ディスディスブログ

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アニメ映画『秒速5センチメートル』を初めて観て、竹内まりやさんの曲「駅」を思い出しました

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毎週土曜日深夜(日曜日未明)にテレビ東京で放送されている映画枠『サタ☆シネ』の、2016年8月21日日曜日はアニメ映画『秒速5センチメートル』が放送されました。私は本作を初めて観ました。

今回の放送は、新海誠監督の新作アニメ映画『君の名は。』が公開される前に、新作公開記念新海誠スペシャルとしてテレビ放映されました。大ファンを自称する俳優・神木隆之介さんと新海誠監督によるロケ地巡りやインタビューなども収録されていました。

以下、ネタバレ要素が含まれていますので、バレても構わない方だけこれより下方へスクロールしてください。

 

 

連続短編アニメーション『秒速5センチメートル』

秒速5センチメートル

 

記事の冒頭に書いたように私は『秒速5センチメートル』を今回初めて観ました。感想を一言で言うととても面白かったです。切ない。

今更説明も何もないと思いますけど、本作は連続短編という名の通りに「桜花抄」「コスモナウト」「秒速5センチメートル」の3つの短編から成っています。といってもそれぞれが共通の主人公と世界で繋がっていて、桜花抄が主人公「遠野貴樹(とおの・たかき)」の小学校・中学時代、「コスモナウト」が高校時代、「秒速5センチメートル」が社会人時代を描いています。時間は全編で60分強と短いです。

声優さんは、主人公・遠野貴樹のCVが水橋研二さん、メインヒロインの「篠原明里(しのはら・あかり)」が「桜花抄」は近藤好美さんで「秒速5センチメートル」は尾上綾華さん。「コスモナウト」のヒロインである「澄田花苗(すみだ・かなえ)」が花村怜美さん。「秒速5センチメートル」で遠野と付き合っていた「水野理紗(みずの・りさ)」が水野理紗さん、同姓同名です。水野さんは花苗の姉役も兼任しているようです。

 

小学校の卒業と同時に離ればなれになった遠野貴樹と篠原明里。二人だけの間に存在していた特別な想いをよそに、時だけが過ぎていった。

そんなある日、大雪の降るなか、ついに貴樹は明里に会いに行く……。

 

「桜花抄」のストーリーはこのようになっています。「コスモナウト」は家庭の事情で東京から九州は鹿児島県の種子島へ引っ越した貴樹に恋をしている、花苗視点の貴樹の様子を中心に描き、「秒速5センチメートル」は社会人になった彼らを描いています。

ちなみに秒速5センチメートルとは、桜の花びらが散っている時の速度だそうです。小学生時代の明里が貴樹に話していました。

 

 

最終章「秒速5センチメートル」の感想

大人になった遠野貴樹が、とある踏切を渡っているところで偶然に篠原明里とすれ違いました。すれ違った瞬間にお互いがお互いの存在に気がつき、貴樹は踏切を渡り切った直後に振り返しました。

明里も振り返りそうになったところで上下線の電車が踏切を通過し顔は確認できず、貴樹は電車が通過し終わるまでそのまま待っていましたが、電車がいなくなったときには既に明里の姿は踏切にはありませんでした。

それを見届けた貴樹はそれまでの無表情から一転、小さく笑みを浮かべ爽やかな表情になって正面を向き直し歩き始めました。というのが秒速5センチメートルの最も印象的で最も重要なシーンと思います。

最初、このシーンをどう捉えるべきか、私にはわからなかったです。一瞬トラジックエンディングかと思いました。貴樹がIT系の仕事を退職し、付き合っていた理紗とは別れ、さらに想い続けていた明里と一緒になることも叶わなかったのですから。

その後、何度か最終章の「秒速5センチメートル」だけを見返したところ、これは貴樹がようやく「明里の呪縛」から解き放たれようとしているのだな、ハッピーエンディングなのだな、と思えるようになりました。

あのとき明里が踏切で待っていても、それはそれで丸く収まるのかもしれないですけど、明里が立ち止まらず前に進んだことで、貴樹にもそれが伝わってようやく過去を過去にすることができたのだろうと。「それ」とは明里にとっては既に貴樹が思い出になっている、ということです。

物語のその後としては、おそらく貴樹は種子島に戻って花苗と再会するのだろうな、と思います。想像というか願望です。

 

 

『秒速5センチメートル』は竹内まりやさんの「駅」に似ている

この『秒速5センチメートル』を観て、竹内まりやさんの「駅」を思い出しました。あの曲の物語と重なる物語に感じられたからです。

「駅」の歌詞についてはGoogleなどの検索エンジンで「竹内まりや 駅 歌詞」と検索してみてください。簡単に書きますと、この曲の一人称はある駅でかつての恋人を見かけたのですが、声をかけずに家へと帰っていく、というものです。

私は初めてこの曲を聴いたとき、何て哀しい曲なのだろうと思いました。切なさよりも哀しさが増していました。しかし、よくよく歌詞を読んでみると、そうではなくポジティブな歌なのだと感じるようになりました。それは「元気で暮らしている」ことと「それぞれに待つ人」がいることが鍵でした。

一人称は彼のことを愛していたし彼も一人称のことを愛していたけど別れてしまい、今回偶然に再会して一人称は彼に声をかけよう(思い出にすがろう)としたけれど、その思いを堪えて一人称の帰りを待つ家へと帰って行った、ということですから。

『秒速5センチメートル』の明里はおそらく貴樹を貴樹だと気がついたけど、貴樹はもう良い思い出になっているし、自分には結婚が決まっている相手がいるし、立ち止まらず振り返らずに歩を進め、貴樹もそんな彼女を見ることでようやく彼女にとって自分が過去の存在になっているのだと飲み込むことができて、前に進むことができたのではないでしょうか。

 

 

おわりに

3作の中では「コスモナウト」が一番好きでした。私は澄田花苗が好きなのだと思います。花苗は貴樹に告白しようとしたそのときに、貴樹の目には自分の姿など映っていなかった感じ取ってしまった瞬間の切なさといったらもう……。

「桜花抄」も良かったです。特に雪と、雪の降る地方独特の空気感というか湿度のようなものが。私は病気になる前は冬になるとスノーボードをしに出掛けていて、そのときに電車で行くのが特に好きだったので、そのときの記憶が蘇っていました。

「秒速5センチメートル」は「駅」に似ていると書きました。それと同時に古谷実さんの漫画『シガテラ』も思い出しました。最終回がねぇ、私はてっきり荻野優介と南雲ゆみが幸せに大学生活を送る様子が描かれるものだと思っていたのですが、社会人時代にまで時間が飛んでいてお互いに違う相手と結婚をしている(する)様子が描かれていたんですよねぇ……。でもあれはあれで良かったのだろうと思います。

 

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