ディスディスブログ

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「BILLY BAT(ビリー・バット)」最終回の原稿を見てボスニア紛争を題材にした映画を思い出しました - 『浦沢直樹の漫勉』シーズン3最終回

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木曜日22:00から放送されているEテレのドキュメンタリー番組『浦沢直樹の漫勉』、2016年9月からシーズン3が始まりました。漫勉はシーズン0があるため、今シーズンが実質シーズン4です。2016年10月6日の放送では「浦沢直樹(うらさわ・なおき)」さんご本人が登場しました。

 

 

漫勉とは?

www.nhk.or.jp

 

日本を代表する漫画家の制作現場にNHKのカメラが入り、漫画家さんの作業の様子を邪魔にならないように定点カメラで撮影して、記録した映像を取材したご本人と漫画家「浦沢直樹(うらさわ・なおき)」さんと2人で観ながら、どのような手法で、どのような道具を用いていて、どのようなことを考えながら漫画を描いているのか……といったことを話す番組です。浦沢直樹さんは「YAWARA!」「20世紀少年」「MONSTER」などを描いた漫画家さんです。

今回は浦沢さんご本人が登場した回なので浦沢さんお一人が番組に登場し、自らを録画した映像を自ら観て、解説をしていました。

 

 

『漫勉』シーズン3第4回は「浦沢直樹」さん

サードシーズン4回目は、いよいよ浦沢直樹自信が登場!SF大作「BILLY BAT」の最終回の執筆作業に完全密着。浦沢が自身のペン先映像を見ながら独自の視点で解説。なんと門外不出のネーム作業の現場にも切り込む!

 

ということで、『漫勉』シーズン3第4回の放送に登場した漫画家さんは「浦沢直樹」さんご本人です。シーズン3の最終回になります。

私は漫画家さんをあまり知らないですし普段もほぼ読んでいません。しかし、浦沢さんの作品は少しだけですけど読んでいます。「YAWARA!」と「MONSTER」と「21世紀少年」は読んだ記憶があります。「PLUTO」も少しだけ読みました。ただ、読んだのは昔の話ですので、内容はあまり覚えていません。

「YAWARA!」はアニメでも観ていました。初期のOP「ミラクル・ガール」と、終盤のED「いつもそこに君がいた」が非常に印象に残っています。特に「いつもそこに君がいた」が名曲ですね。強烈に懐かしさがこみ上げてきます。歌っているのはLAZY LOU's BOOGIE(レイジー・ルーズ・ブギー)です。

 

浦沢 直樹(うらさわ なおき、1960年1月2日 - )は、日本の漫画家。血液型B型。代表作に『YAWARA!』『パイナップルARMY』『MASTERキートン』『MONSTER』『20世紀少年』など。

 

浦沢直樹 - Wikipedia

 

浦沢さんのWikipediaにはこのようにあります。Wikipediaを読んで知ったことは、氏が音楽を嗜んでいたことです。漫勉でも、例えば前回の高橋ツトムさんの回でもギターに興味を示す場面が観られましたし、着ているTシャツなどを見ていても、音楽が好きなのだろうとは思いましたが。大学まで音楽をしていたのですね。特にボブ・ディランが好きなのだそうで……なるほど。髪型はボブ・ディランを意識していらっしゃるのでしょうか。

今回の『漫勉』で制作していたのは『BILLY BAT』です。私は本作を全く知らないですが、番組ではその最終回の1回前と最終回の制作を収録していました。設計図とも言える「ネーム」の作業まで見せていました。最終回の、です。自分の名前が番組の冠に付いているからとはいえ、相当に凄いことですね。

 

 

浦沢直樹さんも漫勉で勉強している

浦沢直樹さんの回は、他の漫画家さんのようなオリジナルの技みたいなものは登場しませんでした。それだけに浦沢さんの漫画が描き上がっていく様子がいつもよりもじっくり流されていたように感じます。漫画を描くことそのものに、よりフィーチャーした回です。

技があったとすれば、青い芯のシャーペンを使っていたことです。こちらは『漫勉』シーズン1の第3回だったと思いますが、「浅野いにお」さんが使っていた技を参考にしたということでした。浦沢さんも漫勉で漫画の勉強をしているということですね。

具体的にどういったシーンに青い芯のシャーペンを使っているかというと、ペン入れをした後に人物の首に入った顎部の影の角度を間違えたときです。ホワイトで元々描いた影を消した後に青い芯のシャーペンを取り出しました。

「これ、この青いシャーペン(の芯)。漫勉のおかげですよ。(ホワイトで)修正したところに、鉛筆で下書きをすると、消しゴムを駆けるとね、インクまで一緒に取れちゃうんですよね。だから、青鉛筆でやれば印刷に出ないんで、そうするとこの消しゴムをかけないで済むんですよ」

と説明していました。青い色は漫画などモノクロ印刷には出ないそうなんですね。その性質を利用して下描きをそのまま残してペン入れをできてしまう、という技です。

 

ちなみに浦沢さんはペンはつけペンのうち「日本字ペン」を使っているとのことです。前回の高橋ツトムさんはボールペンと筆ペンでした。日本字ペンというものもあるのですね、漫画で使われるペンというと、Gペンか丸ペンのイメージがあります。

昔、鳥山明さんが「ヘタッピマンガ研究所」という漫画を描いたことがありました。そこにはGペンと丸ペンが紹介されていたので、私の中では2種類のイメージがとても強いです。この作品は単行本になっていて、私も子供の頃に単行本を買って読んでいました。私の場合は読んだだけで絵を描こうとまでは思わなかったですけど、それでもとても面白かった思い出があります。今手元にないのでもう一度買って読んでみたいです。

 

 

浦沢直樹さんの印象的な言葉の数々

毎回、浦沢さんは私たち視聴者にもわかりやすいように話をされていて、話すことがとても上手な方だなぁと感心しています。頭が良い。今回は一人漫勉ということもあって、いつも以上に多くのことを話してくださっています。

 

「そう『普段のお絵かき』。もうね、清書って思った段階でもう駄目なんですよ。『いつものお絵かき』っていう風にしていかないと、『ここ一発いい顔を描くぞ』なんて思った瞬間に清書になっちゃうでしょ。大体駄目ですよね、そうすると」

「一見さんで連載に入ってこられたお客さんが見て、今週の何かの、誰かの感情みたいなものは分かるように心がけているんですよ。『この人の気持ちが今週読んで分かる』ってすごく重要なことだと思うんですよね。日本漫画って『連載』っていう形を取ったからこそここまで隆盛してきたので。『こうやったら読者はウケたぞ』『じゃあこういうのはどう』って。読者の人たちに連載に参入して参加して欲しいんですよね」

「絵を描くのは大変な仕事ですからね。『楽しいお絵かき』から仕事にするとなると大変ですよ。自分の好きだったものと仕事にするとなると、自分のアイデンティティを賭けたことになるので、『一切妥協はない!』ということもなるよね。そこを『まぁまぁいいや』ってやっちゃったら、じゃあ自分の根幹が揺らいじゃうもんね」

 

全てを書くわけにはいかないのでこのくらいにしますが、もっと様々なことを言っていました。浦沢漫画のファンの方、漫画家を目指している方には至言も多かったことでしょう。

 

 

浦沢直樹が影響を受けた漫画家と作品

浦沢さんが影響を受けたのは、まずは「手塚治虫」さんだそうです。特に浦沢さんの世代なら誰もが通る道かもしれません。番組では「火の鳥」が映っていて、「火の鳥」は浦沢さんの漫画の原点だそう。「あの経験がなかったら、ここまでやっていないでしょうね」とまで言っています。

そして、「大友克洋」さんの「童夢」、手塚さんと大友さんを繋ぐ存在として「坂口尚」さんの「12色物語」があると。坂口尚さんは大きいと浦沢さんは仰っていました。

他に番組に映っていた漫画家さんの作品は、「村野守美」さんの「ニューヨークの神様」や「永島慎二」さんの「フーテン」、「山上たつひこ」さんの「光る風」です。

 

 

「BILLY BAT」を観て思い出す旧ユーゴスラビア紛争の映画

「BILLY BAT」の最終回辺りで、2人の兵士が銃を構えたまま向き合っているシーンがありました。その2人は2人とも地雷を踏んでいて、銃を撃っても足を外しても死んでしまう絶望的な状況下にあるようです。

私はこのシーンを見て、ある映画を思い出しました。15年ほど前でしたか、タイトルは忘れましたけど旧ユーゴスラビアの紛争を描いた映画のことを。(追記:正しくはボスニア紛争のようです)

その映画の主人公だったと思いますが、物語の最終盤に、ある兵士が何かのきっかけに気を失ってしまい、目を覚めたときには何者かによって周囲に何もない地面に寝かせられています。自分の身体の下には、確か「ジャンピング」と呼ばれるタイプの地雷が埋め込まれており、自分が動く(重しがなくなる)とその地雷が宙に飛び上がって炸裂するようです。もちろん気を失っている間に銃などは全て取り外されているのでしょう。覚えていないです。

つまり、自分が動いたら地雷が作動して死ぬ、動かなくても飢えで死ぬ、戦場ですから敵に見つかれば撃たれるなどして死ぬ、味方が見つけてくれても果たして地雷の存在を知ったら助けてくれるだろうか……否。という、まさに絶望しかない状況に置かれて、物語が終わったと記憶しています。それを思い出しました。

「BILLY BAT」を読んでいないので、2人の兵士がどうなったのかは私にはわかりませんけど、物凄く結末が気になりますね。

 

 

おわりに

最終回前でしょうか、構図一つに大いに悩み、下描き時点で何度も構図を取り直して描き直す様子が映っていました。浦沢さんクラスでもそうなのですね。「迷い迷って右往左往しながらここにたどり着いた」「計算づくではないですよね、全然」と言うとおりでした。

カメラのレンズと位置を間違えていた、と仰っていましたか。そういう風に映画や写真を撮っているようにして描いているのですね。確かに、漫画のコマの中で構図を取って、人や物をどこに配置すればより表現したいことを表現できるのか、という点では共通なのかもしれません。

あと、印象的だったのは、死体を描くときは他人には任せられない、とも言っていました。「祈りを捧げながら描かないと駄目なんですよ」と。どういう人生があってそこで息絶えたのか、ということを考えて描いているということでした。

これはとても大切なことに感じられます。死体そのものを見れば肉の塊でしかないのかもしれないけれども、「その死体」が「そこ」に在ることには意味がなければいけない、ということを考えることが、漫画だけでなく映像でも小説でも何でも表現をする上で重要なことなのだよ、と仰っているように感じました。そこにこそ本質があるのでは、と。「神は細部に宿る」でしたっけ、建築に関する言葉だったと思いますが、それに近いものを感じさせる浦沢さんの言葉でした。

私は漫画を描いたことがありませんから、今後に活かされるかはわからないですけど、写真を撮ることは趣味にしており、そこには今後少しでも活かせていけたらいいなぁと感じています。

さて、『漫勉』のシーズン3は今回で最終回です。浦沢さんが登場するということはシーズン関係なしの完全な最終回になってしまうのではないかと危惧していましたが、シーズン4は2017年3月に放送されるようです。安堵しました。

今回見逃した方は、近いうちに再放送があるはずなので、そちらをご覧になって下さい。先程書いたユーゴ内戦の映画は、タイトルを思い出したらこちらに書きます。何だったかなぁ……。

 

追記

Twitter経由で上記の映画のタイトルを教えていただきました。映画のタイトルは『ノー・マンズ・ランド』だそうです。本当ありがたい……。

 

『ノー・マンズ・ランド』(原題 ボスニア語: Ničija zemlja、英語タイトル No Man’s Land)は、ボスニア紛争(1992年 - 1995年)を題材にした反戦映画。2001年公開。

ノー・マンズ・ランド - Wikipedia

 

この通り。ボスニア紛争を描いたものだそうです。随分昔の話でほとんど忘れてしまっていましたが、教えていただいたことで思い出すことができました。そういうのは思い出すとは言わないですか……。教えてくださった方、誠にありがとうございます。

映画の内容が気になる方はぜひ観てくださいね、戦争の虚しさを痛烈に感じることができます。

 

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