NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』、2016年8月19日放送の119話で「あなたの暮し」の本格的な商品試験を行った号が発刊されていました。
新たな商品試験は「歯ブラシ」
115話から昭和30年に入っています。ヒロインの小橋常子（高畑充希）たち「あなたの暮し出版」は』社は、世の中に多く出回っている商品を試験し、雑誌上で読者に対して商品の良い所と悪い所を伝えてはどうかと新たな企画を始めることになります。
商品試験第1回は「石けん」でしたが、思わぬ横槍が入って社名を公表することはできず、いきなり躓きました。しかし、この商品試験と、常子が並行して行っている各御家庭の台所の取材は「あなたの暮し」の二枚看板として継続させていくようでした。
本格的な商品試験を行うため、会社は規模を拡大し、編集部の入っていたビルの1階全てを借りて実験室としていました。編集長の花山伊三次（唐沢寿明）は、洗濯機や冷蔵庫や掃除機といった家庭電化製品の時代が間もなくやって来る、どんな性能があり、どこメーカーの物が優れ、どこメーカーの物が買う価値のない物か、実際にあちこちのメーカーから出ている電化製品を買い揃え使ってみて、その答えを示す。これは人々の生活を守るための戦いであり、我々の使命だ、と言うのでした。
「あなたの暮し」が次に始めた商品試験は「歯ブラシ」です。電化製品がどうと言っておきながら歯ブラシ？ となりますけれども、いきなり大型で高価な電化製品を扱うよりも、もっと身近な商品を扱った方が危険は少ないという判断があったようです。
まずは手軽な日用品から始めようとして常子が思いついた品が「歯ブラシ」でした。これは経理の水田正平（伊藤淳史）と常子の上の妹で水田の妻である鞠子（相楽樹）の間にできた子供、水田たまき（稲垣来泉）に虫歯ができたことがヒントになっているかと思います。
代表する4社（ビイナス、麗風堂、シープ、ラフレ）の歯ブラシを買い集め、毛の密度や柄の形、耐久性、毛先の形を比べていました。毛は1本1本ピンセットで取っては並べて数を数えていましたし、毛先の形は顕微鏡を使って見ていましたし、耐久性は磨く際の力の掛け方や磨く回数まで事細かに決めていました。
特に耐久性の試験は、常子たち社員が自宅で自ら使って試験をしています。小橋家や水田家の洗面台には試験項目の張り紙が張ってありました。以下、張り紙に書かれていた内容です。
- 使用するブラシ：ビイナス、麗風堂、シープ、ラフレ
- 歯磨の量：巾2センチ、2グラム見当
- 各箇所8回ずつ磨く
- 磨く順序：1上の歯. 表側、2下の歯. 表側、3上の歯. 裏側、4下の歯. 裏側（右奥、右横、左奥、左横、前の順）、5上の歯. かみ合わせ部分、6下の歯. かみ合わせ部分
このように張り紙には書かれていました。常子たちは3ヶ月をかけてのべ300本の歯ブラシを実際に使って毛の痛み具合を比較していました。顕微鏡の結果では、ナイロンと豚毛の歯ブラシとでは耐久性に差が出ることもわかりました。豚毛を使ったラフレとシープの歯ブラシの方が、ナイロンを使った麗風堂とビイナスのそれより劣化が遅い（耐久性が高い）ようです。
おわりに
歯ブラシの商品試験と台所を特集した「あなたの暮し」第36号は無事発刊されました。雑誌は売れに売れ、売り切れになる書店が続出したようです。
デイリーポータルZさんに、「古い『暮しの手帖』のくらべ記事を調べてみた」という記事がありました。「あなたの暮し」のモデルになっている「暮しの手帖」では、有名なトースターやベビーカーだけでなく、しょう油つぎやコルク抜き、三角コーナー、トイレットペーパーホルダー、アイスキャンデーの型、かき氷器など様々な商品を試験してきたようです。1つの商品に年単位で時間をかけていますから、手間暇がとんでもないレベルでかかっています。壮絶です。
私は「暮しの手帖」を読んだことがないのですが、これは読んでみたくなります。できれば花森安治さんが表紙デザインを手がけた号を読みたいですね。ドラマで発刊された36号でいえば、歯ブラシの特集よりも台所の特集を読みたいです。星野家の台所の雰囲気がすごく好きだったので。タイルのシンクって憧れます。
そういえば119話で美子が星野の妻は病気で亡くなったと言っていました。私は初耳だったので見逃していたみたいです。てっきり戦争で亡くなったのかと。
