる町(城下町)の絵も町全体を描いていて、町に並ぶ家屋一軒一軒もしっかりと描いているのです。

設定資料の制作期間は2年!!

設定だけで2年間ですよ? アシスタントを置かないながやすさんですから、その設定資料は自分の他の誰にも見せないものなのです。それを2年かけて超緻密に描いていました。設定資料だけで本を出版できるのではないかというレベルです。

浦沢さんも当然非常に驚いていて、「結局好きなんでしょうね」「ここ(設定資料)からもう本番なんだろうな」と感想を言っていました。

ご本人も「楽しいです。段々とその世界が出来てくる訳ですから」と。その後に「正確に描かないと、っていう気持ちはあります。間違いがあっちゃいけないという、そういう緊張感の中でずっと描いていますね」と仰っていました。完璧を求めています。

 

 

絵コンテ制作に1年

設定を作った後、原作の文章を全て書き写したものを作成します。その文字も綺麗です。大まかなコマ割りを決めてそこに絵は描かず、どこを台詞にするかなど文章を練り上げていきます。

「書くことによって内容がよく(頭に)入ってくるんです」ということでした。

原作は7回ほど読むそうです。そこから文章を原稿に書いていくと。

読んでいると涙が出てきてしまうので、何回も何回も読んで、涙が出てこなくなったらようやく書き始めるのだそう。描くときは冷静にならなければいけないから、泣いていたら駄目だと言っていました。自分が読者として得られた感動を、制作するときは冷静に漫画の読者に伝えなければならないから。

本番原稿に入る前に、絵コンテ(ネーム)を描きます。絵コンテも初稿から最終稿まで、3回ほど描いてドラマの精度を上げて絵コンテを完成させていきます。

この作業にも1年間費やすそうです。

設定の2年間+絵コンテ1年ですから本番原稿にペン入れをする前に3年もの歳月をかけています。

 

 

おわりに

ながやすさんは週刊誌などには描いていらっしゃらないのでしょう。週刊連載ではできない芸当ですよね。

例えば、「壬生義士伝」でも「斎藤一」だけを単行本一冊分、およそ400ページを描き続けるのだそうです。他の人物や背景などは一切描かず、ただひたすら斎藤一になり切って斎藤一だけを描いていました。

こういう手法は時間を掛けないと無理かなと思います。時間があったとしても大抵の人には無理な気がしますけれども。

 

いやぁ……凄い。「とんでもないもの」を見た気がしました。これまでの『漫勉』で紹介された方の全員がとんでもない方ばかりでしたけど、ながやす巧さんは本物の中の本物だと思いました。

今回の制作風景を見ていて涙がでそうになりました。漫画を読んで泣いたことはこれまで何度もありますけど、漫画を描いている姿を見て泣きそうになったのは初めてです。

ペン入れの一本一本の丁寧さ、緻密さだけでない、設定と台詞おこし、下描きもその全てが神がかった丁寧さと緻密さでした。

それでもご本人に言わせると「腕が落ちた」のだそうです。あれで、ですよ。再放送は日曜日の深夜にあると思いますので、見逃した方は是非ご覧になってください。見入ってしまいますから。

 

ながやすさんは「ちばてつや」さんの影響を強く受けているのだそう。『ちかいの魔球』や『紫電改のタカ』に感銘を受けて漫画の道に進んだということでしたか。ちばてつやさんの絵をもっとリアルにしたらこうなる、と目指して始めたと。『あしたのジョー』が漫画の最高の作品で、近づきたいと今でも思っているそうです。

その想いがあるからこそ今もなおお一人で妥協を許さずに描いていらっしゃるのですね……想いが純粋で格好良いです。筋斗雲に乗れるのではないかと思うくらい。

私は実は『あしたのジョー』を読んだことがないのですよね……『あした天気になあれ』は読んでいました。ゴルフの漫画。ジョーは一度読まなければと思っていてこの歳まで来てしまいました。

弟「ちばあきお」さんの『キャプテン』や『プレイボール』は読んだことがあり、中でも『ふしぎトーボくん』が好きで楽しく読んでいましたが、唐突に連載が終わってしまったように感じられて、子供心に驚いた記憶があります。温かいけど寂しい悲しい気持ちにもなる漫画です。読んだことのない方はぜひ読んでみてください。

いや、本当に良いものを見させていただいました。ながやす巧さんにありがとうございましたと言いたいです。

 

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