ディスディスブログ

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神回。花山と常子の最後の口述筆記。高畑充希さんと唐沢寿明さんの演技が泣けました - 朝ドラ『とと姉ちゃん』154話の感想

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NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』、2016年9月29日放送の154話で、花山が亡くなりそうでした。個人的には神回でした。

 

 

花山の余命幾許もなく……

www.nhk.or.jp

 

ヒロインの「小橋常子(高畑充希)」が社長を務める『あなたの暮し出版』の主婦向けの雑誌「あなたの暮し」は、2世紀32号「特集 戦争中の暮し」が発売され、それが世間の評判に評判を呼んで過去最高の売り上げを記録しており、とうとう創刊当時から目標としていた部数100万部に到達することが叶いました。100万部は目標というより夢のように語っていましたか。

 

www.kurashi-no-techo.co.jp

 

ちなみに「あなたの暮し」の号数にある「2世紀」の「世紀」は、おそらく100号を意味するのでしょう。100号を超えたところで100を1世紀とし、今は2世紀32号ですから200+32号ということで良いかと思います。232号。「あなたの暮し」のモデルになっている「暮しの手帖」は記事作成現在、4世紀84号が発行されています。484号。

 

話を戻します。「あなたの暮し」の編集長「花山伊三次(唐沢寿明)」は、昭和48年時から遡ること5年ほど前に一度「心筋梗塞」を起こして倒れています。昭和49年だったでしょうか、戦争特集のための取材に訪れていた広島から東京に帰ってくるところで倒れて以来、病状は悪くなる一方のようです。

153話では入退院を繰り返していて、病室でベッドに入ったまま上半身を起こして編集の仕事をする様子も描かれています。今回154話は昭和50年1月に進んでいて、花山は自宅療養をしていて、彼はいよいよ筆を持って文字を書く行為すらも難しくなっていました。常子や常子の姪である「水田たまき(吉本実憂)」などに口述筆記を頼むまでに悪化していて、それすらも辛そうにしています。

154話は夜、花山の部屋のベッドの片隅で、花山の口から発せられる言葉をテープに録音しながら、常子が口述筆記をする様子を映すシーンがほとんどでした。今作の、最も力を入れているクライマックスシーンと思わせる、高畑充希さんと唐沢寿明さんの演技でした。一言素晴らしかったです。

 

その日の口述筆記が終わった後、花山が片付けをする常子をじっと見つめていると、もう一つ筆記を頼むと要求します。「あとがき」を書いてもらいたいと話す花山の視線は真っ直ぐ常子を捉えており、何か大きく固い意思をぶつけているようでした。

常子は引き受けると、花山の口から出た言葉は「今まで『あなたの暮し』をご愛読くださった皆様へ」でした。ハッとして表情を強張らせる常子。花山は自分が死んだときにはその号のあとがきに今口述している言葉を載せて欲しいとお願いします。

常子は「まだお元気なのに何を仰っているんですか。滅多なことを言わないで下さい」と目に涙を溜めながら笑顔で花山を咎めました。読者に向けた遺書です。

 

 

花山の最後の挨拶「庶民の旗」の話

花山が話したあとがきの口述内容は読者の皆さんへの感謝が主でした。

我々が創刊当初から雑誌で掲げてきたのは「庶民の旗」だと、私たちの暮らしを大事にする一つ一つは力は弱いかもしれないがボロの端切れをつなぎ合わせた暮らしの旗だと、世界で初めての庶民の旗はどんな大きな力にも負けない、そんな旗を揚げ続けられたのも一冊一冊を買ってくださった読者の皆様のおかげだ、力いっぱい雑誌を作らせて下さりありがとうございました、と大体このようなことを言っていました。

雑誌を知らない人1人だけに雑誌のことを教えてください、読者を増やしていただきたい、それが私の最後のお願いです、とも言っていましたね。

 

「もし花山さんがいなくなったら、私どうしたら良いんですか?」

 

常子は目を潤ませ、涙を流しながら花山に問いかけます。すると花山は「常子さん、大丈夫だよ」と返します。「君はね、27年一緒にやって来て、だいたい僕の考えと一緒だよ」「君の考えだけでやっていけるだろうけど、悩んだときは君の肩に語りかえろ。君に宿っているから、『おい、花山。どうしたもんじゃろのう』と」と言うのです。

常子は「……はい」と泣きながら、でも笑顔で返事をしていました。

 

 

最後の表紙絵は常子?

全てを聞き終えた常子は花山家を去ります。その去り際に花山がベッドから出て妻の「三枝子(奥貫薫)」に肩を借りて、常子に忘れていた次号の表紙絵を手渡しています。

その表紙絵は一人の女性が佇んでいるものでした。それは赤いベレー帽のような帽子を被り、赤い口紅をつけ、首に茶色のマフラーを巻き、赤いAラインのコートを着て、白に茶色の幾何学模様が入ったミトン手袋をはめた女性です。常子を描いているのでしょうか。

素敵な女性ですね、と朗らかな表情で絵を眺める常子に対して、花山は「初めて私の絵を見たときも君はそんな顔をしていた」と言いました。花山がまだ内務省に務めている頃の、戦時中の話です。

「常子さん、どうもありがとう」と花山は頭を下げています。常子は「嫌だわ、花山さん。また来ますね」と返事をし玄関から出ていきました……花山は常子に手を振っていました。「サヨナラ」をしているようです。

 

 

おわりに

外は雪が降っていました。傘をさして帰路を歩く常子は、ふと振り返り花山家の方向へ顔を向けていました。あの瞬間に花山は生命を落としているのでしょう。映像にはまだ映っていなかったと思います。

泣きました。録画を観ていても涙が出ます。朝ドラの後に放送される『NHK あさイチ』でも司会の有働由美子アナウンサーが泣いていました。最初こそ泣いていませんでしたけど、イノッチことV6井ノ原快彦さんは泣かそう泣かそうとしていましたね。意地悪です。

 

それと同時に「どうしてこの話を最終回に持ってこなかったのだろう」という不満に思おう気持ちも出てきました。先週末土曜日に放送された次週予告では、「とと」こと父親の小橋竹蔵(西島秀俊)が登場します。ととにお疲れ様と言わせたいのでしょう。

ととが結核で亡くなるとき、常子はととに代わりを任され、それを引き受けた瞬間、常子には大きな呪いがかかりました。ととにかけられた呪縛を解く儀式が必要であることはわかるのです。わかるのですけれど、それはもっと早いタイミング、例えば美子が結婚したときでも良かったのではないかと思うのです。

確かに、『あなたの暮し出版』社の皆は常子にとって最早家族同然でしょう。ととを最後に持ってくるということは、そういうことを言いたいのだということもわかります。

しかし、常子と花山の関係は家族以上で、人生のパートナーとなっていました。まるでお互いがお互いの半身のようでもあったことでしょう。ととからの解放はもう少し早い段階で描いておき、常子と花山との関係をより深く描いてもらいたかったです。非常にもったいなく思いました。

 

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