女性4ピースロックバンドのFLiP(フリップ)に関して、以前も少し紹介しましたが、今回はも紹介します。というのも、2013年6月にリリースされた3rdアルバム『LOVE TOXiCiTY』が素晴らしかったのです。
『LOVE TOXiCiTY』は久々に購入したCDでした。それこそ10年ぶりくらいかもしれません。記憶が正しければSpinna B-ILLの『Stay Longer』以来。FLiPはレーベルをHIGHWAVE→デフスターレコーズ→EMI Records Japanと変更させていて、LOVE〜はデフスターレコーズ時代の最後のアルバム作品になるのでしょうか。
現在所属しているEMIになってからはポップな傾向が強まっているみたいで、昔からのファンの方の中には荒々しいヘヴィロックな彼女たちを好きな人も少なからずいらっしゃるようです。YouTubeのコメントなどネットではそういう意見が多いように感じられます。あの頃に戻ってくれ的な。
確かにそれは私も感じていたことでした。2014年にFLiPの4人が、tvk(テレビ神奈川)の音楽情報バラエティ番組『sakusaku』のゲストとして久しぶりに出演をしたのを見て、彼女たちの変化にとても驚いた思い出があるので。彼女たちの変化に驚いたというより、番組で流れたシングル「GiRL」のMVが、それまでの「カートニアゴ」や「ライラ」「ナガイキス」のイメージとは趣が大きく異なっていたことに驚きました。あんなに結構ガチなロックをやっていたのに、ポップスに変わっちゃったの? という。
レーベルが変わると音楽の方向性が変わるというのは、以前から聞いたことがある話でしたけど、ハッキリとそれを目の当たりにした機会が私にはあまりなかったので、特に驚いた記憶があります。この変化は本人たちが望んでしたことなのか、レーベルからの指示・命令なのかは私には分かりません。プロである以上、というかバンドとして生き残っていくためには、ある程度マスに受ける音楽を作ることも必要なのかな、とも思いますから、仕方ない変化なのかもしれませんね。
最近、といっても2015年5月に『BIRTH』というミニアルバムがリリースされていて、こちらはFLiPの結成10周年の記念的な作品にもなっているようです。このミニアルバムの中では、YouTubeのFLiPオフィシャルチャンネルにもアップされている「JEREMY」を押しているのかなと思います。この曲自体、好きですし良い曲とも思いますけど……やはりどこかパンチが効いていない感、小さくまとまってしまっている感は拭えないです。
『BIRTH』リリースを受けてのFLiPのインタビュー記事がありました。
ドメスティックなサウンドにとらわれない、というところだと思います。メンバーはみんな、FLiPをやる前から洋楽をよく聴いていたし、私も音楽にのめりこんだきっかけがバックストリートボーイズで。バンドというより、歌に魅力を感じるポップスがすごく好きだったんです。だから、バンドという音にしばられない方向性をもっとこのバンドで追求しようというのが、2014年のシングルからの流れなんです。
ヴォーカル&ギターで、メインの楽曲制作も行っているSachikoさんのコメントに、レーベル移籍後からの音楽の変化について語っている部分がありました。引用はその一部。彼女たちの中ではこういう変化があったみたいです。もちろん、レーベル側から圧力がかかったから音楽性を変えざるを得なかっただなんてことが裏であったとしても、表立って言えるわけがないですけど……。
で、私が購入した『LOVE TOXiCiTY』は、その変化の前、全曲セルフプロデュースをしたアルバムで、彼女たちの全てが注ぎ込まれているかのようなパワー溢れる作品に仕上がっています。
このリンクは『LOVE TOXiCiTY』をリリースしたときのインタビュー記事です。
そう考えたとき、原点回帰したいと思ったんです。自分たちがバンドを始めたときの自由さというか、ルールや音楽のセオリーなんて考えてなかった頃の気持ちとか。そういう型にはまらない感じで作りたいなと。
その中にSachikoさんが言っていた言葉です。”原点回帰”をしたということでしたが、バンドとしての原点回帰が『LOVE TOXiCiTY』なら、バンドメンバー一人一人の音楽的なルーツを遡って作ったのが『BIRTH』ということなのでしょうか。
ロックをやっている人が他のジャンルを全く聴かないなんてことはないでしょうから、他のジャンルであっても好きな曲というものは当然あって、自分たちの音楽的な幅を広げる時期に来たことを感じたから、ロックというジャンルにこだわることなく、自分たちが好きと感じられる音楽を追求しようとしている、ということだと受け取りました。
FLiP / カミングアウト short ver.B - YouTube
私が『LOVE TOXiCiTY』で好きな曲は「カミングアウト」「Log In "Rabbit Hole"」「Raspberry Rhapsody」「Tarantula」です。特に最初に挙げた2曲はやばい。「カミングアウト」は別のオフィシャルチャンネルにMVのShort ver.がアップされていたのでリンクを貼ります。彼女たちはレーベルを変えていることで、公式チャンネルが幾つかあるみたいです。その時代時代のチャンネルが。
「カミングアウト」は、「ライラ」などに通ずるようなヘヴィなロックで、MVが艶かしいですし、歌詞もなかなかに刺激的、ライブ映えしそうな勢いのある曲です。
「Log In "Rabbit Hole"」は、The Doorsの「Light My Fire」のような、サイケロックっぽさを感じさせる……と書くと少し違う気もしますが、名曲だと思っています。Yukoさんのギターのリフが印象的な曲ですが、個人的にはSayakaさんのベースの格好良さがもっとやばいです。『真・女神転生』の1だったか2だったか忘れましたが、そのBGMを想起させます。1の戦闘曲か2のフィールド曲か。
他にもいわゆるハズレがない、と感じられる名盤と思いますので、気になった方は聴いてみてください。Amazonのページを見ると全曲試聴もできるみたいなので少し聴いてみてはいかがでしょうか。